[未訂正]■2007/03/02(金) 人の行く裏に道あり花の山 いづれをゆくも散らぬ間に行け

  #最初に申し上げます。この数ヶ月で鍵盤奏法に関する考え方がかなり変わってしまい、グリーペンケルを完全肯定することにも、シャンドール本をボロカスにこきおろすことにも、疑義が発生しました(後者が酷い本だという基本的態度はブレておりません)。2006年以前に書いた奏法論は、順次改訂をして行く所存です。


c0050810_382427.jpg  「ピアノ 指 緊張 こわばり」等の検索語で、このブログへいらっしゃる方が多いようです(>ネームカードのアクセス解析)。
  初心者が16分音符で指がもつれるのも、上級者が重音技巧に手を焼いたり腱鞘炎やジストニア(書痙・跳ね指)で往生するのも、傍目には似たような現象に見えますし、「もどかしさ」という点では両者に差は無いでしょう。運動神経や才能の多寡は、この際クリティカルではありません。

  なぜ「もどかしい」のか、なぜ神経細胞を活動電位が効率的に伝わっていってくれないのか、と言えば、「意識されない」筋肉のこわばりが邪魔をしているからです。どうやったら、その元凶を白日の元に照らし出すことが出来るか、について、取り急ぎ幾つかの原則的指針を挙げてみます。


c0050810_5201325.jpg◆原因は別の場所にある
  指が回らない(=音が出ない)のは、指のせいではありません。末端の現象にこだわると、大きくコトを見誤ります。
  (i)指の根元の硬直(使用中でない指も含む) (ii)手首の硬直 (iii)肘の硬直 (iv)肩の硬直  ・・・といった、一見無関係な箇所が、指先の動きを妨害している筈です。(ii)は(i)の原因になりえますし、(iii)は(ii)を、(ii)は(iii)を、(iv)は(iii)を誘発します。そして(i)は(iv)へと還流する。
   場所さえ特定出来れば、上達・回復のプロセスは半分終了しているも同然です。氷を溶かすように、ひもをほどくように、瓶のキャップをゆるめるように、筋肉の硬直を取り除いてゆく。 じっと待っていれば、必ず指は勝手に回り出してくれます。我々の脳や体は、そういうふうに出来ています。

◆人頼みでは無理
   「どの筋肉が邪魔しているか」を外から判断するのは、まず不可能です。 ですので、善意の他人(=ピアノ教師や医者など)のトンチンカンな意見は、混乱を招くだけです。こればっかりは、自分自身でじっくりチェックしてゆくしかない。それを覚悟しましょう。
  いままで習い親しんできたピアノ「奏法」の数々を、いったん完全に無視することも、プロセスとしては有用です。この世に完璧無比なメトードなど存在せず、よってあらゆる奏者は爆弾を抱えながら楽器に向かうことを余儀なくされているからです。

c0050810_5213658.gif◆答えは目の前(=体の中)にある 
 こわばりを見つけるには、こわばってない部分あるいはこわばらない場合と比較するのが一番です。
  ピアノの鍵盤はDあるいはA♭を境界として、線対称です。右手のパッセージを、鏡の世界の中で左手で置き換え、両者のあらゆるパラメーターを厳密に比較してみる。
  あるいは、時間軸を逆行(拡大/縮小)させることも有用です。一般に、右手上昇音階は下降音階より弾きにくい、とされますが、なぜそんなことが起こってしまうのか。
  Aという場合にはこわばりが発生し、似たようなA’では余りこわばらず、さらに発展させたA’’だと全くこわばらない等、考えられる要素を変奏させてトラブルシューティングすること。

c0050810_5292570.jpg◆「見苦しいオーヴァーアクション」に学んでみる
  ピアノ教師が脱力のプロセスとして教えた(筈の)モーションが、舞台上でも後生大事に行われているのは滑稽なことです。しかし、学ぶべき点もあります。
  (a)天井を見る・・・・・・首を真上へ向けることは不必要ですが、やってみる価値はあります。いわゆる正しい姿勢、すなわち、譜面台や鍵盤ではなく「まっ正面」を見る姿勢(=頭が上から引っ張られている/肩の上に首が乗っている状態)は、丹田→肩→肘の脱力を容易にします。
  (b)口パクパク・・・・・・打鍵直前に息を吸い込み、打鍵と同時に声を出して歌ってみると、体全体がリラックス出来ることがあります。目は半開きが宜しいようです。
  (c)肘クネクネ・・・・・・自覚しにくい硬直の筆頭が、肘のこわばり(押し付けを含む)です。基本的に肘は肩からぶら下がったままですが、指先の動きに応じて最適のポジションを取る必要はあります。あくまで指と連動しており、また揺れの振れ幅は僅かなものです。
  (d)手首「のの字」・・・・・・ポジション移動時などに、手首の位置を高くして回転させたりするのは、親指や小指の脱力--ひいては肘の脱力--につながることがあります。和音を弾く毎に手首をこれでもかと低くするのも、プロセスとしては悪くありません。勿論、傍目にほぼ不動な状態で脱力は可能です。
  (e)指先ウニウニ・・・・・・鍵盤を押えてしまった後で、ヴァイオリンのヴィブラートのようにウニウニ揉み込んでいるのは、指の第1関節・第2関節の脱力確認をしているのでしょう。指先はkeyに引っ付けたまま、関節を曲げ伸ばししてみるのは、「最適な指のポジション」探しには有用です。


具体例の詳細は、書き出すと本一冊を超えそうな勢いですが、要諦は追って続編にて。
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by ooi_piano | 2007-03-03 11:10 | プロメテウスへの道 | Comments(0)