8/25(金) ソラブジ《オープス》& 古川聖《ノベレッテ集》完演


by ooi_piano

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感想集 http://togetter.com/li/409233

モートン・フェルドマン:「ずいぶん前、シュトックハウゼンと非常に奇妙な会話をしたことが私にもある。彼が《グルッペン》や《ヒュムネン》といった大作を発表していた頃で、一方私はずっとスカスカのピアノ小品を書いていた。そこで彼は言いがかりを付けてきた。「大作は書かないのかい、モートン?やってみろよ、売れるから」。そこで私は答えた。「カールハインツ、君が挑戦すべきなのは、一本指で弾けるピアノ曲だ」。
 (※・・・・《自然の持続時間》第1曲は、フェルドマンの死後20年近く経ってから、ニューヨーク・ミニアチュリスト・アンサンブルの「100音以下の作品を」という委嘱に応えて作曲された。)

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[POC番外編@松濤] シュトックハウゼン歿後5周年
2012年11月3日(土) 15時開演
 タカギクラヴィア松濤サロン(渋谷区松濤1-26-4)
●K.シュトックハウゼン(1928-2007):ピアノ独奏のための《自然の持続時間 Natürliche Dauern》(2005/06)(全24曲、約140分) 東京初演 〔連作 『音 ~ 一日の24時間 Klang, Die 24 Stunden des Tages』 より 「第3時間目」〕
日本初演(2011年7月/芦屋)公演感想集

【お問い合わせ】 (株)オカムラ&カンパニー 
tel 03-6804-7490(10:00~18:00 土日祝休) fax 03-6804-7489
info@okamura-co.com  http://www.okamura-co.com/

○自然の持続時間 第1 (約10分) (※)
○自然の持続時間 第2 (約10分半)
○自然の持続時間 第3 (約9分半)
○自然の持続時間 第4 (約7分10秒)
○自然の持続時間 第5 (約6分) 05年7月3日京都
○自然の持続時間 第6 (約4分40秒) 05年7月3日京都
○自然の持続時間 第7 (約4分50秒) 05年7月4日京都
○自然の持続時間 第8 (約3分)
○自然の持続時間 第9 (約2分10秒)
○自然の持続時間 第10 (約9分)
○自然の持続時間 第11 (約1分4秒)
○自然の持続時間 第12 (約3分半)

(休憩15分)

○自然の持続時間 第13 (約5分10秒)
○自然の持続時間 第14 (約1分15秒)
○自然の持続時間 第15 (約7分半乃至8分半) 05年8月26日スタヴァンゲル(ノルウェー)
○自然の持続時間 第16 (約3分30秒) 05年11月12日リスボン(ポルトガル)
○自然の持続時間 第17 (約26秒) 05年11月12日リスボン(ポルトガル)
○自然の持続時間 第18 (約3分37秒) 06年1月6日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第19 (約2分5秒) 05年4月28日エディンバラ(スコットランド)
○自然の持続時間 第20 (約3分30秒) 06年1月12日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第21 (約1分46秒) 06年1月17日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第22 (約7分半) 06年1月21日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第23 (約5分半) 06年1月26日キュルテン(ドイツ)
○自然の持続時間 第24 (約17分半) 06年2月14日

(※) スコアに書かれた演奏時間の目安、ならびに作曲年月日・場所
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  シュトックハウゼンの《鍵盤曲 Klavierstück》のシリーズは、まず第1番~第11番(1952-1961)がピアノ独奏のために書かれた。約20年のブランクののち、連作オペラ《光 Licht》の抜粋として、特殊奏法やアクション等をともなったピアノ独奏のための第12番「試験」(《木曜日》より)、第13番「ルツィファーの夢」(《土曜日》より)、第14番(《月曜日》より)、そしてシンセサイザーならびに電子音響のための第15番「シンセ狂」(《火曜日》より)、第16番・第17番「彗星」(《金曜日》より)、第18番(《水曜日》より)、第19番(《日曜日》より)が独立曲とされた。当初21曲セットの構想だった《鍵盤曲》集は、19作目で中断したことになる。

  《光》完成ののち作曲者が没するまで書き継がれた、1日24時間に照応した24組の連作《音 Klang》(最後の2作は未完)の「3時間目」が、ピアノ独奏のための《自然の持続時間 Natürliche Dauern (Natural durations/Durées naturelles)》(全24曲、約140分)である。
  この曲集では、ピアノ(あるいは補助楽器)を鳴らした際の、音域・強度・ペダリング・音高の組み合わせやバランスによってほぼ決定付けられる自然な減衰時間、ならびに諸音型に修辞学的に対応した不規則な間合い、奏者の呼吸の長さ、それに聴衆と楽器との距離などを勘案しつつ、イヴェントが進んでいく。最終的に譜面上での看視/管理を決して手離さなかったのは、この偉大なドイツの作曲家の意地と執念であろう。
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  《自然の持続時間》 第1番の初演は2006年2月23日、NYホーリー・トリニティ教会(~「Sex and the City」シーズン3で、シャーロットが外科医と結婚した場所)、フィリップ・フィッシャーによる。同第2番~第15番の初演は2006年7月12日、キュルテン(ドイツ)の夏期講習会でベンヤミン・コブラーならびにフランク・グートシュミット。同第16番~第24番の初演は、2007年7月17日リスボンで、この9曲ぶんの委嘱元であるグルベンキアン財団50周年演奏会にて、アントニオ・ペレス・アベヤンによって行われた。

  第1曲は、ニューヨーク・ミニアチュリスト・アンサンブルから、「100音以下の作品を」、という委嘱に応えて作曲された。実際の第1曲の音符数は計162音(=2*(3^4))、アタック数は72回(=(2^3)*3=24×3)である。この団体の他の委嘱作曲家・作品として、クリスチャン・ウルフ「マイクロエクササイズ 1-22」(楽器不確定)、マイケル・フィニッシー「Yso」(2つの高音域楽器)、チャールズ・ウォーリネン「11の小曲」(ヴァイオリンとヴィブラフォン)、ヨルゴス・アペルギス「イーリアス」「オデュッセイア」(ヴァイオリンとクラリネット)、アルヴィン・ルシエ「ミニアチュア」(クラリネットとチェロ)、ポーリーン・オリヴェロス「百の出会いの場」(ヴァイオリン、チェロ、打楽器)、シルヴァーノ・ブソッティ「何でもない事」(クラリネット、打楽器、ヴァイオリン)、アンリ・プスール「8つの小さな幾何」(ヴァイオリン、クラリネット、ヴィオラ、チェロ、打楽器)、ケヴィン・ヴォランス「100の音符」(ヴァイオリン、クラリネット、ピアノ)等がある。

  第1曲で高音域から低音域へゆっくりと移動する単音の連なりは、作品全体を統べる24音セリー(E-C-F-d-cis-dis-a-g-gis-H-Fis-Ais- Dis-Cis-D-f-c-e-ais-fis-h-Gis-G-A)の逆行であり、第2曲では逆に低音域から高音域へ原型が上昇、第3曲ではジグザグに提示される。
  第5番~第7番は最後の来日時に京都で書かれた。第9曲、第15曲で発音される言葉は、それぞれ「Ora Terza(第3時間目)」、「Aufstieg(上昇)」である。第22曲では、補助楽器(仏具のリン)の予想減衰時間から逆算して、ピアノ鍵盤上のフレーズの時価が決定される。リンの音程は、G-As-dが連作《光》の最終作『日曜日』の最終場「潮時 Hoch-Zeiten」から、e-aが連作《音》の第1時間目「昇天Himmelfahrt」から取られている。長大な第24曲(終曲)では、ベートーヴェン「第9」・ベルリオーズ「イタリアのハロルド」・ブルックナー「第3(初稿)」「第5」「第8」・ドヴォルジャーク「第9」・サンサーンス「動物の謝肉祭」・ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」・グラナドス「ゴイェスカス」等といった西洋音楽の諸作に倣い、第1曲-第23曲-第2曲-第22曲といった順番で、扇が閉じてゆくように全体が回顧される。
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シュトックハウゼン関連ツイート
■シュトックハウゼン:クラヴィア曲第17番(日本初演)(2011年3月)
感想集 曲目解説
■シュトックハウゼン:クラヴィア曲第1番~第11番+第18番(日本初演)(2012年1月)
感想集 曲目解説 シュトックハウゼン素描(野々村 禎彦)
「1977年東京で――《暦年》世界初演」 (木戸敏郎) 前編 後編
「三人称の雅楽《リヒト》」(木戸敏郎) 前編 後編
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by ooi_piano | 2012-10-30 17:46 | POC2012 | Comments(0)

プリペアド・ピアノ入門

★10月4日 POC#11 ラッヘンマン+ホリガー公演 感想集 http://togetter.com/li/385150

◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆ ジョン・ケージ生誕100周年記念
◆━━━━━━━━━
2012年11月15日(木)19時開演 代々木上原・けやきホール
●J.ケージ(1912-1992):プリペアド・ピアノのための《34分46.776秒》(1954)、易の音楽(1951) (全4巻、通奏東京初演)
2012年6月 ケージ《ソナタとインタリュード》+《易の音楽》 感想集

2013年1月26日(土) 17時開演 代々木上原・けやきホール
●J.ケージ(1912-1992):南のエテュード集(1974-75) (全32曲/全4集、通奏日本初演)(約3時間30分)
2012年7月 ケージ「南のエチュード第1巻&第2巻」+フェルドマン「バニタ・マーカスのために」感想集
└──────────────────────────────◆◇◆─┘


【紹介番組】 ラヂオつくば 84.2MHz 「つくばタイムス・ドッピオ」
10/31(水) 24:00~24:30(=11/1(木) 午前0時~0時半)
  ジョン・ケージ《ある風景の中で In a landscape》(1948)(ピアノ)、同《夢 Dream》(1948)(チェンバロ)の演奏のほか、11/3(土)シュトックハウゼン《自然の持続時間》公演、11/15(木)ケージ《易の音楽》公演についてのインタビューが放送されます。放送電波はつくば市内しか届きませんが、インターネットでのサイマル放送がエリア制限なくお聴きいただけます。(サイマル放送(Windowsパソコン)での聴き方

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  プリペアド・ピアノとは、ピアノの金属弦の間に、ボルトやナット、木、ゴムなどを挿入して、ガムラン・アンサンブルのような玄妙な音色を出す手法です。今年生誕100周年を迎えるアメリカの作曲家ジョン・ケージ(1912~1992)が、「バレエの伴奏を依頼されたが打楽器アンサンブルを雇う予算が無い」「舞台にピアノはある」「本番まで時間は無い」という条件下で、苦肉の策で発明しました。高価なドラムセットやターンテーブルを口真似で代用するボイス・パーカッション(ヒューマン・ビートボックス)と同様の貧者の発想ですが、瓢箪から駒で、一躍ジョン・ケージの名前をアメリカ国内はもとより、ヨーロッパでも広く知らしめました。もっとも、モーツァルト・ベートーヴェン時代の華奢なフォルテピアノにさえ、ダンパーに紙などを挟んで音色を変える機構が装備されていましたので、古式ゆかしい流儀とも言えます。
  適切な手順を踏めば、楽器を傷付けることはありません。プリペアド・ピアノ作品の音符自体は、サティ程度の簡単なものですので、プリパレーション作業さえやってしまえば、初心者や子供でも気軽に楽しむ事が出来ます。かつては、R.バンガー著『ウェル・プリペアド・ピアノ』という入門書の邦訳が全音から出版されていましたが、残念ながら現在廃版で、古書でも手に入りにくいようです。
  私のプリペアド・ピアノ初挑戦は、1989年ジョン・ケージが京都賞で来日した際、京大西部講堂でアメリカ実験音楽ばかり3日間演奏しまくった時です。野村誠氏と二人で藤島啓子女史のお宅へお邪魔し、具体的なやり方を色々とアドヴァイス頂きました。「Lace rubberはブラジャーの紐が使えるのよ」。《Two Pastorals》(1952)で使う珍妙なUボルトも見せてもらいました(確か弦に挟んで撥でゴーンと叩く)。そんな特殊な素材をわざわざ発注しないと弾けないなんて、と思いましたが、こないだ東急ハンズで普通に見かけました。当時、野村誠氏は重度のプリパレーションを要する《孤島の娘達 Daughters of the Lonesome Isle》(1945)を演奏し、かつそのプリパレーションに基づく自作も発表してましたので、決して専門家のみに許された秘儀ではなく、素人でも十分アプローチ可能な技法と言えます。
  先だって《ソナタとインタリュード》(1948)を演奏した際、中川賢一・及川夕美の両氏にも裏技を幾つか御教示頂きました。それらも踏まえつつ、以下、大まかなガイドラインを説明します。(言うまでもありませんが、文責は私にあります。)
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  プリパレーションの一例として、「中央C音の3つの弦(左から右へI-II-III)とすると、ダンパーから14.5インチの地点のI-II弦間にボルトを、6.5インチの地点のI-II-III弦間にゴムを挟め」、と楽譜に指定してある場合。
  まず、挟み方の大原則は、「ダンパーペダルを開放した(=右ペダルを踏み込んだ)状態で行う」、「マイナスドライバーやヘラ等で弦間を広げて挿入する」、の2点です。常時ダンパーペダルを開放するためには、小さな木片をペダルに差し挟んでおくと便利です。木片サイズは楽器によってまちまちなので、調律師の方に相談してみましょう。ペダルの前側だけではなく、後ろ側に挟む手もあります。特定の鍵盤のダンパーを下げておくには、鍵盤の根元にクサビ型に切った消しゴムを挟み込む、という手法もあります(《南のエチュード集》)。弦間を広げるのはマイナスドライバー(ねじ回し)で充分安全ですが、たとえば製菓用のプラスチックのヘラや、調律用の鹿革付き木製ヘラでも代用出来ます。ボルトなどが落下した際のために、長めのピンセットも常備しましょう。弦に直接触れてしまうのが気になる場合は、ヴァイオリニストが練習後に行うように、弦を布で拭くと良いでしょう(・・と書いたったわ)。
  プリパレーション位置は、全てインチ単位(1インチ = 2.54 センチメートル)で指定されています。いちいち換算するのも面倒ですし、視覚的にも分かりにくいので、インチ定規が便利です。日本国内では販売が禁止されている、というのはデマで、amazonで普通に入手出来ますし、イケアに行けば無料で配布されているそうです。「inch measure」で画像検索すれば、プリントアウト用のインチ定規がネット上に存在します(縮尺注意)。
  ただし、このインチ指定の取り扱いは、実は中々厄介です。ケージの指定はスタインウェイのベビコン(フルコンでは無い)を前提としたものですが、同じ型の楽器でもそれぞれに個性があり、また、金属バーや交差弦の位置が各々違うため、指定の位置にプリペアしにくいケースもまま見られます。位置のわずかなズレ、素材のちょっとした違いで、音色はまったく変わります。長時間弾いていてもボルトがズレずに安定する位置、という現実的な要請もあります。つづまるところ、その場その場で臨機応変に対応するしかありません。
  ケージ自身、第一作の《バッカナール》(1940)では最高音を除いて「挟む位置は経験による」と書き、《アモレス》(1943)序文では「ネジのサイズは経験による」と書き、1951年の《プリペアド・ピアノ協奏曲》までの諸作では位置を仔細に指定していましたが、1954年に書かれた《34分46.776秒》と《31分57.9864秒》では、演奏しながら次々とプリパレーション位置の変更や素材の加減を要求するに至ります。この2大作ののち、ケージはもっぱら図形楽譜や文章での指示に移行し(不確定性の時代)、記譜作品に戻ってくるのは20年後(1970年代中盤)の事でした。なお、《アモレス》序文は、1頁余りの短さながら、ケージ自身が具体的なプリパレーションや音響を指定した、という点で、フレスコバルディ:トッカータ集序文に匹敵する重要参考文献です。
  余談ながら、もしケージが現代の醜悪な交差弦のモダン・ピアノではなく、19世紀的な平行弦の楽器を所蔵していたなら、中央C以下の弦交差部も制限無く自在にプリペア出来、かつ音域毎に際立ちの良い音色である事を前提に、全く違った作風のプリペアド・ピアノ作品を書いたと思います。

  「ちょうどいい感じのプリパレーション」の理想像は侃々諤々です。ノイズがメインではなく、「歌うような、ひとつのまとまった音(single note)」とケージは言っていたそうです。一説に謳われる、倍音偏重ではなく必ず基音が聴こえるべき、という論拠は見つかりませんでした。後年になればなるほど、ケージ自身はどんなプリパレーションも許容していました(例えばマーガレット・レン=タン)。プリパレーション(=音色の決定/オーケストレーション)は演奏解釈そのものですので、奏者自身で作業を行うのは当然の前提です。弦に異物を挿入している(=ミュートしている)ため、タッチとペダリングにはより繊細さが求められます。最終的な音色は、プリパレーション6割・タッチ4割くらいの比重で決まると思います。自分自身でプリパレーションすれば、譜面のペダル指定がいかに重要かも思い知る事でしょう。私自身は、1800年前後のイギリス式のオリジナルのフォルテピアノ(=タッチが不如意にばらばら)をイメージしながら弾きました。ケージの言葉、「ピアノあるいは『プリペアド・ピアノ』ではなく、何か別のものをイメージしながら弾け」(《アモレス》序文)。
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  ボルトについて。細長い円柱形がボルト(bolt)で、先が細く捩じ切られているのがネジ(screw)です。ピアノの弦の隙間はおおよそ3mmですので、直径は3mm~5mm、長過ぎると響板へ触れますので長さは2cm~4cmのものが標準となります。高音部では直径3mmで短めのもの、中央~低音部では直径4mm~5mmで長目のもの、同じ弦でも手前より奥のほうが太めのものが良いでしょう。直径が大きすぎるとダンピング(消音)に支障が発生します。金具屋では、それぞれのサイズのものが12本入り100円程度で分売されていますので、まずは数種類買ってみて、色々試してみましょう。予算が3000円あれば、買い物は一度で済みます。「なんべん金物屋に行ったか分からないわ~」、などという専門家のコメントに牽制されてはいけません。ケージが「中くらい(medium)のボルト」「長い(long)ボルト」と指定している場合、直径の大小よりも長さ(=重さ)による音色の違いを意図しているようです(残響が長い)。
  ゴム素材のお勧めは、ジャム瓶のゴムパッキンです(写真は、短くカットしたものを折り曲げて挿入しているところ)。消しゴム、版画用ゴムも使えます。東急ハンズ等の「ゴム担当」の方に訊いてみると、色々可能性を教えて下さいます。「プラスチック」は、下敷きを細長くカットし、小さく折り曲げて揉みほぐし、弦と弦の間に編み込むように挿入。あるいはタッパーのフタ。「木」「竹」は箸が便利です。または木製洗濯バサミ。1セント硬貨は1円玉で代用。Weatherstrip(窓の隙間ふさぎ)は、ピアノ用の赤いフェルトで代用。当時から誤解を招いたのか、ケージ自身「fibrous material(繊維素材)である」と何度か注記してます。調律師さんにお願いするか、手芸屋へ。弦間よりも太目のものを。ミスタッチ防止用の「安全ミュート」としても使えます。圧倒的に便利なのは練り消しゴムで、最低音域の一本弦や、素早い着脱に打って付けです。
  ケージ自身は、ボルト・ネジのサイズ等々は譜面に一度も具体的に記すことはありませんでした。繰り返しになりますが、素材選択、プリパレーション位置調整は、演奏解釈の一部に他なりません。「ピアノのプリパレーション素材は、海岸を歩きながら貝殻を拾うように選り集められた」(ジョン・ケージ)。昔のLP写真も、イコノグラフィー程度に参照出来るでしょう。
  なお、ケージ自身が《ソナタとインタリュード》を再演する際、主催者側には、「プリパレーション作業に少なくとも三時間かかり、演奏前の練習に2~3時間が必要」、と伝えていたようです。

   
  ※日本国内の演奏会場における内部奏法に関してのツイート集はこちら
  ※プリパレーション材料についての追加ツイート集はこちら
  ※コンサートホール所蔵の楽器管理は過敏な一方、教育現場の楽器管理は悲惨なほど放置されている件(仲道郁代氏サイト、2012年10月23日記事

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by ooi_piano | 2012-10-25 00:07 | POC2012 | Comments(0)
まとめ http://togetter.com/li/395649

┌─◆◇◆──────────────────────────────┐
2012年10月24日(水)20時開演 カフェ・モンタージュ [京都市中京区夷川通柳馬場北東角]
C.P.E.バッハ(1714-1788):ヴュルテンベルク・ソナタ集 Die Württembergische Sonaten Wq.49 (1742/44、全6曲)[クラヴィコード独奏]
 第1ソナタ イ短調 (Berlin, 1742) Moderato - Andante - Allegro assai
 第2ソナタ 変イ長調 (Berlin 1742) Un poco allegro - Adagio - Allegro
 第3ソナタ ホ短調 (Teplitz, 1743) Allegro - Adagio - Vivace
 第4ソナタ 変ロ長調 (Berlin, 1742) Un poco Allegro - Andante - Allegro
 第5ソナタ 変ホ長調 (Teplitz, 1743) Allegro - Adagio - Allegro assai
 第6ソナタ ロ短調 (Berlin, 1744) Moderato - Adagio non molto - Allegro
└──────────────────────────────◆◇◆─┘

ヴュルテンベルクそしてTeckh公、
モンベリアル伯爵、ハイデンハイム領主、金羊毛勲章騎士
シュベーベン地方の誉れ高き元帥であらせられる
親愛なるカール・オイゲン殿下にささぐ
チェンバロのための6つのソナタ
プロイセン公国大王陛下の宮廷音楽家・カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
第2巻
ニュルンベルグの銅版印刷家、リュートの名手、ヨハン・ウルリッヒ・ハフナー(1711-1767)による
全42ページ
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・・・

親愛なる殿下

親愛なる殿下の名の下に、わたくしのソナタ集が公にされるにあたり、わたくしには二つの多大なる恩恵がもたらされます。ひとつは、日ごろより多大な御愛顧と庇護をたまわる殿下と、愉しみを分かる喜びであり、これらを殿下の名の下に出版するにあたり、殿下への恭順を、世につまびらかにできる幸せでございます。ベルリンで殿下の音楽の教授にあたる光栄を賜りました折、頂戴しました重ね重ねの恩恵につきまして、わたくしはただ感謝の念に堪えません。これら二つの恩恵によりまして、わたくしの最も深い恭順の情をしめすべく作品の献呈にいたり、わたくしの音楽が、殿下の寛容なるおこころに、せめてもお喜びいただけることをお祈りする次第でございます。永遠なる殿下へ忠誠をこうしてつまびらかにできる機会に恵まれましたことを感謝しております。
ベルリン     カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
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(訳・杉山洋一)

エマヌエル・バッハ「ヴュルテンベルク・ソナタ集」大井浩明さん全曲演奏
「かつてバッハ氏が友人の前で、出版されたソナタ集の第6曲を演奏してくれた。その友人が告白してくれたのだが、曲が終わるまで、ほとんど何がなんだかわからなかったという。確かに自分には自分なりの聴き方があって、どのように聴けば、いつまでも情熱をもって注意深く聴けるのかも心得ていたつもりだった。しかし、この友人は単に音楽が好きなだけだったようだ。音楽という物語を、そこで語られている言葉抜きで理解しようとしたのである。だから、この曲はよく人がしてしまうように、むやみやたらにけばけばしく、あるいは甘ったるく演奏してはいけないのだ。どの曲にも、それぞれの演奏のしかたがあるはずだ。」
(マールブルク『批評的音楽家』第27篇、1749年 久保田慶一訳)

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by ooi_piano | 2012-10-23 01:27 | Beethovenfries2013 | Comments(0)
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┌─◆◇◆──────────────────────────────┐
2012年10月20日(土)20時開演 カフェ・モンタージュ [京都市中京区夷川通柳馬場北東角]
●J.ケージ(1912-1992):
  プリペアド・ピアノのための《31分57.9864秒》(1954)(日本初演)
  永遠のタンゴ(1984)
  トイ・ピアノのための組曲(全5曲、1948)
  北天のエチュード(1978)(全4部、日本初演)
[予約/お問い合わせ:tel 075-744-1070 montagekyoto@gmail.com]
└──────────────────────────────◆◇◆─┘

感想集: http://togetter.com/li/393332
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by ooi_piano | 2012-10-21 23:11 | POC2012 | Comments(0)