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クラオタとの遭遇

洛星オーケストラ部創立50周年記念演奏会(2007年8月)に寄せて






  30期生の大井浩明です。昨秋は「洛星ミュージックフェア」にお招き頂き、誠に有難う御座いました。私はプロとしての演奏活動は、主に現代音楽の分野で開始致しましたが、ここ数年はチェンバロ・クラヴィコード・オルガンといった、バロック~古典派期の歴史的鍵盤楽器による古楽演奏にも力を入れております。「洛星ミュージックフェア」では、現在のピアノの前身である、18世紀末のフォルテピアノ(ハンマーフリューゲル)によるリサイタルに初挑戦致しました。

  記憶に残る洛星オケ部の思い出は、なんといっても代弾きをさせてもらった、ラフマニノフ協奏曲第2番(入学直後の4月)ならびにチャイコフスキー協奏曲第1番(高1の冬学期)に尽きます。独学、かつ公立校から編入した私にとって、自分以外の「クラシック・ファン」なる人々に遭遇したのは、オケ部が生まれて初めてでした。高2最後の音楽授業の発表会(1986年3月)で、小柿徳武氏(大阪市大准教授)のマリンバと共演した一柳慧《パガニーニ・パーソナル》は、私の現代音楽への最初のアプローチとなりました。同じチェロ・パートの小塚常記氏に誘われたロック・バンドでは、夜遅くまで帷子ノ辻のスタジオで、YMOやクイーン等を練習したのも懐かしく思い出されます。

  さて、東京都交響楽団首席フルート奏者の寺本義明氏(26期)や、元・新日本フィルハーモニー交響楽団首席コントラバス奏者の中田延亮氏(36期)に伺ったところ、どうやら私を含めて、「10代では音楽の早期教育は特に受けていない状態 → 総合大学(京大や筑大)にいったん入学 → 大学アマオケに所属 → その後、プロ音楽家の道へ転向」、という点は共通しているようです。 寺本氏、中田氏ともに、フルートやコントラバスでは日本で3指に入る名手、と称えられているので、もちろん彼らのズバ抜けた才能抜きに論ずることは出来ませんが、たとえ10代のときに専門的な技能を育むチャンスがなくても、一線で活躍するプロになるのは不可能ではない、ということです。また、総合大学へ入るための広範な基礎教養は、たとえ後に音楽家になったとしても、決して無駄にはなりません。

  音楽との付き合いに限ったことではありませんけれども、「何故それを正しいと思うか」、「何を根拠にそれを美しいと判断するか」についての私の取捨選択は、良くも悪くも京都独特の放ったらかしの風土、そして情報の乏しい地方での永年の独学状態に根ざしたものでした。それは長らくコンプレックスでしたが、高校を卒業して早くも20年経過した今、その肯定的側面も見ることが出来るようになりました。音楽に関心を持つ洛星の現役生諸君が、彼ら自身の道を見出せるよう、祈念する次第です。(ピアニスト)
by ooi_piano | 2009-04-20 02:31 | Comments(0)

3/22(金) シューベルト:ソナタ第21番/楽興の時 + M.フィニッシー献呈作/近藤譲初演


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