12/4(月)J.S.バッハ:クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ 全6曲 BWV1014-1019

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2017年12月4日(月) 18時30分開演(18時開場)
東京オペラシティ 近江楽堂 一般5000円/学生4000円

ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685 – 1750) : クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ BWV1014 - 1019
第1番 ロ短調 BWV1014 [全4楽章] 約15分
  Adagio - Allegro - Andante - Allegro
第2番 イ長調 BWV1015 [全4楽章] 約13分
  (Dolce) - Allegro - Andante un poco - Presto
第3番 ホ長調 BWV1016 [全4楽章] 約17分
  Adagio - Allegro - Adagio ma non tanto - Allegro
 (休憩 15分)
第4番 ハ短調 BWV1017 [全4楽章] 約15分
  Largo - Allegro - Adagio - Allegro
第5番 ヘ短調 BWV1018 [全4楽章] 約16分
  (Lamento) - Allegro - Adagio - Vivace
第6番 ト長調 BWV1019 (最終版) [全5楽章] 約17分
  Allegro - Largo - Allegro - Adagio - Allegro


c0050810_13170294.jpg【お問い合わせ】 yurikaviolin@kvj.biglobe.ne.jp tel 03-6411-1977(辻) 
matsukiart@nifty.com tel 03-5353-6937(松木アートオフィス、火~日/10~17時)




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阿部千春  (バロックヴァイオリン)
  塩川庸子氏、尾島綾子氏、前澤均氏、金倉英男氏、村上和邦氏、菊地俊一氏に師事。武蔵野音楽大学卒業後、ドイツ・シュツットガルト国立音楽大学でスザンネ・ラウテンバッハー氏に師事。在日中より菊地俊一氏、永田仁氏を通して古楽に関心を持っており、1994年トロッシンゲン国立音楽大学古楽科に入学、バロックヴァイオリンをジョルジオ・ファヴァ氏に師事。ディプロム終了後、同大学院にてフランソワ・フェルナンデス、エンリコ・ガッティ、ジョン・ホロウェイ各氏のもとで研鑽を積む。
  1999年、ドイツ産業連盟・ドイツ財界文化部主催の”古楽・弦楽器コンクール”にて特別奨励賞を受賞。大学院修了後、スコラカントルム・バジリエンスィス(バロックヴァイオリン、ヴィオラ・ダモーレ)、ケルン国立音楽大学(古楽科室内楽専攻)に在籍。在学中より、オーケストラ/室内楽奏者、ソリストとして数多くの演奏会、CD、各地放送局の録音に参加、ヨーロッパ各国に活動範囲を広げる。現在、ドイツ・ケルンに在住。ヴィオラ・ダモーレ奏者としても活動。コンチェルトケルンでは演奏の他、資料研究も担当。国内においては2009年から2012年にかけて大井浩明氏とのモーツァルト・ヴァイオリンソナタ全曲シリーズを完結。2013年にはバッハのヴァイオリン無伴奏全曲演奏会を開催する。 公式サイト http://chiharu.de/ (ブログ随時更新中)






バッハのヴァイオリンソナタ集について―――阿部千春


曲集の成立・出典

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 Johann Sebastian Bach ヨハン・セバスティアン・バッハ( 1685 – 1750 ) の " クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ " 6曲は、ケーテン時代 ( 1717 – 1723 ) の終わり頃、1720年以降にチクルスとしてまとめられたと考えられています。ヴァイマール時代から少しずつ書き溜めていたと見られ、ライプツィヒに移ってからも ( 1723 - )手を加えていったようです。宮廷での演奏、ライプツィヒではコレギウム・ムジクムでも活用されていたかと思われます。
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータBWV1001 - 1006 には自筆譜が残っており1720年という年代が記されていますが、このソナタ集 BWV1014 - 1019 には自筆譜が残っていません。バッハ自身、また彼の相続者が管理に疎かったこともあり、19世紀半ばまでに室内楽のかなりの自筆譜が紛失しました。
 1802年に出版されたJohann Nicolaus Forkel ヨハン・ニコラウス・フォルケル ( 1749 – 1817 ) による最初のバッハ伝にはこのような記述があります。 「 この6曲はケーテン時代に完成された。彼のこの分野における最初のマイスター作品と言えるだろう。作品集を通してフーガ的技法が使われており、クラヴィーアとヴァイオリンとの間でのカノンは歌唱的で性格に富んでいる。ヴァイオリンパートにはプロ的技術が要求される。バッハはこの両方の楽器の技術的・音楽的可能性を熟知していた。」
 ヴァイマール ( 1708 – 1717 ) では1714年からコンサートマスターとして任命されたこともあるバッハは、当時オルガンの大家として有名でしたが、ヴァイオリン / ヴィオラの演奏にも精通していました。当時、通奏低音のレッスンでは先生がヴァイオリンで旋律を担当し生徒が伴奏していくという形がスタンダードだったと言われています。バッハがこの6曲の演奏に際して、ヴァイオリンパートを受け持ったことも十分考えられます。

 現存するもっとも古い出典は、1725年頃のバッハ本人と当時ライプツィヒ・トマス学校で学んでいた甥のJohann Heinrich Bach ヨハン・ハインリヒ・バッハ の手で書かれたチェンバロ譜で、ベルリン国立図書館に保管されています。この楽譜と一緒に保管されているヴァイオリンパート譜は、その数年後にブラウンシュヴァイクの宮廷音楽家Georg Heinrich Ludwig Schwaberg ゲオルク・ハインリヒ・ルードヴィヒ・シュヴァーベルク ( 1696 – 1772 ) がライプツィヒ滞在の折に紛失した譜の代わりとして書いたものです。

 バッハの次男Carl Philipp Emanuel Bach カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ ( 1714 – 1788 ) が1774年に記しています。「 6曲のこのクラヴィーアトリオは敬愛なる父の作品の中でも特筆に値する仕事である。50年を隔ててなお素晴らしい作品と言える。」
彼は、父ヨハン・セバスティアンがこのチクルスを作曲した当時非常に斬新な手法だったチェンバロのオブリガート楽器としての室内楽での使用 ( チェンバロはそれまでは室内楽において通奏低音楽器としての扱いが普通だった )、音楽的内容の質、そして緩徐楽章における歌唱的な技法を高く評価しています。自身このスタイルを「旋律楽器とチェンバロのためのトリオ」と分類、同じ手法での作品を残しています。
 この手法は伝統的なトリオソナタの編成 ( 2つの上声と通奏低音 ) をヴァイオリンとチェンバロに振り分けたもので、6曲のソナタの大半がこの形をとっています。この手法には経済的効果もあり、腕の立つ2人の奏者によっての演奏は、同じ演奏効果をより少ないリハーサルによって可能にするものでした。また、バッハが活躍したドイツ・チューリンゲン / ザクセン / ベルリン地方で作られていたチェンバロは特に高音において音の伸びがよく、ヴァイオリンとの旋律的掛け合いの効果を狙うことができたと見られます。マニュアル指定が後の版にもないため、1段鍵盤の比較的小さい楽器を使ったことも考えられます。

 さらにこの編成での利点は、通奏低音の和声的なぶ厚い層が削減されることを通して全体の響きが軽くなり、対位法の構造がよりはっきりする点にあります。また、一つの旋律をチェンバロが担当することで、2 つの旋律楽器を用いた伝統的なトリオソナタ形式よりも旋律が絡み合い、より軽快さ、リズム / 構成の明確さを生み出します。


バロック時代におけるソナタの誕生と発展

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 器楽曲という分野は17世紀を通して大きな発展を遂げました。ルネサンス時代、主に声楽ポリフォニーが教会・宮廷において芸術音楽として演奏され、高い水準の対位法技法が確立させます。1600年頃、その複雑な構造とは違う、歌詞を簡潔な形で聞き手に伝えるモノディーの運動がイタリア・フィレンツェで興り、通奏低音という演奏習慣が確立されます。この頃機能が改良され性能が向上してきた楽器を用いての楽曲にも、このモノディー様式・通奏低音の習慣の影響が見られるようになりました。Michael Praetorius ミヒャエル・プレトリウス ( 1571 – 1621 ) の著書、Syntagma musicum 音楽大全 ( 1619 ) にソナタについての記述が見られます。「Sonata ソナタという語はCanzonen カンツォーネと同様、人の声ではなく、楽器を用いて演奏される曲に使われる。ただしこの二つの語には違いがある : ソナタは重々しく荘厳なモテットの様式で作曲される。一方カンツォーネは細かい音を用いた、新鮮で軽快、そして速い楽曲である。」
 特にヴァイオリンという楽器はその音域の広さと自由な表現の可能性とで、器楽の歴史上、大きな役割を担いました。器楽という意味で使われていたソナタという語は、次第に決まった形式を指すようになります。1700年に出版されたArcangelo Corelli アルカンジェロ・コレルリ ( 1653 – 1713 ) のヴァイオリンソナタ集作品5は18世紀を通して全ヨーロッパに大流行した作品集です。この作品5は前半6曲が教会ソナタ、後半5曲 ( 最後の12番はラ・フォリアの主題による変奏曲 ) は室内ソナタの形式が用いられています。
 教会ソナタ・室内ソナタの概念が定着したのは18世紀に入ってからです。Sébastien de Brossard セバスティアン・ド・ブロサール ( 1655 – 1730 ) の音楽辞典 ( 1703 ) には次のようにあります。「教会ソナタは教会という場にふさわしく荘厳な楽章で始まり、フーガを用いた速く生き生きとした楽章が続く。その後1楽章よりさらに厳然な楽章が奏され、最後は再び速い曲で締めくくられる。この最後の楽章は2番目のものよりさらに軽く流れるような曲で、フーガはあまり用いられない。」「室内ソナタは室内で奏されるのにふさわしく、小さな舞曲を集めたものである。プレリュードまたは小さなソナタ ( ソナティネ ) で始まり、同じ調性の舞曲が次々と演奏される。」
 アルカンジェロ・コレルリは教会ソナタ形式によるトリオソナタ集作品1、作品3において4楽章形式を用いました。作品5では教会ソナタ形式による前半6曲に5楽章形式を用いていますが、4楽章形式に速い楽章を挿入した拡張版と言えるでしょう。


バッハのソナタにおけるイタリア様式の影響

 バッハは "クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ " 6曲のうち、1番から5番 ( BWV 1014 – 1018 ) に緩・急・緩・急の4楽章からなる教会ソナタ形式を使っています。第6番は他の5曲とは違い、室内ソナタ的な構造になっています。コレルリの作品5における5楽章形式の教会ソナタを前提にした可能性もあります。

 バッハが先達の作品を写譜し勉強していたことはよく知られていますが、ヴァイマール滞在中の1713-1714年頃、イタリアの最新の音楽に触れるチャンスがありました。当時のヴァイマール - ザクセン候Ernst August Iエルンスト・アウグスト1世 ( 1688 – 1748 ) の甥、Johann Ernst IVヨハン・エルンスト4世 ( 1696 – 1715 ) は音楽的才能に非常に恵まれており、1713年夏アムステルダム滞在の際、最新の出版譜を大量に購入し持ち帰ります。その中に1711年に出版されたAntonio Vivaldi アントニオ・ヴィヴァルディ ( 1678 – 1741 ) の協奏曲集 ”調和の霊感” 作品3がありました。ちょうどこの頃バッハの作風に顕著な変化が現れます。他の作曲家からの編曲のうち6曲は、ヴィヴァルディ・作品3からのものです。
 次男カール・フィリップ・エマヌエル・バッハが、1754年に出版された追悼文の中で触れているのが、父ヨハン・セバスティアンがヴィヴァルディから学んだ „musikalich denken“ ( 音楽的に考える: 音楽的思考 ) という新しいメソードです。バッハはヴィヴァルディの作品3を研究し、そのメソードを理解、発展させ、伝統的作曲技法の限界を超えた可能性を開拓、18世紀初頭に急速に発展した作曲法に大きな貢献を果たしました。ヴィヴァルディが作品3で導入した "Ordnung, Zusammenhang, Verhältnis“ ( 秩序 / 規律、連結、繋がり ) による音楽の組み立ては、簡潔明快さ・その単純さからくる自然のエレガンスと、知的に計算された複雑さ・多様性からのインテリゲンスという、美学的に両極端の2つの見地の組み合わせを可能にしました。アイデア / モチーフの組み立ての秩序を認識し、そのアイデア / モチーフの間を連携させ、全体の構築していく方法は、それまでの伝統的な作曲技法になかった可能性を広げます。バッハはこのヴィヴァルディが提示した新しい方法に、伝統的・厳格な対位法技法、内声部の旋律的な流れ ( これはバッハの通奏低音におけるレアリゼーションに典型的に示されています )、和声の緻密さを加え、これらを機能的、本質的に統括しました。
 ヴィヴァルディが提示した天才的な作曲システムと、それをさらに発展させたバッハの統括的なシステムはこの後18世紀の音楽史に大きな影響を与えていきます。

 バッハはクラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ6曲において、トリオソナタの書法による二重奏ソナタの形式をベースに、イタリアの新しい作曲のメソードを取り入れ、リトルネロ形式やコンチェルト形式を加えたチクルスを完成させたのでした。


ソナタ6番の成立にまつわる経過

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 第6番にはバッハ本人による3つの版が残されています。この3つの版に共通して使われているのが、第1楽章に置かれているアレグロ ( 初版ではヴィヴァーチェ、第2版ではプレスト )、ラルゴ、
アダージオの3つの楽章です。音楽学者Hans Eppsteinハンス・エップシュタインは、この3つの楽章は紛失したフルートとヴァイオリンと通奏低音のためのトリオソナタが元となっているのではとの仮定を提唱しています。音域、音型から、これはフルートとヴァイオリンではなく、2台のヴァイオリンのためのトリオソナタだったのではという意見もあります。

初版 : 1725年までに完成
Vivace
Largo
Cembalo Solo
Adagio
Violino solo è Basso
[Vivace ] Repetatur ab initio

 初版のCembalo Solo とviolino solo è Bassoは、同じ1725年に出版されたパルティータロ短調BWV830にCorrente 、Tempo di Gavottaとしてチェンバロソロ用に書き換えられています。その出版のためか、バッハはこの2曲の代わりにヴァイオリンとチェンバロによるカンタービレを入れ、第2版としました。

第2版 : 1725年 ( 又は1728年 ) 以降
Presto ( 初版の第1楽章と同じ )
Largo
Cantabile ma un poco adagio
Adagio
[Presto] ad Initio repetat(ur)

 Cantabile ma un poco adagio は結婚カンタータ „Herr Gott, Beherrscher aller Dinge"「主なる神、万物の支配者よ」BWV120a ( 1729年 ) のソプラノとヴァイオリンによるアリア"Leit, o Gott, durch deine Liebe" 「神よ、あなたの愛によってお導きください」から器楽ヴァージョンとして引用されました。ヴァイオリンパートはそのまま、ソプラノのパートはチェンバロの右手が担当します。ちなみにこのカンタータには別の版があります。( 1730年にアウグスブルク信仰告白で使われた版„Gott, man lobet dich in der Stille“ 「神よ、讃美はシオンにて静けく汝に上がり」BWV120bは紛失。1742年に市参事会員交代式で再演された版はBWV120として残っている)

最終版 : 1740年代 ?
Allegro ( 初版の第1楽章と同じ )
Largo
Allegro ( Cembalo solo )
Adagio
Allegro
 最終版でバッハはチェンバロソロを復活、新しく作曲してCantabileの代わりに付け加えます。最終楽章のアレグロは1731年以前に作曲されたと考えられる結婚カンタータ "Weichet nur, betrübte Schatten“ 「しりぞけ、もの悲しき影」BWV202のアリア "Phöbus eilt mit schnellen Pferden“「フェーブスは駿馬を駆り」の、通奏低音が担当する駿馬の足音の模倣音型を用いた楽章です。


クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ BWV1014 - 1019

第1番 ロ短調 BWV1014
 6曲中で唯一リトルネロ形式を用いておらず、このソナタ集の中で成立が一番古い可能性があります。

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1楽章 アダージョ 6/4拍子 ロ短調                           
 独唱アリアの形を取り、オーケストラの前奏のようなチェンバロの3度音型で始まり、ヴァイオリンがその上でアリア的旋律を奏でます。後半はチェンバロとヴァイオリンの掛け合いになり、二重奏曲としての様相となります。ヨハネ受難曲、そしてロ短調ミサの冒頭と同じ調性での、哀愁に満ちたアリア。

2楽章 アレグロ 2/2拍子 ロ短調
 三部構成 ( 第6番の1楽章と同じく、ダ・カーポ形式 ) による、3声のフーガ。中間部は長調となり、主題が動機分解され展開。後の時代のソナタ形式を思い起こさせるスケールの大きな楽章です。

3楽章 アンダンテ 4/4拍子 ニ長調
 伸びやかなトリオソナタ形式のデュエット。ため息の音型も使われ、メランコリーな情感が漂います。

4楽章 アレグロ 3/4拍子 ロ短調
 二部構成の3声によるフーガ。8分音符の反復音型による強い性格の主題、16分音符のなめらかな対旋律がコントラストを成す楽章です。


第2番 イ長調 BWV1015

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1楽章 ( 速度表示なし ) 6/8拍子 イ長調
 3声による模倣対位法。ヴァイオリンパートにはDolceドルチェと書かれています。牧歌的な穏やかな楽章。

2楽章 アレグロ ( 1725年頃とされる原典、また他の18世紀の写譜にはアレグロ・アッサイとある )  3/4拍子 イ長調
 三部形式によるフーガの技法を用いたリトルネロ形式。中間部に協奏的な効果が用いられている、華やかな楽章です。

3楽章 アンダンテ・ウン・ポーコ ( 1725年頃の原典にはアンダンテ・センプレ ) 4/4拍子 嬰ヘ短調
 オスティナートとしての分散和音の伴奏による、2声の厳格なカノン。版によってはStaccato sempreとの記述があるリュートのような伴奏の上に、もの悲しげな旋律がカノンとして展開します。

4楽章 プレスト 4/4拍子 ( 1725年頃の原典、また他の多くの版で2、またはアラ・ブレーヴェ ) イ長調
 3声のフーガによる二部形式の楽章。3楽章とは打って変わり、朗らかな曲想。


第3番 ホ長調 BWV1016

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1楽章 アダージョ 4/4拍子 ホ長調
 分厚いオーケストラの響きを思い起こさせるチェンバロの5声の伴奏音型に、ヴァイオリンが堂々とアリアを奏でる、スケールの大きな楽章。音楽学者エッピシュタインは、1714年に作曲されたカンタータ " Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen"「泣き、嘆き、憂い、怯え 」BWV 12のシンフォニアとの関連を指摘しています。チェンバロによる伴奏は、このカンタータにおけるヴァイオリンの伴奏音型からの転用と見られます。一種のオスティナートと解釈できます。

2楽章 アレグロ 2/2拍子 ホ長調
 1楽章とは一転してラフな感じのフーガの技法を用いたリトルネロ形式。三部からなります。

3楽章 アダージョ・マ・ノン・タント 3/4拍子 嬰ハ短調 
 ヴァイオリンとチェンバロの右手によるデュエット。バスの音型は1楽章と同様オスティナートと見ることができます。ここでは4小節に渡るオスティナート音型が階段状に使われています。

4楽章 アレグロ 3/4拍子 ホ長調
 オーケストラの響きを想定した、華麗なフィナーレ。リトルネロ形式によるフーガ。協奏曲の様式で、中間部には3連符の旋律と冒頭の16分音符の音型が競い合うがごとく交替で現れます。



第4番 ハ短調 BWV1017

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1楽章 ラルゴ ( 1725年頃の原典、また他の18世紀後半の写譜にはシチリアーナとの表示がある ) 6/8拍子 ハ短調
 シチリアーノのスタイルによるヴァイオリン独奏と通奏低音の二部形式。チェンバロによる16分音符の、シチリアーノ風の分散和音は、通奏低音のレアリゼーションの好例です。ヴァイオリンが奏でる旋律内の6度跳躍は、鎮魂歌のような曲に用いられる表現手段の一つで、後半では旋律内の跳躍が大きくなり、さらに強い表現となります。マタイ受難曲のアルトとヴァイオリンソロによるアリア、“Erbarme dich"「わが神よ、憐れみたまえ」を彷彿させる二部形式の楽章です。

2楽章 アレグロ 4/4拍子 ハ短調
 3声のリトルネロ形式によるフーガ。テーマに含まれる音程跳躍が3度、5度、8度、10度と広くなり、ダイナミックな効果を生んでいます。

3楽章 アダージョ ( 18世紀後半のコペンハーゲンに保管されている写譜にはアダージョ・マ・ノン・タント )  3/4拍子 変ホ長調
 1楽章と同じく、ヴァイオリンのソロと通奏低音のスタイル。チェンバロの分散和音はここでは8分音符による3連符で書かれています。旋律線にはエコー効果を狙った強弱の指定があります。また、分散和音の3連符に対して、旋律には付点のリズムが現れます。このような場合、同時代の音楽家たちの記述にあるように、緩徐楽章において付点のリズムは書かれてある通りに奏し、リズムを3連符に合わせることはなかったようです。旋律を浮かび出させる手法と言えるでしょう。

4楽章 アレグロ 2/4拍子 ハ短調
 二部形式のようなフーガ。2楽章の主題の変形とも取れる、やはり音程跳躍を使った主題を用いています。展開部においては、この主題とは性格の違う16分音符によるなめらかなテーマを用い、コントラストを出しています。



第5番 ヘ短調 BWV1018

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1楽章 ( 速度表示なし )  3/2拍子 ヘ短調
 18世紀の写譜の中にはラメントと記されているものもあり、哀愁に満ちた楽章です。チェンバロで同じ音型が音域を変えて繰り返され、オルガンによるプレリュード形式のひとつをとっています。モノトーンなチェンバロ音型にヴァイオリンの旋律がそれに分け入るように歌われます。
 チェンバロのこの音型は、モテット" Komm, Jesu, komm „ 「来れ、イエス、来れ」BWV229のモチーフと同じもので す。( „die Kraft ver-schwindt je mehr“ 「力がどんどん尽きていく…」という歌詞の箇所 )

2楽章 アレグロ 4/4拍子 ( 1725年頃の原典、また幾つかの他の写譜ではアラ・ブレーヴェ ) ヘ短調
 2楽章としては珍しく、繰り返し記号のついた反復二部形式をとっています。主題はヘンデルのように単純で直接的、力強く、後半で出てくるもう一つの新しいフーガ主題はそれに対しなめらかな16分音符から成っています。この二重フーガの技法はバッハの作品の中でも特別のものです。

3楽章 アダージョ 4/4拍子 ハ短調
 6曲中で唯一、3楽章に他の楽章と同じ短調を用いています。ここでは役割が交代し、ヴァイオリンが通奏低音のレアリゼーションを8分音符で伴奏、チェンバロは流れるような分散和音を奏でます。初版ではこの分散和音は16分音符でしたが、後に32分音符の音型に変更されました。

4楽章 ヴィヴァーチェ 3/8拍子 ヘ短調
 リトルネロ形式のフーガ。半音階進行とシンコペーションを用いたジーグと言えます。ラメントの最終楽章に速い舞曲の形式を用いたのは、“Totentanz“「死の舞踏」を意識したのかもしれません。



第6番 ト長調 BWV1019 ( 最終版 )
 第3楽章を中心としてシンメトリーな構造となっています。

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1楽章 アレグロ ( 初版ではヴィヴァーチェ、第2版ではプレスト 、18世紀後半の写譜にはモルト・ アレグロとあるものもある) 4/4拍子 ト長調
 イタリアの協奏曲の形式を用いた、華やかで軽快な楽章。リトルネロ形式で、ソロと合奏の交替効果を狙っています。他のソナタとは違って5楽章形式をとるこの6番のソナタで、バッハは冒頭に速い楽章を置きました。初版、第2版ではこの楽章が最終楽章としてもう一度演奏されます。

2楽章 ラルゴ 3/4拍子 ホ短調
 すべての版に共通して使われている楽章です。コレルリのトリオソナタの形式を模した、バスの8分音符の音型の上に模倣技法での上2声の掛け合いで始まり、4声部での反復進行と主題の模倣、そしてフリギア終始で3楽章へと続きます。

3楽章 アレグロ 4/4拍子 ホ短調
 チェンバロの独奏。2声部で書かれた二部形式。

4楽章 アダージョ 4/4拍子 ロ短調
 2楽章のように、コレルリのトリオソナタ形式を思い起こさせる始まりで、フーガ技法、半音階進行、シンコペーションを使ったトリオとなります。
 
5楽章 アレグロ ( 18世紀の写譜の中にはアレグロ・アッサイとあるものも ) 6/8拍子 ト長調
 ジーグとも言える、ギャロップの音型を用いた爽快な三部形式のフーガ。1楽章の性格を引き継ぎ、チクルスの締めくくりとなります。



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【過去の公演】
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朗読:濱田壮久神父 バロックバイオリン:阿部千春 オルガン:大井浩明  テオルボ:蓮見岳人
H.I.F.v.ビーバー(1644-1704):《ロザリオのソナタ》(全16曲、1674)
〈キリストの誕生〉 - 喜びの神秘 Der freudenreiche Rosenkranz -
  第1番「お告げ」 - 第2番「訪問」 - 第3番「降誕」 - 第4番「キリストの神殿への拝謁」 - 第5番「神殿における12歳のイエス」
〈受難〉 - 哀しみの神秘 Der schmerzhafte Rosenkranz -
 第6番「オリーヴ山での苦しみ」 - 第7番「むち打ち」 - 第8番「いばらの冠」 - 第9番「十字架を背負うイエス」 - 第10番「イエスのはりつけと死」
〈復活〉 - 栄光の神秘 Der glorreiche Rosenkranz -
 第11番「復活」 - 第12番「昇天」 - 第13番「聖霊降臨」 - 第14番「聖母マリアの被昇天」 - 第15番「聖母マリアの戴冠」 - 終曲「守護天使」


阿部千春(バロック・ヴァイオリン)+大井浩明(チェンバロ)
●ビアージョ・マリーニ (1594-1663):ヴァイオリンのための変奏ソナタ第3番 (1629)
●ジョバンニ・バッティスタ・フォンターナ (1589?-1631):ソナタ第6番 (1641)
●カルロ・ファリーナ (c.1600-1639):ソナタ “ラ・デスペラータ”(1628)
●マルコ・ウッチェリーニ (c.1610-1680):ソナタ第3番 “ラ・エブレア・マリナータ”(1645)
●ジョバンニ・アントニオ・パンドルフィ・メアッリ(1624-c.1687):ソナタ “ラ・クレメンテ” 作品3-5 (1660)
●アンジェロ・ベラルディ (c.1636-1694):カンツォーネ第1番作品7 (1670)
●アレッサンドロ・ストラデッラ (1639-1682):シンフォニア第6番(1670s)
●カルロ・アンブロジオ・ロナーティ (c.1645-c.1712):ソナタ第5番(1701)
●アルカンジェロ・コレッリ (1653-1713):ソナタ作品5-10 (1700)

2009年7月25日 W.A.モーツァルト:クラヴィーアとヴァイオリンのためのパリ・ソナタ集 (全6曲、1778)
阿部千春(クラシカル・ヴァイオリン) 大井浩明(フォルテピアノ)
●ト長調K.301 (293a) 全2楽章
●変ホ長調K.302 (293b) 全2楽章
●ハ長調 K.303 (293c) 全2楽章
●ホ短調 K.304 (300c) 全2楽章
●イ長調 K.305 (293d) 全2楽章
●ニ長調 K.306 (300l) 全3楽章

2010年10月13日 W.A.モーツァルト:クラヴィーアとヴァイオリンのためのアウエルンハンマー・ソナタ集 作品2 (全六曲) (1778/81)
阿部千春(クラシカル・ヴァイオリン) 大井浩明(フォルテピアノ)
●ヘ長調K.376(374d) 
●ハ長調K.296
●ヘ長調K.377 (374e)
●変ロ長調K.378 (317d)
●ト長調 K.379 (373a)
●変ホ長調 K.380 (374f)

2012年2月10日 ピリオド楽器によるモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲シリーズ 最終回
阿部千春(クラシカル・ヴァイオリン) 大井浩明(フォルテピアノ)
●ソナタ第40番 変ロ長調 K.454 (1784/1784出版)[全3楽章] Largo/Allegro - Andante - Allegretto
●フランスの歌《羊飼いの娘セリメーヌ》による12の変奏曲 ト長調 K.359(374a) (1781/1786出版)
●ソナタ第41番 変ホ長調 K.481 (1785/1786出版)[全3楽章]
●《泉のほとりで》による6つの変奏曲 ト短調 K.360(374b)(1781/1786出版)
●ソナタ第43番 ヘ長調 K.547 (1788)[全3楽章]
●ソナタ第42番 イ長調 K.526 (1787/1787出版)[全3楽章]
●ソナタ第39番 ハ長調 K.404(385d)(1782)[全2楽章]


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by ooi_piano | 2017-11-13 21:22 | コンサート情報 | Comments(0)