9/20(水) 現代日本人作品2台ピアノ傑作選

c0050810_09075884.jpg名録音誕生を応援するチケットレス・後払い方式のコンサート

ピティナ・ピアノ曲事典 公開録音コンサート
2017年9月20日(水) 19:00 開演(18:30開場)
浦壁信二+大井浩明(2台ピアノ)

入場料:後払い方式(※)
c0050810_09230354.jpg東音ホール 
(JR山手線/地下鉄都営三田線「巣鴨駅」南口徒歩1分)
【予約/お問い合わせ】 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ) 本部事務局 〒170-8458 東京都豊島区巣鴨1-15-1 宮田ビル3F
TEL:03-3944-1583(平日10:00-18:00) FAX: 03-3944-8838
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【演奏曲目】
■I.ストラヴィンスキー(1882-1971):舞踊カンタータ《結婚(儀礼)》(1914/17)  24分  歌詞邦訳全文
  花嫁の家で(おさげ髪) - 花婿の家で - 花嫁の出発 - 婚礼の祝宴(美しい食卓)
○西風満紀子(1968- ):《melodia-piano I 》(2014、世界初演) 9分
■一柳慧(1933- ): 《二つの存在》(1980) 7分
○西風満紀子(1968- ):《melodia-piano II 》(2014、世界初演) 9分
■西村朗(1953- ): 《波うつ鏡》(1985) 7分
 (休憩10分)
■篠原眞(1931- ): 《アンデュレーションB [波状]》(1997) 11分
■湯浅譲二(1929- ): 《2台のピアノのためのプロジェクション》(2004)  7分
■南聡(1955- ): 《異議申し立て――反復と位相に関する2台のピアノのための協奏曲:石井眞木の思い出に Op.57》(2003/10、本州初演) 22分
○西風満紀子(1968- ):《melodia-piano III 》(2015、世界初演) 6分
(※)入場料:後払い方式・・・コンサート後に、好きな額を当日お配りする封筒にいれて頂きます。そのお金は演奏者ならびにピティナ・ピアノ曲事典への寄付金として大切に使わせて頂きます。 公開録音について


□浦壁信二 Shinji Urakabe, piano
  1969年生まれ。4才の時にヤマハ音楽教室に入会、1981年国連総会議場でのJOC(ジュニア・オリジナル・コンサート)に参加し自作曲をロストロポーヴィッチ指揮ワシントンナショナル交響楽団と共演。1985年から都立芸術高校音楽科、作曲科に在籍後、1987年パリ国立高等音楽院に留学。和声・フーガ・伴奏科で1等賞を得て卒業、対位法で2等賞を得る。ピアノをテオドール・パラスキヴェスコ、伴奏をジャン・ケルネルに師事、その他ヴェラ・ゴルノスタエヴァ、イェルク・デームス等のマスタークラスにも参加。1994年オルレアン20世紀音楽ピアノコンクールで特別賞ブランシュ・セルヴァを得て優勝。ヨーロッパでの演奏活動を開始。その後拠点を日本に移し室内楽・伴奏を中心に活動を展開、国内外の多くのアーティストとの共演を果たしている。近年ソロでも活動の幅を拡げ'12年CD「水の戯れ~ラヴェルピアノ作品全集~」'14年「クープランの墓~ラヴェルピアノ作品全集~」をリリース、それぞれレコード芸術誌に於て特選、準特選を得るなど好評を得ている。EIT(アンサンブル・インタラクティブ・トキオ)メンバー。現在、洗足学園音楽大学客員教授、ヤマハマスタークラス講師として後進の指導にも当たっている。

□大井浩明 Hiroaki Ooi, piano
  京都市出身。スイス連邦政府給費留学生ならびに文化庁派遣芸術家在外研修員としてベルン芸術大学(スイス)に留学、ブルーノ・カニーノにピアノと室内楽を師事。同芸大大学院ピアノ科ソリストディプロマ課程修了。ガウデアムス国際現代音楽演奏コンクール(1996)、メシアン国際ピアノコンクール(2000)入賞。朝日現代音楽賞(1993)、アリオン賞(1994)、青山音楽賞(1995)、村松賞(1996)、出光音楽賞(2001)、文化庁芸術祭賞(2006)、日本文化藝術賞(2007)、一柳慧コンテンポラリー賞(2015)等受賞。「ヴェネツィア・ビエンナーレ」「アヴィニョン・フェスティヴァル」「MUSICA VIVA」「ハノーファー・ビエンナーレ」「パンミュージック・フェスティヴァル(韓国・ソウル)」「November Music Festival(ベルギー・オランダ)」等の音楽祭に出演。アルトゥーロ・タマヨ指揮ルクセンブルク・フィルと共演したCD《シナファイ》はベストセラーとなり、ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジック"CHOC"グランプリを受賞。2010年からは、東京で作曲家個展シリーズ「Portraits of Composers (POC)」を開始、現在までに31公演を数える。公式ブログ: http://ooipiano.exblog.jp/



【曲目解説】

c0050810_09112107.jpg●ストラヴィンスキー:舞踏カンタータ《結婚(儀礼)》
  Igor Stravinsky LES NOCES / La tresse - Chez le marié - Le départ de la mariée - Le repas de noces
  イーゴリ・フョードロヴィチ・ストラヴィンスキー(1882 - 1971)は、帝政ロシアの俗福な家庭に生まれた。父はサンクト・ペテルブルグの王立マリインスキー歌劇場のバス歌手で、1893年にこの街でチャイコフスキーが没したとき、その死の床にかけつけたリムスキー=コルサコフ、グラズノフといった音楽家の中に、イーゴリの父、フョードル・ストラヴィンスキーもいたと記録されている。
  ストラヴィンスキーは革命の3年前、1914年に家族とともにロシアを出ている。その後ヨーロッパで興行師ディアギレフと組んで作曲・編曲活動に拍車がかかる。その点、1917年に同じくロシアを出たラフマニノフがその後アメリカに渡ったあと創造活動が委縮してしまったのとは対照的だ。
  ストラヴィンスキーはロシアを捨てたあと、純粋な望郷の念にかられただけの理由で曲を書いたとは思えない。《結婚(儀礼)》はロシアの古い婚礼の儀式を題材としているけれど、たとえばチャイコフスキーやムソルクスキーのように古いロシアの旋律をそのまま持ってきている、というものではない。全音階、アンヘミトニー(無半音)が通常のロシアの民族音楽よりもはるかに多用されている。おそらく当時の一般のロシア人が聴いても「なんやこれは」と違和感を覚えたはずだ。19世紀後半にロシアのインテリ家庭で育った人間として、またあのやや人をおちょくったような風貌からしても、この20世紀を代表する作曲家の屈折した発想と構想は、現代の我々にそう易々と覗き込めるものではなかろう。
  《結婚(儀礼) Les noces(仏), Свадебка(露)》は、作曲家自身によるいくつかの異なる楽器編成によるドラフトがあるが、1923年の最終ヴァージョンは、4台のピアノ、打楽器、声楽(ソロと合唱)という編成である。この20分強の曲は4つの場面から成り立っており、連続して演奏される。
 - (婚礼に出かける前の)花嫁の家で。原タイトルは「おさげ髪, Коса(露)」
 - (同じく)花婿の家で。
 - 花嫁の出発。
 - 婚礼の祝宴。原タイトルは「美しい食卓、Красный Стол (露)」

  曲名が示すとおり、扱われているのは「結婚儀礼」、つまり「しきたり」であり、花嫁、花婿がどういう人間であるかということは全く問題にされていない。古いロシアでは、若い結婚前の女性は髪を三つ編み(коса)にして、一本の長く垂れたおさげをこしらえ、処女の象徴とした。この一本おさげ髪が嫁入り前に花嫁の家において解かれ、人妻の象徴である二本のおさげに結い直され、これがプラトーク(ネッカチーフ)で覆われて、婚礼の祝典に出発する。革命後、このкосаという言葉・象徴性は共産主義の思想に合わず鳴りを潜めていたようだが、ソ連邦崩壊後(当のストラヴィンスキーは知るよしもない)、今度はファッション用語として使われ始めた。この場合、三つ編みは長く垂れなくてもよい。美人の首相と一時期脚光を浴びたウクライナのユリヤ・チモシェンコのあの髪型もкосаである。もちろん垂れた一本おさげを編んでいる女性と処女性は現代のロシアにおいて全く関係は無い。
  「婚礼の祝宴」の儀式は、日本の昔の嫁入り儀式、つまり殆どなんの会話もしない花嫁・花婿が仲人に挟まれて座敷の中心に置物のように座らされ、親戚一同が回りで飲めや歌え踊れのドンチャン騒ぎをしている光景に似ているかもしれない。面白いのは、その祝宴のさ中に新郎新婦の寝床に先にはいって床を温めている係りの別夫婦がいて、祝宴が続いている間に新郎新婦は「ゴーリカ!ゴーリカ!(苦いぞ、苦いぞ。酒がまだ苦いから、もっとキスをして甘くしろ)」という回りの掛け声に促されて、半ば強制的に温められた寝床に急き立てられる、という場面。なお結婚披露宴で客たちが「ゴーリカ!ゴーリカ!」と叫んで新郎新婦にその場でキスを迫る風習は、現代のロシアの結婚式でもよく見られる。
  ストラヴィンスキーはその育ちからしてこのようなロシアの田舎の古い慣習を日常として経験したことはあまりないはずで、こういった民俗的な結婚儀礼を原始的な生活への回帰というテーマとして書いたのか、あるいは曲を献呈しているディアギレフ率いるロシア・バレエ団(バレエ・リュス)の増収増益を促すネタとして商業的にこのテーマを選んだのか、あるいはその両方なのか、これはいろいろな見方があろう。(大塚健夫)



c0050810_09254258.jpg●西風満紀子:《melodia-piano I, II, III》
 Makiko Nishikaze: melodia-piano I/II/III
 melodiaシリーズはソロ楽器のための作品集であるが、melodia-pianoはそのシリーズに含まれる作品としてピアノ2台のために作曲。
 現代の音楽にはなぜすぐ覚えられるようなメロディーがないのか、とよく質問される。
 メロディー、旋律 - 音の横のつながり。
 音楽には聴き知ったメロディーを再確認するという鑑賞の仕方がある。しかし、未知なるメロディーに出逢った時、予期せぬ音の流れについて行く、というような味わい方もできるのではないか。聴衆が受け身的に音を待つのでなく、今、立ち上がる音と共に歩むように聴く、そのような聴き方を促せるような作品を創作していきたい。その課題を追求するために、旋律楽器のための作品に取り組んでいる。
 ピアノは横の旋律と縦の音の重なりを演奏することができるが、melodiaシリーズの一環として、より複雑な旋律を2台のピアノで紡ぎだすことを試みた。ドイツ語で音の色(Klangfarbe)を創るという表現が使われるが、創るというよりむしろ発見していく、という意識を持って創作している。(西風満紀子)

□西風満紀子  Makiko Shinikaze, composer
  和歌山県出身。ベルリン在住。作曲家、ピアニスト、サウンドパフォーマー。愛知県立芸術大学卒業後、ミルズカレッジ大学院(カリフォルニア)を経てベルリン芸術大学大学院修士課程修了。これまでヨーロッパ、南米アメリカなど世界各地の音楽祭で作品が演奏されている。
  様々な楽器や声のための作品のほか、最近は特殊な空間で上演する大掛かりなプロジェクトに取り組むことが多い (spatial music/ Räumliche Musik)。ppt (2013), morepianos I, II (2014) vi-ta, wanderlied (2015) など実験的なパフォーマンスを作品の中に取り入れ、通常のコンサートの枠を超えた表現方法を追及している。
  またピアノ、クラヴィコード、チェンバロなど鍵盤楽器の自作自演も活動の中心である。古い鍵盤楽器のために特殊な新しい演奏技術を取り入れるのではなく、楽器そのものの特性を生かしつつ多様な音色を引き出せるような作品作りを目指す。ドイツ語の“musizieren”- 音楽すること、という言葉をモットーに、作曲と演奏・パフォーマンスを合わせた独自の創作活動を行っている。公式サイト: http://www.makiko-nishikaze.de/


c0050810_09144906.jpg●一柳慧: 《二つの存在》 ~2台のピアノのための
 Toshi Ichiyanagi: Two Existence for 2 pianos
  曲はそれぞれの奏者が、相手の存在に対してかかわりあうかたちで進行する。それはあるときは谺のように、あるときは水紋のように、また、あるときは対話するように、そして、あますことなく写し出す鏡のように、さまざまな反応を示しながら共鳴しあう。聴き終わったとき、2台のピアノが一つの音響体となって、音の残像が人びとの耳にとどまるように。初演は1980年6月、第三回東京音楽芸術祭(イイノホール)で高橋悠治と作曲者により行われた。(一柳慧)


□一柳慧 Toshi Ichiyanagi, composer
  神戸出身。作曲家、ピアニスト。10代二度毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門第1位受賞。19歳で渡米、ニューヨークでジョン・ケージらと実験的音楽活動を展開し、1961年に帰国。偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品で、様々な分野に強い影響を与える。これまでに尾高賞を5回、フランス文化勲章、毎日芸術賞、京都音楽大賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章、旭日小綬章、文化功労者、日本芸術院賞恩賜賞など受賞多数。作品は文化庁委嘱のオペラ「モモ」(1995)や、新国立劇場委嘱オペラ「光」(2003)、神奈川県文化財団委嘱オペラ「愛の白夜」(2006)の他、10曲の交響曲、室内楽作品、特に「往還楽」「雪の岸、風の根」「邂逅」などの雅楽、声明を中心とした大型の伝統音楽など多岐にわたっており、音楽の空間性を追求した独自の作風による作品を発表し続けている。作品は国内のオーケストラはもとより、フランス・ナショナル、イギリス・BBC、スイス・トーンハレ、ノルウェー・オスロフィルなどのより世界各国で演奏されている。現在、財団法人神奈川芸術文化財団芸術監督。また、正倉院や古代中国ペルシャの復元楽器を中心としたアンサンブル「千年の響き」の芸術監督。



c0050810_09153607.jpg●西村朗:《波うつ鏡》
 Akira Nishimura: Vibrancy Mirrors for 2 pianos
  全体を通し二台のピアノは全く同じ音域内で、トレモロ、メロディー、アルペッジョ等を奏しつづけます。両奏者が流動し波うつ響きの鏡を作り、その鏡の上に点病的なメロディー・ラインを映し出してゆく、というのが作曲の基本的なアイデアでした。白鍵上の明るい旋法(モード)を基調としてのリズミカルな曲である。(西村朗)

□西村朗 Akira Nishimura, composer
  大阪市に生まれる。東京芸術大学卒業。同大学院終了。西洋の現代作曲技法を学ぶ一方で、在学中よりアジアの伝統音楽、宗教、美学、宇宙観等に強い関心を抱き、そこから導いたヘテロフォニーなどのコンセプトにより、今日まで多数の作品を発表。
  日本音楽コンクール作曲部門第1位(1974)、エリザベート国際音楽コンクール作曲部門大賞(1977・ブリュッセル)、ルイジ・ダルッラピッコラ作曲賞(1977・ミラノ)、尾高賞(1988・1992・1993・2008・2011)、中島健蔵音楽賞(1990)、京都音楽賞[実践部門賞](1991)、日本現代芸術振興賞(1994)、エクソンモービル音楽賞(2001)、第3回別宮賞(2002)、第36回(2004年度)サントリー音楽賞、第47回毎日芸術賞(2005)等を受賞し、2013年紫綬褒章を授与される。この他に、02年度芸術祭大賞に「アルディッティSQプレイズ西村朗『西村朗作品集5』」が、05年度芸術祭優秀賞に「メタモルフォーシス・西村朗室内交響曲」が選ばれる。
  1993~94年、オーケストラ・アンサンブル金沢、1994~97年、東京交響楽団の各コンポーザー・イン・レジデンス。2000年よりいずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督を務める他、2010年草津夏期国際フェスティヴァルの音楽監督に就任。2007年東京オペラシティ「コンポジアム2007」のテーマ作曲家となり、ピアノ、室内楽、管弦楽作品が演奏され、武満徹作曲賞の審査委員を務め話題となる。放送の分野でも活躍の場を広げ、2003年よりNHK-FM「現代の音楽」の解説を6年間、2009年よりNHK-Eテレ「N響アワー」の司会を3年間務める。また、2015年4月からは、再度NHK-FM「現代の音楽」の解説を務める。
  近年海外においては、ウルティマ現代音楽祭(オスロ)、「ノルマンディの10月」音楽祭(ルーアン)、アルディッティ弦楽四重奏団、クロノス・カルテット、ELISION、ハノーヴァー現代音楽協会、ラジオ・フランス等から新作の委嘱を受ける他、ウィーン・モデルン音楽祭、「ワルシャワの秋」現代音楽祭、MUSICA・ストラスブール音楽祭、ブリスベイン音楽祭等において作品が演奏されている。この他、2009年ガウディアムス(アムステルダム)国際作曲コンクールの審査委員を務め、音楽週間において作品が演奏される。現在、東京音楽大学教授。



c0050810_09162861.jpg●湯浅譲二:《2台のピアノのためのプロジェクション》
  Joji Yuasa: Projection fro Two Pianos
  2004年10月に開催された、木村かをりと野平一郎によるピアノ曲9曲(1952年処女作から1997年まで)のコンサートのために書かれた。
  私はここで、2台のピアノを掌を組み合わせる形で、鍵盤を二倍に拡大する、これまでの2台のピアノ曲ではなく、2つのピアノがはなれて向かい合うと言う、ステレオフォニックな音楽、ピアノAとBが呼応し、融合するという空間的な運動性を生かした曲を構想した。
  曲は性格の異なる五つの部分とコーダで成り立っている。指によるミュートが単に音色の変化のみではなく音の遠近感の表出に大きな役割を果たしている。二人のピアニスト、2台のピアノでこそ初めて実現出来る音楽をイメージし、構想したのである。(湯浅譲二)

□湯浅譲二 Joji Yuasa, composer
  1929年8月12日、福島県郡山市に生まれる。作曲は独学。慶応大学医学部進学コース在学中より音楽活動に興味を覚えるようになり、やがて芸術家グループ<実験工房>に参加、作曲に専念する(1952)。以来、オーケストラ、室内楽、合唱、劇場用音楽、インターメディア、電子音楽、コンピュータ音楽など、幅広い作曲分野で活躍している。
  これまで彼の音楽は、映画や放送のための音楽を含めて、ベルリン映画祭審査特別賞(1961)、1966年および67年のイタリア賞、サン・マルコ金獅子賞(1967)、尾高賞(1972、88、97、2003)、日本芸術祭大賞(1973、83)、飛騨古川音楽大賞(1995)、京都音楽賞大賞(1995)、サントリー音楽賞(1996)、芸術選奨文部大臣賞(1997)、紫綬褒章(1997)、芸術院賞恩賜賞(1999)、日本芸術院賞(1999)、旭日小綬章(2007)など、数多くの賞を受けている。
  ニューヨークのジャパン・ソサエティ(1968–69)をはじめ、実験音楽センターUCSDの招待作曲家(1976)、DAADのベルリン芸術家計画(1976–77)、シドニーのニュー・サウス・ウェールズ音楽院(1980)、トロント大学(1981)、フランス国立音響音楽研究所(IRCAM; 1987)など、内外数多くの給付招聘を受けている。また、ハワイにおける今世紀の芸術祭(1970)、トロントのニュー・ミュージック・コンサート(1980)、香港のアジア作曲家会議(1981)、ブリティッシュ・カウンシル主催の現代音楽巡回演奏会(1981)、ニュージーランドのアジア太平洋祭(1984)、アムステルダムの作曲家講習会(1984、87)、ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習会(1988)、レーケンボー音楽祭(1986、88)、パシフィック・ミュージック・フェスティヴァル太平洋作曲家会議(1990)、東京オペラシティのコンポージアム2002、ルーマニア現代音楽祭(2009)、アンサンブル・モデルン・アカデミー(2009)、スタンフォード大学(2009)などに、ゲスト作曲家、講師、審査員として参加している。
  クーセヴィツキー音楽財団によるオーケストラ曲の委嘱をはじめ、ザールラント放送交響楽団、ヘルシンキ・フィルハーモニー交響楽団、NHK交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、カナダ・カウンシル、サントリー音楽財団、IRCAM、米国国立芸術基金などから、オーケストラ、室内楽、合唱、電子音楽など、多数の委嘱を受けている。1995年には第二次世界大戦終結50周年記念としてシュトゥットガルトの国際バッハアカデミーの委嘱による《和解のレクイエム》のレスポンソリウムを作曲、初演された。
  1981年より94年まで、カリフォルニア大学サン・ディエゴ校(UCSD)教授として、教育と研究の場でも活躍。現在、UCSD名誉教授、国際現代音楽協会(ISCM)名誉会員。


c0050810_09173192.jpg●篠原眞: 二台ピアノのための《アンデュレーションB [波状]》
 Makoto Shinohara: Undulation B for 2 pianos
  この作品は、12の半音を辿るメロディックな線の提示とその11の返送より成る計12の部分 - それらは人間の様々な心理とその現れとしての行動を暗示する - とそれらの繰り返し - それぞれ一回ずつ、但し最初の部分は二回 - すなわち総計25の部分より成っています。
  この繰り返しは個々の部分の継続的展開か、いろいろな変奏、或いは異なってはいるが類似したもの、などです。
  一部分からその部分への移行に際しては、それぞれ一つ前の部分の繰り返しが間に挟まれます。このことから作品には丁度引いては寄せる波の動きのようなフォームが与えられます。
  演奏は鍵盤だけに限られていますが、通常の奏法に加えて音量ペダルの少しの押し下げによって生じる短い余韻の音、無音で押し下げられた鍵の弦の共鳴による長い余韻の音、第三ペダルの使用による保持音と保持されていない音の重ね合わせ、等の奏法が用いられています。
  音は二台のピアノに配分され、これら二台ピアノは聴衆の前方左右に配置されます。こうしてステレオ次元も加わった空間音楽が聞かれるのです。1998年1月10日ミデルブルフ(オランダ)にて、向井山朋子と大井浩明により初演。(篠原眞)

□篠原眞 Makoto Shinohara, composer
 大阪市出身。東京藝術大学音楽学部(作曲:池内友次郎)、パリ国立高等音楽院(作曲・音楽哲学:オリヴィエ・メシアン、理論、指揮)、フランス放送局音楽探求グループ、ケルン国立音楽大学(作曲:ベルント・アロイス・ツィマーマン、電子音楽:ゴットフリート・ミハエル・ケゥーニッヒ)、ケルン市立音楽院(作曲:カールハインツ・シュトックハウゼン)に在学。マッギル大学音楽部(モントリオール)客員教授(1978)。パリ(フランス政府給費)、ミュンヘン(バイエルン政府給費)、ケルン(国立音楽大学給費)、ベルリン(ドイツ学術交流局助成)、ローマ(イタリア政府給費)、ニューヨーク(ロックフェラー3世財団助成)、モントリオール(カナダ芸術評議会助成)、ユトレヒト(ソノロジー研究所勤務)に滞在。作品は器楽(洋楽器、邦楽器)(ソロ、室内楽、オーケストラ)、声楽(ソロ、合唱)、電子音楽(電子音、具体音)(テープ、ライヴ)の範囲におよび、個々の作品で奏法の開拓、雑音の融合化、空間化(スピーカー、音源移動)、視覚化(奏者移動、マイム、スライド)の探求を行う。オランダ祭のテーマ作曲家(1983)。個展を国内(東京、名古屋、草津)で計7回、国外(ドイツ、オーストリア、オランダ、ポルトガル、ポーランド、アメリカ合衆国で計12回開催。国内(音楽之友社、全音楽譜出版社)、国外(ルデュック、ショット、リコルディ)より27作品出版。国内10社(カメラータ、フォンテック等)、国外(ドイツ、フランス、オランダ、スイス、デンマーク、スウェーデン、アメリカ合衆国)12社より23作品LP/CDに収録。 篠原眞作品リスト/録音・初演データ一覧(リンク)


c0050810_09181973.jpg●南聡:《異議申し立て》反復と位相に関する2台のピアノのための協奏曲 ~石井真木の思い出に Op.57
 Satoshi Minami: The Lodgement an Objection Op.57 - Concerto for 2 Pianos about Repetition and Phase : in Memory of Maki Ishii
  あいまいな記憶によるが、2003年当時(前年だったかもしれない)、3人の女性のピアニストが務めている大学にあらたに赴任してきた。彼女らは3人でひとつのコンサートを開いた、その折に作曲の依頼を受け書いたのがこの曲である。彼女らのうちの二人、松永加也子と二宮英美歌によって札幌で初演された。
  この作品を作曲する前に石井真木が世を去った。彼との付き合いは主に卓球であった。大体東京に出ると彼らと卓球に興じたし、はてはベルリンまで行っても卓球を楽しんだ。彼は豪放磊落でありつつもなかなかお茶目な性格で、とても魅力的な人物であった。
  作曲活動は、2000年を越えたころから失語症的マンネリを避けるため、作曲の方向性の間口を広げようと模索の段階に入っていった。この作品もその範疇で、石井真木のように荒くダイナミックな太いオスティナートの持続感を、僕自身における可能性として模索することから産み落とされた。
  さすがに旋律的音型のオスティナートの使用は抵抗感があったので、単音や和音の「反復」の持続を基本に置くことにした。その結果としてのこの曲の石井真木へのトリビュート的性格を明確化するため、彼の初期の全く点描的で断片的な小品《アフォリスメンⅠ》より一部引用をおこなった。彼の作品から彼の個性が未成熟のこの曲を選んだのは、僕の本質的な立ち位置をも明確にしたいという意図もあったからだ。
  副題の「反復と位相」のうち、「位相」のほうは直接的には、2台のピアノの間で、拍頭のずれがあるような錯覚がしばしば設けられている程度で、「反復」に比べると曲中での直接的な発展に乏しい。それでも2人の奏者が、せめぎ合い、かつ切り込みあうように前景楽想と後景楽想の役割を、交代させつつ「協奏」していく構成は、「位相」の発想の発展結果でもある。これをCDでは「ポジとネガの絡み合い」とも表現した。
  また、「反復」を主体にした持続は、感覚的持続感よりやや長く設定してある。このことによって、聴衆が、平凡な時間体験ではない、この曲の固有性を主張する時間体験を感受されることを願った。
  タイトルは、曲を素直に進行させない楽想の存在に由来するが、作曲当時、務める大学組織の改編時期でもあり、自身札幌校から岩見沢校への異動を余儀なく受けざるを得なかったことも、記憶の中では、気分としてタイトル決定の契機になったかもしれないと思う。
  もともとこの曲は《調和の習作》とその周辺の諸作op.50(2003-)の中の1曲であったが、2010年に56小節追加して、独立した作品に変更した。そして、全体が357小節に1小節足りない、ということが、この作品のサインとして重要になった。この改訂は、初演後の構想を、前年に大病をしたことで、自作の整理として始めたことによる。
  改訂版の初演は2011年福岡であった。そのあとすぐに札幌で再演した。演奏家は同じ二人である。ピアノソナタ5番op.46(2000)以降書いた最も重要なピアノのための作品だったが、誰もその後演奏していない。したがって今回が初めて本州での演奏になるし、初演者の手を離れての初めての演奏でもある。
  浦壁さん大井さんのデュオ、大変楽しみにしております。(南聡)

□南聡 Satoshi Minami, composer
  1955年東京生まれ。東京芸術大学大学院修了。在学中作曲を野田暉行、故黛敏郎両氏に師事。
  1983年ころより中川俊郎、久木山直、内藤明美ら故八村義夫周辺に集まった若手作曲家同人「三年結社」による作品発表やヴォーカル・パフォーマー内田房江、彫刻家金沢健一、コンポザー・パフォーマー鶴田睦夫、岩崎真、日舞家花柳かしほ等とコラボレートした「南極劇場」等のライヴ・パフォーマンス活動を東京周辺にて展開。
  1986年北海道に移住。同年独奏ハープを伴う管弦楽のための《譬えれば…の注解》op.14-3を日本音楽コンクールに提出するも落選。
  北海道教育大学札幌校に採用され勤務。
  1990年環太平洋作曲家会議に参加。
  1991年管弦楽のための《彩色計画Ⅴ》op.17-5が評価されて村松賞受賞。
  1992年《歓ばしき知識の花園Ⅰb》op.15-5で文化庁舞台芸術奨励賞佳作。同年、ケルンでの日本音楽週間92に招待され、アンサンブルのための《昼Ⅱ》op.24-2が委嘱初演される。以降約10年間は最も活発に作曲活動を展開。
  2001年と2002年はISCMの国際音楽祭に《帯/一体なにを思いついた?》op.39《日本製ロッシニョール》op.29が入選、2003年にはアジア音楽祭に《譬えれば…の注解》が作曲後17年越しで入選。
  2001年慢性脳硬膜下血腫で手術受ける。
  2003年には初のCD作品集「ジグザグ・バッハ」をリリース。
  2005年岩見沢コロ・フェスタで四群の合唱、増幅された口琴群、フルート、打楽器のための《モビールのように》op.51委嘱初演。
  2007年北海道教育大岩見沢校准教授に配置替えになる。
  2009年大動脈解離で手術受ける。
  2012年CD作品集「昼」が第50回日本レコード・アカデミー賞を現代音楽部門受賞した。同年札幌コンサートホール・キタラでの初めての個展。
  2015年ベートーヴェンの《大フーガ》を吹奏楽に編曲、スーパー・ウィンズにて初演。
  現在、北海道教育大学岩見沢校教授、荒井記念美術館評議員、札幌コンサートホール・キタラ企画運営委員、北海道芸術学会会長、日本現代音楽協会会員、北海道作曲家協会会員、21世紀音楽の会会員ほか。
  近作(作品番号を付しているもののみ): 管弦楽のための《昼Ⅴ》op.53(2006)、クラリネットとピアノのための《11の顔》op.54(2007)、二面の二十絃筝のための《昼Ⅵ(断章)》op.55(2008)、《鳥籠の中の変貌/室内協奏曲》op.56(2008-)、2台のピアノのための《異議申し立て》op.57(2003/10)、《昼Ⅶ/ほとんど協奏ソナタ》op.58(1992-2010)、5楽器のための曲集《波はささやき》op.59(2011-)、スネアを伴うクラリネットと紙をプリペアードされたハープのための《音響版画》op.60(2012)、弦楽四重奏のための《第2アリア…》op.61(2015-16)、3楽器のための《昼Ⅷ》op.62(2011-17)、《工房より》op.63(2016-)



【浦壁信二+大井浩明 ドゥオ】

■2014年9月12日 http://ooipiano.exblog.jp/22474259/
 D.ショスタコーヴィチ:交響曲第4番ハ短調作品43 (1935/36) (作曲者による2台ピアノ版、日本初演)[全3楽章、約60分]
 A.スクリャービン:交響曲第4番作品54《法悦の詩》 (1908) (レフ・コニュスによる2台ピアノ版)[単一楽章、約20分]
(アンコール)B.バルトーク:《管弦楽のための協奏曲》より第4楽章「遮られた間奏曲」(1943、ヴェデルニコフ編)
 三宅榛名:《奈ポレオン応援歌》(1979)

■2015年3月13日 http://ooipiano.exblog.jp/23322462/
 A.オネゲル:交響曲第3番《典礼風》(1945/46)(ショスタコーヴィチによる2台ピアノ版、日本初演)[全3楽章、約30分]
  I. 怒りの日(Dies irae) - II. 深き淵より(De profundis clamavi) - III. 我らに平和を(Dona nobis pacem)
 O.メシアン:《アーメンの幻影》(1943)[全7楽章、約50分]
  I. 創造のアーメン - II. 星たちと環のある惑星のアーメン - III. イエスの苦しみのアーメン - IV. 願望のアーメン - V. 天使たち、聖人たち、鳥たちの歌のアーメン - VI. 審判のアーメン - VII. 成就のアーメン
(アンコール)A.オネゲル:《パシフィック231》(1923)(N.キングマン(1976- )による二台ピアノ版(2013)、世界初演)
 P.ブーレーズ:構造Ia (1951)

■2015年5月22日  http://ooipiano.exblog.jp/24126209/
 G.マーラー:交響曲第2番ハ短調《復活》(1888/94) [全5楽章] (約80分) H.ベーン(1859-1927)による二台ピアノ版(1895) (日本初演)
  I. Maestoso - II.Andante con moto - III. In ruhig fließender Bewegung - IV.Urlicht - V. Im Tempo des Scherzos. Wild herausfahrend
 B.A.ツィマーマン:《モノローグ》(1960/64) [全5楽章]  (約20分)
  I.Quasi irreale - II. - III. - IV. - V.
(アンコール)G.マーラー:交響曲第3番第5楽章「天使たちが私に語ること」(J.V.v.ヴェスによる四手連弾版)

■2016年9月22日 《СТРАВИНСКИЙ ОСТАЕТСЯ》 http://ooipiano.exblog.jp/25947275/
 I.ストラヴィンスキー:《4つのエテュード》(1917)
  I. 踊り - II. 変わり者 - III. 雅歌 - IV. マドリード
 I.ストラヴィンスキー:舞踊カンタータ《結婚(儀礼)》(1917)
  花嫁の家で(おさげ髪) - 花婿の家で - 花嫁の出発 - 婚礼の祝宴(美しい食卓)
 I.ストラヴィンスキー:舞踊音楽《浄められた春(春の祭典)》(1913)
  〈大地讃仰〉 序奏 - 春の兆しと乙女たちの踊り - 誘拐 - 春の輪舞 - 敵の部族の戯れ - 賢者の行進 - 大地への口吻 - 大地の踊り
  〈生贄〉 序奏 - 乙女たちの神秘の集い - 選ばれし生贄への賛美 - 曩祖の召還 - 曩祖の祭祀 - 生贄の踊り
(アンコール)I.ストラヴィンスキー:《魔王カスチェイの兇悪な踊り》
 S.プロコフィエフ:《邪神チュジボーグと魔界の悪鬼の踊り》 (米沢典剛による2台ピアノ版

■2017年4月28日 《Bartók Béla zenekari mesterművei két zongorára átírta Yonezawa Noritake》 http://ooipiano.exblog.jp/26516776/
 B.バルトーク=米沢典剛:組曲《中国の不思議な役人 Op.19 Sz.73》(1918-24/2016、世界初演)
    導入部 - 第一の誘惑と老紳士 - 第二の誘惑と学生 - 第三の誘惑と役人 - 少女の踊り - 役人が少女を追い回す
 B.バルトーク=米沢典剛:《弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽 Sz.106》(1936/2016、世界初演)
    I.Andante tranquillo - II.Allegro - III.Adagio - IV.Allegro molto
 B.バルトーク=米沢典剛:《管弦楽のための協奏曲 Sz.116》(1943/2016、世界初演)
  I.序章 - II.対の提示 - III.悲歌 - IV.遮られた間奏曲 - V.終曲
(アンコール) 星野源:《恋 (Szégyen a futás, de hasznos.)》(2016) (米沢典剛による2台ピアノ版)


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by ooi_piano | 2017-09-17 18:56 | POC2017 | Comments(0)