11月3日(土) シュトックハウゼン「自然の持続時間」東京初演

感想集 http://togetter.com/li/409233

モートン・フェルドマン:「ずいぶん前、シュトックハウゼンと非常に奇妙な会話をしたことが私にもある。彼が《グルッペン》や《ヒュムネン》といった大作を発表していた頃で、一方私はずっとスカスカのピアノ小品を書いていた。そこで彼は言いがかりを付けてきた。「大作は書かないのかい、モートン?やってみろよ、売れるから」。そこで私は答えた。「カールハインツ、君が挑戦すべきなのは、一本指で弾けるピアノ曲だ」。
 (※・・・・《自然の持続時間》第1曲は、フェルドマンの死後20年近く経ってから、ニューヨーク・ミニアチュリスト・アンサンブルの「100音以下の作品を」という委嘱に応えて作曲された。)

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[POC番外編@松濤] シュトックハウゼン歿後5周年
2012年11月3日(土) 15時開演
 タカギクラヴィア松濤サロン(渋谷区松濤1-26-4)
●K.シュトックハウゼン(1928-2007):ピアノ独奏のための《自然の持続時間 Natürliche Dauern》(2005/06)(全24曲、約140分) 東京初演 〔連作 『音 ~ 一日の24時間 Klang, Die 24 Stunden des Tages』 より 「第3時間目」〕
日本初演(2011年7月/芦屋)公演感想集

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○自然の持続時間 第1 (約10分) (※)
○自然の持続時間 第2 (約10分半)
○自然の持続時間 第3 (約9分半)
○自然の持続時間 第4 (約7分10秒)
○自然の持続時間 第5 (約6分) 05年7月3日京都
○自然の持続時間 第6 (約4分40秒) 05年7月3日京都
○自然の持続時間 第7 (約4分50秒) 05年7月4日京都
○自然の持続時間 第8 (約3分)
○自然の持続時間 第9 (約2分10秒)
○自然の持続時間 第10 (約9分)
○自然の持続時間 第11 (約1分4秒)
○自然の持続時間 第12 (約3分半)

(休憩15分)

○自然の持続時間 第13 (約5分10秒)
○自然の持続時間 第14 (約1分15秒)
○自然の持続時間 第15 (約7分半乃至8分半) 05年8月26日スタヴァンゲル(ノルウェー)
○自然の持続時間 第16 (約3分30秒) 05年11月12日リスボン(ポルトガル)
○自然の持続時間 第17 (約26秒) 05年11月12日リスボン(ポルトガル)
○自然の持続時間 第18 (約3分37秒) 06年1月6日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第19 (約2分5秒) 05年4月28日エディンバラ(スコットランド)
○自然の持続時間 第20 (約3分30秒) 06年1月12日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第21 (約1分46秒) 06年1月17日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第22 (約7分半) 06年1月21日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第23 (約5分半) 06年1月26日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第24 (約17分半) 06年2月14日

(※) スコアに書かれた演奏時間の目安、ならびに作曲年月日・場所
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  シュトックハウゼンの《鍵盤曲 Klavierstück》のシリーズは、まず第1番~第11番(1952-1961)がピアノ独奏のために書かれた。約20年のブランクののち、連作オペラ《光 Licht》の抜粋として、特殊奏法やアクション等をともなったピアノ独奏のための第12番「試験」(《木曜日》より)、第13番「ルツィファーの夢」(《土曜日》より)、第14番(《月曜日》より)、そしてシンセサイザーならびに電子音響のための第15番「シンセ狂」(《火曜日》より)、第16番・第17番「彗星」(《金曜日》より)、第18番(《水曜日》より)、第19番(《日曜日》より)が独立曲とされた。当初21曲セットの構想だった《鍵盤曲》集は、19作目で中断したことになる。

  《光》完成ののち作曲者が没するまで書き継がれた、1日24時間に照応した24組の連作《音 Klang》(最後の2作は未完)の「3時間目」が、ピアノ独奏のための《自然の持続時間 Natürliche Dauern (Natural durations/Durées naturelles)》(全24曲、約140分)である。
  この曲集では、ピアノ(あるいは補助楽器)を鳴らした際の、音域・強度・ペダリング・音高の組み合わせやバランスによってほぼ決定付けられる自然な減衰時間、ならびに諸音型に修辞学的に対応した不規則な間合い、奏者の呼吸の長さ、それに聴衆と楽器との距離などを勘案しつつ、イヴェントが進んでいく。最終的に譜面上での看視/管理を決して手離さなかったのは、この偉大なドイツの作曲家の意地と執念であろう。
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  《自然の持続時間》 第1番の初演は2006年2月23日、NYホーリー・トリニティ教会(~「Sex and the City」シーズン3で、シャーロットが外科医と結婚した場所)、フィリップ・フィッシャーによる。同第2番~第15番の初演は2006年7月12日、キュルテン(ドイツ)の夏期講習会でベンヤミン・コブラーならびにフランク・グートシュミット。同第16番~第24番の初演は、2007年7月17日リスボンで、この9曲ぶんの委嘱元であるグルベンキアン財団50周年演奏会にて、アントニオ・ペレス・アベヤンによって行われた。

  第1曲は、ニューヨーク・ミニアチュリスト・アンサンブルから、「100音以下の作品を」、という委嘱に応えて作曲された。実際の第1曲の音符数は計162音(=2*(3^4))、アタック数は72回(=(2^3)*3=24×3)である。この団体の他の委嘱作曲家・作品として、クリスチャン・ウルフ「マイクロエクササイズ 1-22」(楽器不確定)、マイケル・フィニッシー「Yso」(2つの高音域楽器)、チャールズ・ウォーリネン「11の小曲」(ヴァイオリンとヴィブラフォン)、ヨルゴス・アペルギス「イーリアス」「オデュッセイア」(ヴァイオリンとクラリネット)、アルヴィン・ルシエ「ミニアチュア」(クラリネットとチェロ)、ポーリーン・オリヴェロス「百の出会いの場」(ヴァイオリン、チェロ、打楽器)、シルヴァーノ・ブソッティ「何でもない事」(クラリネット、打楽器、ヴァイオリン)、アンリ・プスール「8つの小さな幾何」(ヴァイオリン、クラリネット、ヴィオラ、チェロ、打楽器)、ケヴィン・ヴォランス「100の音符」(ヴァイオリン、クラリネット、ピアノ)等がある。

  第1曲で高音域から低音域へゆっくりと移動する単音の連なりは、作品全体を統べる24音セリー(E-C-F-d-cis-dis-a-g-gis-H-Fis-Ais- Dis-Cis-D-f-c-e-ais-fis-h-Gis-G-A)の逆行であり、第2曲では逆に低音域から高音域へ原型が上昇、第3曲ではジグザグに提示される。
  第5番~第7番は最後の来日時に京都で書かれた。第9曲、第15曲で発音される言葉は、それぞれ「Ora Terza(第3時間目)」、「Aufstieg(上昇)」である。第22曲では、補助楽器(仏具のリン)の予想減衰時間から逆算して、ピアノ鍵盤上のフレーズの時価が決定される。リンの音程は、G-As-dが連作《光》の最終作『日曜日』の最終場「潮時 Hoch-Zeiten」から、e-aが連作《音》の第1時間目「昇天Himmelfahrt」から取られている。長大な第24曲(終曲)では、ベートーヴェン「第9」・ベルリオーズ「イタリアのハロルド」・ブルックナー「第3(初稿)」「第5」「第8」・ドヴォルジャーク「第9」・サンサーンス「動物の謝肉祭」・ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」・グラナドス「ゴイェスカス」等といった西洋音楽の諸作に倣い、第1曲-第23曲-第2曲-第22曲といった順番で、扇が閉じてゆくように全体が回顧される。
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by ooi_piano | 2012-10-30 17:46 | POC2012 | Comments(0)