6/4(日)バルトーク弦楽四重奏曲全6曲(ピアノ独奏版)


by ooi_piano

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  「ハープには何本もの弦が張られ、それぞれ異なる音色をもつが、ひとつの調和ある音楽が全体からひびき出すように、人間の真のハーモニーもまた、すべての音色が愛のたわむれの調べとなって鳴りひびかなければならない。そして、定められた神のひびきに合わない音は、外へはじき出させて、自分自身のひびきのなか、自分とおなじ友音のなかに入る。類は類を、友は友を呼ぶ。」 ヤーコプ・ベーメ『シグナトゥーラ・レールム』第15章50

c0050810_841226.jpg  グラスハーモニカは、大小さまざまなガラス鉢を軸を通して回転させ、その縁を濡れた指でこすると、まるで18世紀のオンド・マルトノとでも喩うべき、絶えざること縷の如き餘音嫋々たる聲音が展舒する、という楽器です。水を張ったブランデーグラスを並べたものはグラスハープと呼ばれ、区別されます。モーツァルトがKV356とKV617を残した前者は、雷雲の帯電証明で名高いベンジャミン・フランクリンが1761年に現在の形へと整えました(余談ながらフランクリンは、フリーメーソンのグランドマスターでもありました)。
  すたれるまでの70年間に4000台の楽器が生産され、エマヌエル・バッハ、ベートーヴェン、ハッセ、メユール、ライハ、トマシェク、ヴァンハル等、当時の代表的作曲家達がおよそ400曲の作品を生み出しました。KV617と全く同じ編成でJ.C.バッハがグラスハーモニカ五重奏曲を書いており、またKV356がJ.C.ミュラーの独習書(1788年、ライプツィヒ)の劈頭譜例と酷似しているのは興味深いことです。
  催眠療法の始祖フランツ・メスメルが、マリー・パラディスら患者を施術する際にグラスハーモニカを用いた、と云う話もあります。マリー・アントワネットならびにその音楽教師グルックが愛奏し(マリー・アントワネットはグラスハーモニカを弾いたらしいが、指導者は不明。グルックが弾いたのは時代的制約もあり「グラスハープ」だった)、パガニーニは「天使のオルガン」と呼び、ゲーテやシャトーブリアンも賞賛を惜しまなかった一方、1804年に発表された医学書では、屈強の男性でもグラスハーモニカを1時間聞くと精神に異常を来たす、などと書かれているそうです。当時の医学的常識は相手にする必要がありませんが、21世紀の現在でもモーツァルトの音楽は万病に効用あり、などと喧伝されており――作曲家本人は夭折、作品を知悉していたはずのベートーヴェンは難聴に苦しんでいたわけで――、この手の話は時代を超える、ということでしょうか。
  19世紀入ってからもグラスハーモニカは、ドニゼッティ《ルチア》「狂乱の場」(初演以降2本のフルートで代用)、サンサーンス《動物の謝肉祭》の幻想的な「水族館Aquarium」 実演ではしばしばチェレスタや鉄琴で代用 鉄琴のことをアルモニカと称していたらしい。白鍵グリッサンドはマレット使用でもグラスハーモニカでは不可能)等で使用されていました。一方、リヒャルト・シュトラウス《影の無い女》では、グラスハーモニカではなくグラスハープを想定していたようですグラスハープではなくグラスハーモニカを希望していたらしい)。
  グラスハーモニカの奏法の原則は、付け根から真っ直ぐに伸ばした各指が、第1関節を接点としてガラス鉢の円弧に接している状態を保持することですこれが本当に必要充分条件なのか、再考を要する)。指の付け根からのモーションでなければ発音さえ至難、という点ではクラヴィコードに似ているものの(ひょっとすると指の付け根はいわば「使わない」方法が上等かもしれない)、手首の動かし方は弦楽器の「ポジション」の考え方が相応しく、どのみちメトードは一般化されていません。まるで指の第1関節に管楽器の歌口があって、そこから光が放射されているような感覚です。完璧な脱力が要求されるのは他の歴史的鍵盤楽器と同様ですが、それにしてもKV617においてモーツァルトはほとんど演奏不可能な程の走句をこの楽器に求めており、それは恐らく、夜の女王と同じ非現実性が彼を捉えたからなのでしょう。

  協奏曲KV453についてのトピックスは特にありません・・・行方不明になっていた自筆譜がクラコフ図書館で発見され、ベーレンライター社も最近やっとこさ校訂報告を出しました。玄妙な緩徐楽章についてオリヴィエ・メシアンが、「このアンダンテだけでモーツァルトの名前は不朽となる」と絶賛しているようですが、これは終楽章主題がモーツァルトの飼っていたムクドリの囀りから取られたことによる身贔屓かもしれません。(ムクドリが先かモーツァルトが先かは不詳の模様。)


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日本モーツァルト協会 Japanische Mozartgesellschaft 特別例会(第483回)
10月24日(火)19:00、10月25日(水)14:00/東京文化会館小ホール
指揮/バロック・ヴァイオリン: 寺神戸亮(指揮/Vn) 
フォルテピアノ/グラスハーモニカ: 大井浩明
レ・ボレアード(バロック・オーケストラ)
S席:6500円/A席:5000円(完売)/学生:2500円
お問い合わせ:アルケミスタ 03-3907-1573 (平日10-18時、土日祝休)、チケットクラシック 03-3376-1919 (10-24時)、電子チケットぴあ 0570-02-9990、東京文化会館チケットサービス 03-5815-5452

c0050810_8411536.jpg~『18世紀風音楽会』~

■《行進曲》ニ長調 KV249
■《セレナード》ニ長調 KV50 「ハフナー・セレナード」より
 第一楽章 アレグロ・マエストーソ - アレグロ・モルト
■グラスハーモニカ独奏のための《アダージョ》ハ長調 KV356
■「ハフナー・セレナード」より
 第二楽章 アンダンテ
 第三楽章 メヌエット
 第四楽章 ロンド

――休憩――

■クラヴィア協奏曲第17番ト長調 KV453
 第一楽章 アレグロ
 第二楽章 アンダンテ
 第三楽章 アレグレット - プレスト (「ムク鳥の主題」と五つの変奏)

■「ハフナー・セレナーデ」より
 第五楽章 メヌエット・ガランテ
 第六楽章 アンダンテ
 第七楽章 メヌエット
■グラスハーモニカ五重奏のための《アダージョとロンド》ハ短調 KV617 (オリジナル楽器による日本初演)
  (グラスハーモニカ:大井浩明、トラヴェルソ:築城玲子、オーボエ:三宮正満、ヴィオラ:寺神戸亮、チェロ:高群輝夫)

■「ハフナー・セレナード」より
 終楽章 アダージョ - アレグロ・アッサイ



平成18年度(第61回)文化庁芸術祭音楽部門新人賞受賞

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●大井浩明フォルテピアノ・リサイタル
■W.A.モーツァルト/クラヴィアのための《デュルニッツ・ソナタ集》(全6曲) KV279-284 (1775)
林加奈/フォルテピアノ独奏のための《好転反応Ⅱ》(2006、委嘱初演)

【京都公演】10月28日(土)19:00~21:00/ウェスティン都ホテル京都(蹴上)・山城の間(東館2F)/ディナー付10,000円
御予約先:075-466-0001 [ヴィアトール学園同窓会事務局]

【東京公演】10月31日(火)19;00~/池袋・自由学園明日館/全自由席3,500円
お問い合わせ:梅岡楽器サービス tel/fax 03-3952-9099 umeoka-gakki@nifty.com、 アルケミスタ・チケット tel. 03-3901-1573 [平日10-18時/土日祝休] 
#Paul McNultyによるワルター・モデル使用(FF~c4、430Hz、膝式ペダル)

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●大井浩明(pf)+太田真紀(sop)+多久潤一朗(fl/笏拍子)
渋谷/公演通りクラシックス
11月5日(日)午後5時半開場、午後6時開演/3000円
■佐藤慶次郎:ピアノのための《カリグラフィー》 (1957/59)/5つの短詩(1953)/フルートとピアノのための《如何是第9番》より(1993、初演)
■三宅榛名:《捨て子エレジー》~ピアノ弾き語り (1973)/《鉄道唱歌ビッグ変奏曲(大人用)》(1980)/《鳥の影》 (1984)
■寺内大輔:《感情表現のためのエテュード》(2005、委嘱新作初演)/《Two Lines》(1997)
■足立智美:《ブラパンダン Brapandan》 (2006、委嘱新作・東京初演)
■ミシェル・ランベール:宮廷歌謡《こないだ僕のクロリスが》(1660s)
■松平頼則:朗詠《二星》(1989)/朗詠《早春》(1990)
■譚盾(タン・ドゥン):《C-A-G-E-》~ピアノのための指捌 (1993)

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by ooi_piano | 2006-10-18 05:58 | コンサート情報 | Comments(4)