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Blog | Hiroaki Ooi

7/16(土) ラヴェル全ピアノ曲+小林純生新作初演 (その1)

連続ピアノリサイタル in 芦屋 2016 《先駆者たち Les prédécesseurs》

山村サロン (JR芦屋駅前・ラポルテ本館3階) 芦屋市船戸町4-1-301 http://www.y-salon.com/
チケット:全自由席 前売り¥2500 当日¥3000
予約/問い合わせ: 山村サロン 0797-38-2585 yamamura[at]y-salon.com
後援/一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)


【第二回】2016年7月16日(土)午後6時開演 (午後5時半開場)
  [※] ・・・水本明莉(助演)

c0050810_16332988.jpg●モーリス・ラヴェル(1875-1937):グロテスクなセレナード(1893) 3分
:古風なメヌエット(1895) 6分
:亡き王女のためのパヴァーヌ(1899) 6分
:水の戯れ(1901) 5分
:ソナチネ(1903/05) 11分
  I. 中庸に - II.メヌエット - III.生き生きと
:鏡(1904/05) 28分
  I.夜蛾 - II.悲しい鳥たち - III.海原の小舟 - IV.道化師の朝の歌 - V.鐘の谷
●小林純生(1982- ):《フーガ ~モーリス・ラヴェルを頌して》(2016、委嘱新作初演) 7分

 (休憩10分)

●モーリス・ラヴェル:夜のガスパール - アロイジュス・ベルトランによるピアノのための三つの詩(1908) 23分
  I.水の精 - II.絞首台 - III.スカルボ
:ハイドンの名によるメヌエット(1909) 2分
:マ・メール・ロワ(鵞鳥婆) - 子供のための5つの小品(1908/10) [※] 18分
  I.眠りの森の美女のパヴァーヌ - II.親指小僧 - III.レドロネット、陶器人形の女王 - IV.美女と野獣の対話 - V.妖精の園
:高雅で感傷的なワルツ(1911) 15分
  I.中庸に - II.かなり緩やかに - III.中庸に - IV.生き生きと - V.ほとんど緩やかに - VI.活発に - VII.やや落ち着いて - VIII.終曲

 (休憩10分)

:ダフニスとクロエ 第2組曲(1909/12)(レオン・ロック(1839-1923)による連弾版、日本初演) [※] 15分
  夜明け - 無言劇 - 全員の踊り
:初見課題用前奏曲(1913) 1分
:ボロディン風に(ワルツ)(1913) 2分
:シャブリエ風に(グノー《ファウスト》第3幕「花の歌」によるパラフレーズ)(1913) 2分
:クープランの墓(1914/17) 25分
  I.前奏曲 - II.フーガ - III.フォルラーヌ - IV.リゴードン - V.メヌエット - VI.トッカータ
:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(1919/20) 13分


使用エディション: ロジャー・ニコルス校訂による原典版(Edition Peters, 1991/2008)



小林純生 Sumio KOBAYASHI, composer
c0050810_9184831.jpg  1982年三重県菰野町生まれ。作曲を伊藤弘之と湯浅譲二に師事。日本音楽コンクール (2009)、 国際尹伊桑作曲賞 (2011)、 インターナショナル・ミュージック・トーナメント (2010)、 ICOMS国際作曲コンクール (2011)、 シンテルミア国際作曲コンクール (2012)、 アルヴァレズ室内オーケストラ作曲コンクール (2012)、 武満徹作曲賞 (2013)、 パブロ・カザルス国際作曲コンクール (2015)、サン・リバー賞(2015)、 ワイマール春の音楽祭作曲コンクール (2016)等に入賞・入選。ルーマニアのアイコン・アーツ現代音楽際 (2013) 、武生国際音楽祭 (2010、 2013、 2014)、韓国の統営市国際音楽祭 (2015) 、スロバキアのメロス・エトス国際現代音楽祭(2015)等で、アンサンブル・カリオペ、アンサンブルTIMF、イデー・フィクス・アンサンブル、東京シンフォニエッタ、東京フィルハーモニー交響楽団、ネクスト・マッシュルーム・プロモーション等により作品が演奏されている。現在は英国カンタベリーに在住、ケント大学博士課程で韻律論の研究に従事。公式サイト: http://sumiokobayashi.com/

〈主要作品〉
 《駆ける緑、うねる青》 (2009) [ピアノ五重奏]
 《アメジストの木の上で》 (2010) [fl, ob, cl, vn, vc, pf]
 《草とサファイアの平原》 (2011) [管弦楽]
 《雪のなかのヒバリ》 (2012) [フルートと弦楽合奏]
 《馥郁たる月の銀色のノート》 (2013、武生国際音楽祭委嘱) [fl, vn, va, vc, hp]
 《森から聞こえるのは…》 (2014、武生国際音楽祭委嘱) [リコーダー独奏]
 《水が咲いて》 (2014) [fl, cl, vn, va, vc, pf]
 《水面下の雪》 (2015、アジアン・コンポーザーズ・ショーケース委嘱) [cl, vn, va, vc, cb, pf]
 《レクイエムズ》 (2015) [マリンバと管弦楽]


小林純生:《フーガ ~モーリス・ラヴェルを頌して》(2016、委嘱初演)
  この曲はラヴェルのフーガ、特にその構造を模して作曲されている。極めて幾何学的なその構造は楽曲の基盤として作品のバランスを整える。安定した土台の上に、ラヴェルのフーガは均整のとれた形で構築されているが、この曲では曖昧にぼかされた線が曲を形作る。音の交差や声部数の多さ、リズムの不安定さ、ヘテロフォニックな書法が線を、そして作品自体を霞ませる。
  フーガの体を成している限り、特に鍵盤楽器のソロ曲の場合、複雑すぎるフーガはおそらくただ無秩序な音の連続に聞こえるだろう。この曲のなかではその不安定な音の集合に秩序を与えるものとして、安定した形式に加えて、ラヴェル的な和声が重要な役割を果たしている。調性という規則によって、雲散しそうな線に形が与えられるが、この和声法は楽曲を締め付け過ぎはしない。
  上記の配慮があってもバランス次第で楽曲は極めて難解なものにも簡明なものにもなりうるが、理解と不理解のはざまで、平衡がとられている。(小林純生)


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Aloysius Bertrand (1807-1841): "Gaspard de la nuit" -- Fantaisies à la manière de Rembrandt et de Callot (1836)



夜のガスパアル     (ベルトラン・詩)


I オンヂイヌ
  ・・・朧朧(おぼおぼ)しき調べ吾が仮寝(うたたね)を惑はし、
  哀しく嫋(なよよ)かに途絶へし歌聲(うたごへ)と聞き紛ふ囁(さゝめ)き、
  吾が枕邊に飄(たゞよ)ひたる心地こそせしか。
                   シアルル・ブリユノー ― 二人精(みたま)

―いで―  ―聽かれてよ―
其(そ)は妾(わ)ぞ、 オンヂイヌぞ、
欝(いぶ)せき月影映す汝(なれ)が窓をしも
玉の水滴(しづく)もて音(ね)を鳴かしむるは。

瞻(み)よ、館宇(しろ)の御令室(おんかた)は波文様(なみあや)の裳裾曳き
星辰(ほしぼし)抱く麗はしの夜と
熟睡(うまゐ)する瀛湖(うみ)をぞ凝眸(まも)りおはしたる。

波てふ波は 流(せ)に游(およ)ぐオンヂイヌぞ、
流てふ流は 妾が幽宮(おくつき)へ迂(くね)り導(ゆ)く小径(みち)、
妾が幽宮こそは 火と土(ち)と氣(け)のなす三角(みすみ)なれ
水底(みなそこ)揺蕩(たゆた)ふ陽炎の如(ごと)。

―いで―  ―聽かれてよ―
妾が御父(おんちゝ)は瑞枝(みづえ)もて擲(う)ち 飛沫(しぶき)揚げ給ふ。
妾が姉妹(はらから)は 若草萌え睡蓮(はちす)咲き 唐菖蒲(とうせうぶ)寓(やど)る島嶼(しまじま)を
泡沫(うたかた)の臀(かひな)もて愛撫(め)で 漁(いざ)り釣る髭長の絲柳をぞ戯(あざ)けたる。

妓(をんな)は囁(さゝめ)き歌ひつ。妓は指環を褒寶(かづけ)にて乞ふ、
吾が夫(せ)となりて
彼(か)の幽宮にて瀛湖の王(あるじ)たらんことを。

然(さ)るを吾が現身(うつそみ)の女(をんな)を愛するを聞きて
魍魎(あやかし)の妓  ―あな憂(う)たて―  と、
暫時(つと) 涕(なんだ)垂れ
・・・忽焉(たちまち) 哄(わら)ひさざめき
蒼冴(あをざ)めし吾が窓邊に雨と流れて消えにけり。



II 絞縊架(くびつりだい)
  彼(か)の絞縊架が邊(あた)りを蠕(うごめ)けるを何とぞ見る (フアウスト)

そも 何の音ぞも。
終夜(よただ) 咆吼(ほ)ゆる凩(こがらし)か、
将(は)た 吊られたる者の洩らす愁息(ためいき)か。

樹(たちき)の憫(あは)れを頼みて纏はりたる 石女(うまずめ)の蔦蘿(つたかづら)と
苔の中(うち)なる蟋蟀(こおろぎ)の挽歌(うたごえ)か。

聾(しひ)たる耳の邊(へ)を
勝鬨擧げ 獲物(さち)漁り飛ぶ羽蟲が角聲(つのぶえ)か。

あくがれ翔びて 禿頭(かむろ)より
血に塗(まみ)れし髪(くし)抜く甲蟲か。

将たは二尺なる毛氈(かも)を刺繍(かが)り
縊(くく)られたる首に飾らんとする土蜘蛛か。

其(そ)は 地の涯の都城(みやこ)の塁壁(ついぢ)より來たる
梵鐘(かね)の音なり。
夕さりて殷紅(あか)みゆく縊れたる者の骸(なきがら)。



III スカルボ
  牀(とこ)の下、爐(ひをけ)の中(うち)、厨子の中にも、見えざりき―誰(たれ)も。
  何處(いづこ)より入りて、何處よりか出(い)でたりつる。  (ホフマン―夜話)

嗟呼(あゝ)、吾(われ) 幾度(いくたび)か邂逅(まみ)えし、スカルボと。
月影鮮(さや)かなる 彼(か)の夜半(よは)ぞ、
黄金(こがね)の群蜂(むらばち)鏤(ちりば)めし碧(あを)き旛(はたもの)の上なる
白銀(しろがね)の貨(ぜに)の如(ごと)。

吾 幾度か聞きし、
吾が冥(をぐら)き閨房(ねや)に戰(そよ)ぎわたる 彼(か)の嗤(わら)ひを
吾が羅(きぬ)の几帳(とばり)を引き掻く 彼の爪を。

吾 幾度か見し、
彼の者 牀下(ゆか)に降り立ち片脚(かたし)にて
仙女(まこ)の紡錘(をだまき)さながら
吾が寝齋(むろ)に旋廻(くるめ)き渡るを。

彼(か)の時 吾 彼の者消ゆと思ひたりしか。
彼の侏儒(こびと) 月影浴び吾が眼前(まへ)に
巨(おほ)きに成り成りて
伽藍(みてら)の鐘楼(たかどの)と見ゆ、
其の尖帽(かうぶり)に黄金の鈴揺れて。

須臾(やがて) その體(からだ) かの貌(かほばせ) 倶(とも)に蒼冴め
燭(そく)の涙と透けゆき 色喪(う)せゆき、

然(さ)りて 彼の者 突如(うちつけ)に 見えずなりたりけり。

                   (安田 毅 ・ 譯)


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by ooi_piano | 2016-07-04 18:19 | Comments(0)