8/25(金) ソラブジ《オープス》& 古川聖《ノベレッテ集》完演


by ooi_piano
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大井浩明(ピアノ/レクチャー) 
2017年8月25日(金)午後1時開演(午後7時終了予定)
東京芸術大学音楽学部第2ホール  入場無料(要・事前申込、8/15締切
(JR上野駅/鶯谷駅 徒歩10分、千代田線根津駅 徒歩10分)



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※外部からの参加希望者は、8月15日までに事前メール申し込み(https://goo.gl/xLpPm0)の上、午後0時50分または午後1時20分に、音楽学部(上野キャンパス)正門、第二守衛所の前にお集まり下さい。それ以外の時間での入場は出来ません(退出自由)。
※※ トイレ・自販機はホール至近にあります





■古川聖(1959- ):《七つのノベレッテ集》(2017、全曲による世界初演)  25分
  I.物語の初めに Der Anfang der Geschichte
  II.上へ下へ Nach oben, nach unten
  III.コラールと小ダンス Choral und kleiner Tanz
  IV.音階 Tonleiter
  V.小さな迷宮 Kleines Labyrinth
  VI.マルカート・エ・コン・フォルツァ Marcato e con forza
  VII.物語のおわり Das Ende der Geschichte

■カイホスルー・ソラブジ(1892-1988):《オプス・クラウィケンバリスティクム(鍵盤楽器の始源に捧げて) Opus Clavicembalisticum》(1930)〔全12楽章〕 ~ 第一部
 I. 入祭唱 3分
 II. コラール前奏曲 13分
 III. 第一フーガ(四声による) 12分
 IV. ファンタジア 4分
 V.第二フーガ(二重フーガ) 16分

 (休憩10分)

■ソラブジ:《オプス・クラウィケンバリスティクム》 ~ 第二部
 VI.第一間奏曲(主題と49の変奏) 45分
 VII.第一カデンツァ 5分
 VIII. 第三フーガ(三重フーガ) 35分
   [第一主題 10分 - 第二主題 11分 - 第三主題 12分]

 (休憩10分)

■ソラブジ:《オプス・クラウィケンバリスティクム》 ~ 第三部
 IX. 第二間奏曲 56分
   〔トッカータ (5分) - アダージョ (16分) - 81の変奏によるパッサカリア (35分)〕
 X. 第二カデンツァ 3分
 XI. 第四フーガ(四重フーガ) 32分
   [第一主題 8分 - 第二主題 7分 - 第三主題 8分 - 第四主題 10分]
 XII. 終結部(ストレッタ) 8分



古川聖:《7つのノヴェレッテ集 》(2017、委嘱新作初演)

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  私が大井氏から作品の依頼を受けた時、なにか新しい、変わった試みをいくつも並べるような作品構成として、ノヴェレッテという言葉がすぐに脳裏にうかんだ。私がノヴェレッテとして着想したのはNOVEL という言葉の本来の意味である、新しい種類の、新手の、奇抜な、今までになかったような現在を志向する音楽と、シューマンの「8つのノヴェレッテン」の幻想的ではあるが古臭く、熱っぽく、少し汗ばんだ、憧憬することはできるが、共有はできない音楽、この両者が共存する、現代においてのみ可能な特有の聴取の形式である。現代ほど過去から現在までの音楽が同時に広大なパースペクティブの中に聴取、消費された時代があっただろうか。録音技術とその商業化を背景にポリスタイリズム(シュニトケ)のようなものがあらわれてきた50年前とでさえ、それに通信技術(インターネット)までが加わった現在の音楽聴取状況は大きく変化している。(その意味でこの「7つのノヴェレッテン」はポリスタイリズムでもないし音楽の引用をおこなっているわけでもない。)

  「7つのノヴェレッテン」は全部で7つの小品からなる。これらの作品は広い意味ではアルゴリズムコンポジション(※)、つまり、音符の形で楽譜が直接書かれるのではなく、音、音楽構造がどのように生成されるのかをまずコンピュータープログラムで記述し、そのプロセスの後に音符が生成され楽譜として定着されるような種類の音楽である。今回は、私が以前行った複雑系の構造の自己組織化プロセスや現在も行っている脳波からの生理データの音構造へのマッピングなどの手法は使っていない。
  このノヴェレッテンでは一曲ごとに、7~10個音からなる構造的モティーフ(第2、4、7曲)または4小節から12小節程度のシューマンの「8つのノヴェレッテン」から抽出したモティーフ(第1、3、5、6曲)を音楽生成の出発点として準備し、それらを複製し、拡大縮小し、分割し、重ね、移調し、縦に横にひっくり返し組み合わせるという比較的伝統的な音楽の変形手法を、伝統的作曲では行われなかったほど、多重にくりかえし、作品として構築した。つまりどの曲もモティーフから紡ぎ出された一本の糸で繋がっているといえる。シューマンからのモティーフには当然、調性的なマテリアル、調性的なコンテクストもふくまれるが、それらはそれらの固有の性質が失われるギリギリまで分解され再構築された。
  そしてこれらの変形、マニュピュレーション、手法、方法の根底にあるのが、私の興味の中心にある音楽認知プロセスからの音楽生成である。音の認知、グルーピング、階層化と抽象化、記憶と予測、評価と、それらのプロセスから脳内に記憶の糸をたぐり、連想として染み出していく、音楽の内実である情動への共鳴などである。シューマンからのモティーフによって聴取者の潜在意識と意識の間に聴取者のシューマンの「8つのノヴェレッテン」の記憶、シューマンに代表される、ロマン派調性音楽の記憶、体験が浮遊することだろう。

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  Novellette1には “der Anfang der Geschichte/物語の初めに”の副題をつけた。シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第一曲からモティーフが読み込まれ(MIDI-fileからコンピューターが読み込む)、音階のモティーフと組み合わされる。
  Novellette2には “Oben und Unten”「上と下」という副題をつけたが、ここではモティーフが連ねられ形成された、大きく上下する音型が潰され、のばされ、こねくり回される。
  Novellette3は “Choral und kleiner Tanz /コラールと小ダンス”という副題をもつ。シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第一曲の中間部からモティーフが読み込まれ、時間軸の変化を捨象し、冒頭にコラールとして提示する。これをもとに変形が加えられ、分解された調性的断片を組み合わせることで、抑揚のリズムのようなものが生じ、それを小ダンスと名付けた。
  Novellette4は “Tonleiter”「音階」という副題をもつ。音階の順次進行からなるモティーフが組み合わされ、様々な展開をとげる。
  Novellette5 新Novellette5(Kleines Labyrinth /小さな迷宮 ) シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第7曲の冒頭からモティーフが読み込まれ、輪郭が切り取られ、冒頭に単旋律のテーマとして提示される。これがフーガ風に重ねられ、折りたたまれ、変形が加えられ展開される
  Novellette6は”Marcato e con forza/マルカート エ コンフォルツァ”の副題をもつ。これはシューマンの「8つのノヴェレッテン」の第1曲の曲想表示から借りてきたものである。シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第1曲の冒頭からモティーフが読み込まれる。シューマンの和声に時々あらわれる水平的な重なりの過度の敷衍、拡張や、メロディーと和声の大幅なずらしなどの方法を用いて作曲した。
  Novellette7の副題は “das Ende der Geschichte / 物語のおわり。今までに何度も音楽におけるエッシャー的なものを試みてきたが、今回は二つのモティーフからなるテーマのようなものを協和音程的な制約の中でどのようにうまく組み合わせるかという技法的なソリューションを探した。主要部分ではテーマは調を移され多重に重ねられるが、それらは完全な相似形になっている。

  (※)これらのマニュピュレーションを可能とする作曲ツールが自らのチームが開発したGESTALT-EDITOR というグラフィックプログラミング環境である。現在のVersion は古川聖、藤井晴行、濵野峻行、小林祐貴により開発されている。(古川聖)


古川聖 Kiyoshi FURUKAWA
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  1959年東京生まれ。中学・高校時代に入野義郎氏に師事。高校卒業後渡独、ベルリン、ハンブルクの音楽アカデミーでイサン・ユン、ジェルジ・リゲティのもとで作曲を学ぶ。1991年に米国のスタンフォード大学で客員作曲家。独・カールスルーエのZKM(アート・アンド・メディア・センター)でアーティスト・イン・レジデンス。作品は、新しいメディアと音楽の接点において成立するものが多く、1997年のZKMの新館のオープニングでは委嘱を受け、マルチメディアオペラ『まだ生まれぬ神々へ』を制作・作曲。近年は理化学研究所内で脳波を使った視聴覚表現に関するプロジェクトを行った。社会の中で表現行為が起こる場、新しいアートの形を探して2002年より、新しいメディアを使ったワークショップを世界各国で行っている。東京芸術大学先端芸術表現科教授。CDに「数による音楽」(2007, FONTEC)「物質による音楽」(2009, FONTEC) 等。


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# by ooi_piano | 2017-07-19 12:04 | POC2016 | Comments(0)

ライヴ演奏動画集

一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ptna)のYouTubeアカウントで公開されている動画一覧(作曲家五十音順) [ https://www.piano.or.jp/enc/pianists/detail/339 ]
大井浩明(ピアノ/オルガン/クラヴィコード)

■川上統(1979- ): 《閻魔斑猫》(2008)
■川崎弘二(1970- ): 《木賊》(2015)
■坂本龍一(1952- ): 《エナジー・フロー》(1999)
■J.シベリウス(1865-1957) (=K.エクマン編): 弦楽四重奏のための《祝祭アンダンテ》(1922/1941)
■鈴木悦久(1975- ): 《クロマティスト》(2004)
■高橋悠治(1938- ): 《光州1980年5月》(1980)
■田中吉史(1968- ): 《TROS III》(1992/97)  《松平頼曉のための傘》(2011)    
■P.チャイコフスキー(1840-1893) (K.クリントヴォルト編): 《弦楽四重奏曲第1番ニ長調 Op.11 第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」》(1871/73)   
■西村朗(1953- ): 《アリラン幻想曲》(2002)
■橋本晋哉(1971- ): 《ゆたにたゆたに》(2016)
■S.バーバー(1910-1981) (米沢典剛編): 《弦楽四重奏曲第1番第2楽章「アダージョ」》(1936/2017)
■細川俊夫(1955- ): 《メロディア II》(1977/78)
■松下眞一(1922-1990): 《スペクトラ第4番》(1971)
■G.マーラー(1860-1911) (米沢典剛編): 《花の章》(1888/2017)


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# by ooi_piano | 2017-06-23 18:52 | 雑記 | Comments(0)
c0050810_18543645.jpgフィンランド独立100周年~シベリウス没後60周年記念

日本シベリウス協会 Japanin Sibelius Seura
《ピアノで紡ぐシベリウスの管弦楽の世界》
2017年7月2日(日) 14時
開演(13時30分開場)
マルシャリンホール(飯野病院7F 調布駅東口すぐ)

大井浩明(ピアノ独奏)    
新田ユリ(お話/指揮者・日本シベリウス協会会長)

シベリウス協会会員 1000円/一般 2000円
申込み: info[at]sib-jp.org (6月20日締切)



c0050810_18562452.jpg吉松隆:タピオラ幻景 Tapiola Visions Op.92 (2004) ピアノ(左手)のために──舘野泉に捧ぐ(約20分)
 I.光のヴィネット Vignette in Twilight - II.森のジーグ Gigue of Forest - III.水のパヴァーヌ Pavane for Water - IV.鳥たちのコンマ Commas of Birds - V.風のトッカータ Toccata in the Wind

●J.シベリウス(米沢典剛編曲):交響曲第6番 ニ短調 Op.104 (1923/2017、世界初演) (約30分)
 I.Allegro molto moderato - II.Allegretto moderato - III.Poco vivace - IV.Allegro molto

  (休憩15分)

●J.シベリウス(米沢典剛編曲):交響曲第7番 ハ長調 Op.105 (1924/2016、世界初演) (約20分)
 Adagio - Vivacissimo - Adagio - Allegro molto moderato - Allegro moderato - Presto - Adagio - Largamente molto - Affettuoso

●J.シベリウス(米沢典剛編曲):交響詩「タピオラ」 Op.112 (1925/2017、世界初演) (約18分)
 Largamente - Allegro moderato - Allegro


協会ページ  FBページ



《一筆書きの先は・・・》───新田ユリ

c0050810_19231264.jpg 同じ瞬間は二度とない・・・音の現場の真実。録音媒体などなかった昔は、聴衆の記憶により深く刻まれる工夫を作曲家たちは様式の中で行っていた。実際その昔、拍手喝采になった作品や楽章はその場で繰り返し演奏された。“同じことの繰り返し”これは、とても人工的なこと。自然界にはそれはあり得ない。

 交響曲第7番、弦楽器が全員で登りゆく音階の階段、その始まりは耳に届いてくるチェロの音ではない。耳を澄まし聞こえてくるティンパニが奏でる一つの音、“ト音―ソ”。そして続くラーシードーレーミーファーソ・・・遅れて半拍のズレを持って同様に階段を上るコントラバスが消えかけるころ、冒頭で確信的な“ソ”を奏でたティンパニがもう一度“ソ”を提示。前世紀の作品であれば迷いなく次は“ハ音―ド”にゆき、「弦楽器御一行様お疲れ様でした。到着駅“ド”でございます~このハ長調の街は・・」などと、やおらバチを拡声器に持ち替え喉を鳴らすティンパニ奏者の姿が目に浮かぶ。しかし、旅はそう簡単ではない。音階は穏やかなハ長調から逸脱し、さらに上り到着点は“変ホ音―ミ♭”。ハ長調の世界には通常存在しない音・・・これは曲が始まってわずかに3小節の時間の出来事。そしてその25分ほど後には、全員で“ド”の音に解決。C-Dur ハ長調の完成。無事にハ長調の街に到着。

 このシンプルな音の旅は途切れることなく、まるでフィンランド鉄道の車窓を見るかのように 変わらぬ風景の中いつの間にか目的地にたどり着く。列車シベリウス号の旅としようか・・・。

  ─・─・─

c0050810_19244615.jpg 交響曲の最後の三曲、第5番、第6番、第7番は着想が同じ時期と言われる。作曲のスケッチを調べるとその軌跡が残る。シベリウスを支え続けたカルペラン男爵が病の床に会った1918年、すでに第5番を書き上げたシベリウスは、その恩人を励ますために「新しい作品の構想がある」「それは人生の喜びと活力に満ちている」「ギリシャ風(Hellenic)ロンドを持つ」そんな未来への夢を記した手紙を送っている。ギリシャ風HellenicとはCarl Snoilsky(1841-1903)の詩、ギリシャ神話を基にしたSteropeに書いた歌を指す。そのスケッチ譜にはこの第7番につながるモチーフが登場。歌のスケッチも長い階段を上り下りしている。

 そして第7番を構築している間に、第8番の姿がそのスケッチに記されているという。しかし“シベリウス号”は、第8番にはたどり着かなかった。 

 最後の停車地はもう一つの路線、“交響詩”の終着、“タピオラ―森の神の棲むところ”となった。

 そこは人の手の届かぬ原始の森。

  ─・─・─

 「友など持たぬ方が賢明だ・・・人皆一人で死んでゆく・・・酒だけが唯一の友・・」1924年の11月、シベリウスがコペンハーゲンで第7番の演奏会を指揮し大成功を収めてまもなくの作曲家自身の言葉。

 60歳になろうとするシベリウス、後世の我々はこの後“30年の沈黙”の入り口に向かうことを知っているが、その事実の内側を知ることは許してもらえるだろうか・・・。

  ─・─・─

c0050810_19252651.jpg 1924年、第7番がストックホルムで3月24日に初演された時、この荘厳な究極の交響曲を指揮するマエストロ・シベリウスの心中はまったく穏やかならぬもの。この旅は愛妻アイノの最後通告ともとれるメッセージを受け取った後、一人旅となっていた。当時の夫シベリウスは手の震えを抑えるための飲酒が様々な悪影響を及ぼしていた。そして性格の弱さと飲酒癖という大作曲家が抱えていた大問題は第7番の完成にも時間を要することになり、“あなたの人生の伴侶”という署名を持って嘆願書のごとくシベリウスに改心を求めたアイノ夫人の行動は胸をうつものがある。しかしそれは第三者の意見、当事者の夫は、愛妻賢妻アイノの言葉に打ちのめされてしまった。それに加え、シベリウスより三歳若い作曲家、オスカル・メリカントが2月17日に亡くなった。メリカントはシベリウスの作品に親近感を持ち評価をしていた。この出来事もシベリウスに大きなダメージを与えた。

 それでも何とか3月2日にこの作品を完成させ、ストックホルムに渡った。かの地での成功を持って帰国したシベリウス。ところがヤルヴェンパーの地に帰るや否や「私の人生はまもなく終わる・・恐ろしい不安の始まり・・」などの言葉が記された。作曲の霊感が消えてゆくこと、体力の衰え、手の震えの問題、アイノ夫人との擦れ違い。

 そんな状況でも作曲家シベリウスを求める外からの声は増えてゆく。9月23日に、再びアイノ夫人は同行せず、シベリウスは一人でコペンハーゲンへ。そこではシャンパンだけを飲み、美食の楽しみもあったようだ。新たな交流も生まれ、やや上流志向のあるシベリウスにとっては居心地が良い旅の面もあった。コペンハーゲンでも大成功。しかし交響曲第7番を自ら指揮すること、それがシベリウスを疲労困憊させた。医師の勧めもありしばらく指揮活動は休止。再びシベリウスの魂は閉じこもり「酒が唯一の友達」この言葉が綴られることとなる。

  ─・─・─

 人生の一本道、立ち止まってしまったシベリウス。

 時折昔の作品を振り返りながらも、もう一歩踏み出した。そこが“タピオラ”森の神の棲むところ。

  ─・─・─

c0050810_19272315.jpg 最後の交響曲-第7番、そして最後の交響詩―タピオラ。

 この二つの作品のどちらも、初めの一音と最後の一音が多くを語る。

 “ト音―ソ”で始まり、ハ長調の世界を明朗な気分で清潔な大気の中を歩むはずが、たった一音の踏み外しからその先、一本道を多くの困難を体験しながら、停まることはあっても決して道を戻らず、楽器がまるでお互いに手を差し伸べつなぎ受け継ぐような見事な一筆書きの音符の先に、全員が“ハ音―ド”にたどり着く。

 一方の“タピオラ”も、やはりティンパニの一音が森の言葉を告げる。それは“ロ音―シ”。清冽で明解なハ長調は人の思考の整理を感じる。しかし“ロ音-シ”で始まり、最後にロ長調-H durの弦楽の響きが悠久の時間を描くとき、そこは人が完全には理解できない、そして踏み入ってはいけないもう一つの神秘の道が続いていることを気づかせてくれる。

  ─・─・─

 タピオラの森に姿が見えなくなったシベリウス号は、走り続けたのだろうか。

  ─・─・─

c0050810_19290100.jpg 見てないもの、聞いていないものが自分の周りにあふれている昨今。撮りダメした番組、とりあえずアイポッドに入れておいた無数の音楽、体験していない他人の情報の山。作品の人格がもし自立していたらいったい彼らはなんと発言しただろう・・・。

 一期一会のもの、その慣用句をヒト社会はあたたかく使う。しかし二度と会えないもの、二度と同じ状況がないことの連続の先に何があるのか・・・一筆書きの先・・・そこには厳しい自然の、命の掟がみえる。



初出/アイノラ交響楽団第10回定期演奏会プログラム
参考文献/Andrew Barnett "Sibelius"(2007, Yale University Press), Jean Sibelius Sämtliche Werke [JSW] Kritischer Bericht (Breitkopf und Härtel)






ラハティ地方の風景(写真/新田ユリ)
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【ピアノ独奏による交響曲/管弦楽曲公演】

■J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV 244 (S.ヤダスゾーン編独奏版) [2011.03.31] [closed]

■F.J.ハイドン:交響曲第100番 ト長調 『軍隊 Militärsinfonie』 (1793/94)、第101番 ニ長調 『時計 Die Uhr』 (1793/94)、第103番 変ホ長調 『太鼓連打 Mit dem Paukenwirbel』 (1793/94)、第104番 ニ長調 『ロンドン Londoner Symphonie』 (1795) [2013.05.07] [closed]

■W.A.モーツァルト:交響曲集
 ○交響曲第23番 ニ長調 K.181(162b) (1773)、第26番 変ホ長調 K.184(161a) (1773)、第31番 ニ長調『パリ』 K.297(300a) (1778)、第32番 ト長調『序曲』 K.318 (1779) [F.ブゾーニ編独奏版]、第33番 変ロ長調 K.319 (1779)、第34番 ハ長調 K.338 (1780) [2013.03.11] [closed]
 ○交響曲第25番 ト短調 K.183(173dB) (1773)、第29番 イ長調 K.201(186a) (1774) [2012.11.26] [closed]
 ○交響曲第35番ニ長調 《ハフナー》 KV 385 (1782)、第36番ハ長調 《リンツ》 KV 425 (1783) 、第38番ニ長調 《プラハ》 KV 504 (1786)(A.ホルン編独奏版) [2009.12.12] [closed]
 ○交響曲第39番変ホ長調 KV 543 (1788)、第40番ト短調 KV 550 (1788)、第41番ハ長調 《ジュピター》 KV 551 (1788) (A.ホルン編曲独奏版) [2009.11.21] [closed]
 ○セレナード第7番ニ長調K.250(248b) 『ハフナー・セレナード』 (1776) より第1/5/6/7/8楽章、セレナーデ第9番 ニ長調 K.320 『ポストホルン・セレナーデ』 (1779)、セレナーデ第13番『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』ト長調 K.525 (1787) [2012.11.26] [closed]
 ○レクイエム ニ短調 K. 626 (1791) (Brissler編独奏版)、クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 (1789)(P.Wagner編独奏版) [2011.02.14] [closed]
 ○二台ピアノのための協奏曲(第10番)変ホ長調 K.365/316a (1779)(フンメル編独奏版)、ピアノ四重奏曲第1番ト短調 K.478 (1785)(独奏版)、《エジプト王ターモス》K.345/366a より終曲「そなたら塵芥の子らよ」(1779)(アルカン編独奏版)、ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466 (1785)第1/第3楽章(アルカン編独奏版/アルカンによるカデンツァ付) [2013.04.08] [closed]
 ○歌劇《イドメネオ》K.366 (E.F.リヒター編独奏版) [2010.10.28]、歌劇《後宮からの誘拐》K.384 (R.メッツドルフ編独奏版) [2010.07.23]、オペラ・ブッファ《フィガロの結婚》K.492 (ピアノ独奏版) [2010.04.26]、歌劇≪ドン・ジョヴァンニ≫K.527 (ピアノ独奏版) [2010.06.22]、オペラ・ブッファ《女はみなこうしたもの》K.588 (R.メッツドルフ編独奏版) [2010.08.20]、歌芝居《魔笛》K.620 (ピアノ独奏版) [2010.05.31]、歌劇《皇帝ティトゥスの慈悲》K.621 (ピアノ独奏版) [2010.11.29] [closed]

■L.v.ベートーヴェン:交響曲集(F.リスト編)
 ○交響曲第1番ハ長調Op.21(1799/1800) R 128/1, SW 464/1、第2番ニ長調Op.36(1800/02) R 128/2, SW 464/2(使用楽器:1846年製ヨハン・バプティスト・シュトライヒャー) [2008.07.31]
 ○第9番ニ短調Op.125「合唱(Choral)」(1815/24) R 129/9, SW 464/9(使用楽器:1852年製エラール)[2009.03.25]


■R.ワーグナー:《神々の黄昏》第3幕「ジークフリートの葬送行進曲」(ブゾーニ編独奏版) [2012.12.23]、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》前奏曲(タウジッヒ編連弾版) [2012.08.31]

■J.ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68 (1876)+第2番ニ長調 Op.73 (1877) (O.ジンガー編独奏版)+《大学祝典序曲 Op.80》(R.ケラー編独奏版) [2013.12.22]、交響曲第3番ヘ長調 Op.90 (1883)+交響曲第4番 ホ短調 Op.98 (1884/85) (O.ジンガー編独奏版)+《悲劇的序曲 Op.81》(R.ケラー編独奏版)[2013.12.29]

■A.ブルックナー:交響曲第7番(作曲者+ヒュナイス編独奏版)[2012.12.23]、交響曲第8番(シャルク編連弾版)[2015.04.05]、交響曲第9番(F.レーヴェ編独奏版)(その1その2) [2015.11.23]

■G.マーラー:交響曲第1番《巨人》(ステルヌ編独奏版) [2015.4.26]《花の章》(米沢典剛編独奏版) [2017.6.7]交響曲第2番《復活》(ベーン編二台ピアノ版) [2015.5.22]、交響曲第3番第2楽章(フリードマン編独奏版)/第3楽章(ヴェス編連弾版)/第4楽章(ステルヌ編独奏版)/第5楽章(ヴェス編連弾版)/第6楽章(ステルヌ編独奏版) [2015.01.17 / 2015.04.05 / 2015.04.26 / 2015.05.22]、交響曲第4番(ヴェス編連弾版) [2014.3.2]、交響曲第5番(ジンガー編独奏版/第4楽章杉山洋一編) [2014.12.21]、交響曲第6番《悲劇的》(ツェムリンスキー編連弾版) [2014.3.2]、交響曲第7番《夜の歌》(カゼッラ編連弾版) [2012.8.31]、交響曲第8番《千人の交響曲》(ヴェス編連弾版) [2015.04.05]、交響曲第9番(ブライアー編独奏版) [2015.7.12]、交響曲《大地の歌》《亡き子をしのぶ歌》《リュッケルト歌曲集》(作曲者編ピアノ伴奏版)(その1その2) [2015.12.13]、交響曲第10番(アダージョ)(スティーヴンソン編独奏版) [2015.4.26]

■C.ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(1891/94)(L.Borwick編独奏版)[2014.08.27]、舞踊詩「遊戯」(1912/13)(作曲者編独奏版)[2016.06.18]

■R.シュトラウス:《薔薇の騎士》終幕二重唱(1910)(グレインジャー編独奏版)[2016.04.17]、《サロメ》最終場面(1905)(ソラブジ編独奏版)+《4つの最期の歌》(1949)(作曲者編ピアノ伴奏版)[2016.06.17]、交響詩《ドン・ファン》(1888)(O.ジンガー編二台ピアノ版)[2004.03.06]

■A.シェーンベルク:《浄められた夜 Op.4》(1899)(ゲシュテール編独奏版)+室内交響曲第1番ホ長調 Op.9(1906)(シュトイアーマン編独奏版)+室内交響曲第2番変ホ短調 Op.38(1906/39)(米沢典剛編独奏版)[2016.10.10]、《管弦楽のための変奏曲 Op.31》(1928)(アンゾリーニ編独奏版)+《モーゼとアーロン》より「黄金の仔牛の踊り」(1932)(川島素晴編独奏版) [2015.10.25]、《映画の一場面のための伴奏音楽 Op.34》(1930)(米沢典剛編独奏版) [2016.11.16]、《月に憑かれたピエロ Op.21》(1912)(E.シュタイン編ピアノ伴奏版) [2010.07.31]、《ペトラルカのソネット Op.24-4》(1922/23)(F.グライスレ編ピアノ伴奏版)+《ワルシャワの生き残り》作品46 (1947) (K.フレデリック編ピアノ伴奏版) [2007.06.10]

■M.ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲(1909/12)(L.ロック編連弾版)+舞踊詩「ラ・ヴァルス」(1919/20)(A.イハレフ編独奏版)[2016.07.16]




■A.ウェーベルン:管弦楽のための《パッサカリア Op.1》(1908)(杉山洋一編独奏版)[2014.02.23]、《交響曲 Op.21》(1928)(米沢典剛編独奏版)[2016.11.16]


A.オネゲル:交響曲第3番《典礼風》(ショスタコーヴィチ編二台ピアノ版)交響的断章「パシフィック231」(1923)(キングマン編二台ピアノ版) [2015.03.13]

D.ショスタコーヴィチ:交響曲第4番(作曲者編二台ピアノ版)[2014.9.12]、交響曲第5番第4楽章(L.アトフミヤン編連弾版)[2014.03.02]

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【動画】 ベートーヴェン作曲/F.リスト編曲:交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄(Eroica)」(1802/03) R 128/3, SW 464/3 より 第1楽章 Allegro con brio /使用楽器: ヨハン・バプティスト・シュトライヒャー (1846年ウィーン製) 85鍵(AAA~a4) アングロジャーマン・アクション




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# by ooi_piano | 2017-06-08 14:22 | コンサート情報 | Comments(0)