c0050810_13422710.jpg

c0050810_12121009.jpg

大井浩明(ピアノ/レクチャー) 
2017年8月25日(金)午後1時開演(午後7時終了予定)
東京芸術大学音楽学部第2ホール  入場無料(要・事前申込、8/15締切
(JR上野駅/鶯谷駅 徒歩10分、千代田線根津駅 徒歩10分)



c0050810_12130899.png
※外部からの参加希望者は、8月15日までに事前メール申し込み(https://goo.gl/xLpPm0)の上、午後0時50分または午後1時20分に、音楽学部(上野キャンパス)正門、第二守衛所の前にお集まり下さい。それ以外の時間での入場は出来ません(退出自由)。
※※ トイレ・自販機はホール至近にあります





■古川聖(1959- ):《七つのノベレッテ集》(2017、全曲による世界初演)  25分
  I.物語の初めに Der Anfang der Geschichte
  II.上へ下へ Nach oben, nach unten
  III.コラールと小ダンス Choral und kleiner Tanz
  IV.音階 Tonleiter
  V.小さな迷宮 Kleines Labyrinth
  VI.マルカート・エ・コン・フォルツァ Marcato e con forza
  VII.物語のおわり Das Ende der Geschichte

■カイホスルー・ソラブジ(1892-1988):《オプス・クラウィケンバリスティクム(鍵盤楽器の始源に捧げて) Opus Clavicembalisticum》(1930)〔全12楽章〕 ~ 第一部
 I. 入祭唱 3分
 II. コラール前奏曲 13分
 III. 第一フーガ(四声による) 12分
 IV. ファンタジア 4分
 V.第二フーガ(二重フーガ) 16分

 (休憩10分)

■ソラブジ:《オプス・クラウィケンバリスティクム》 ~ 第二部
 VI.第一間奏曲(主題と49の変奏) 45分
 VII.第一カデンツァ 5分
 VIII. 第三フーガ(三重フーガ) 35分
   [第一主題 10分 - 第二主題 11分 - 第三主題 12分]

 (休憩10分)

■ソラブジ:《オプス・クラウィケンバリスティクム》 ~ 第三部
 IX. 第二間奏曲 56分
   〔トッカータ (5分) - アダージョ (16分) - 81の変奏によるパッサカリア (35分)〕
 X. 第二カデンツァ 3分
 XI. 第四フーガ(四重フーガ) 32分
   [第一主題 8分 - 第二主題 7分 - 第三主題 8分 - 第四主題 10分]
 XII. 終結部(ストレッタ) 8分



古川聖:《7つのノヴェレッテ集 》(2017、委嘱新作初演)

c0050810_13440396.jpg
  私が大井氏から作品の依頼を受けた時、なにか新しい、変わった試みをいくつも並べるような作品構成として、ノヴェレッテという言葉がすぐに脳裏にうかんだ。私がノヴェレッテとして着想したのはNOVEL という言葉の本来の意味である、新しい種類の、新手の、奇抜な、今までになかったような現在を志向する音楽と、シューマンの「8つのノヴェレッテン」の幻想的ではあるが古臭く、熱っぽく、少し汗ばんだ、憧憬することはできるが、共有はできない音楽、この両者が共存する、現代においてのみ可能な特有の聴取の形式である。現代ほど過去から現在までの音楽が同時に広大なパースペクティブの中に聴取、消費された時代があっただろうか。録音技術とその商業化を背景にポリスタイリズム(シュニトケ)のようなものがあらわれてきた50年前とでさえ、それに通信技術(インターネット)までが加わった現在の音楽聴取状況は大きく変化している。(その意味でこの「7つのノヴェレッテン」はポリスタイリズムでもないし音楽の引用をおこなっているわけでもない。)

  「7つのノヴェレッテン」は全部で7つの小品からなる。これらの作品は広い意味ではアルゴリズムコンポジション(※)、つまり、音符の形で楽譜が直接書かれるのではなく、音、音楽構造がどのように生成されるのかをまずコンピュータープログラムで記述し、そのプロセスの後に音符が生成され楽譜として定着されるような種類の音楽である。今回は、私が以前行った複雑系の構造の自己組織化プロセスや現在も行っている脳波からの生理データの音構造へのマッピングなどの手法は使っていない。
  このノヴェレッテンでは一曲ごとに、7~10個音からなる構造的モティーフ(第2、4、7曲)または4小節から12小節程度のシューマンの「8つのノヴェレッテン」から抽出したモティーフ(第1、3、5、6曲)を音楽生成の出発点として準備し、それらを複製し、拡大縮小し、分割し、重ね、移調し、縦に横にひっくり返し組み合わせるという比較的伝統的な音楽の変形手法を、伝統的作曲では行われなかったほど、多重にくりかえし、作品として構築した。つまりどの曲もモティーフから紡ぎ出された一本の糸で繋がっているといえる。シューマンからのモティーフには当然、調性的なマテリアル、調性的なコンテクストもふくまれるが、それらはそれらの固有の性質が失われるギリギリまで分解され再構築された。
  そしてこれらの変形、マニュピュレーション、手法、方法の根底にあるのが、私の興味の中心にある音楽認知プロセスからの音楽生成である。音の認知、グルーピング、階層化と抽象化、記憶と予測、評価と、それらのプロセスから脳内に記憶の糸をたぐり、連想として染み出していく、音楽の内実である情動への共鳴などである。シューマンからのモティーフによって聴取者の潜在意識と意識の間に聴取者のシューマンの「8つのノヴェレッテン」の記憶、シューマンに代表される、ロマン派調性音楽の記憶、体験が浮遊することだろう。

c0050810_13453133.jpg
  Novellette1には “der Anfang der Geschichte/物語の初めに”の副題をつけた。シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第一曲からモティーフが読み込まれ(MIDI-fileからコンピューターが読み込む)、音階のモティーフと組み合わされる。
  Novellette2には “Oben und Unten”「上と下」という副題をつけたが、ここではモティーフが連ねられ形成された、大きく上下する音型が潰され、のばされ、こねくり回される。
  Novellette3は “Choral und kleiner Tanz /コラールと小ダンス”という副題をもつ。シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第一曲の中間部からモティーフが読み込まれ、時間軸の変化を捨象し、冒頭にコラールとして提示する。これをもとに変形が加えられ、分解された調性的断片を組み合わせることで、抑揚のリズムのようなものが生じ、それを小ダンスと名付けた。
  Novellette4は “Tonleiter”「音階」という副題をもつ。音階の順次進行からなるモティーフが組み合わされ、様々な展開をとげる。
  Novellette5 新Novellette5(Kleines Labyrinth /小さな迷宮 ) シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第7曲の冒頭からモティーフが読み込まれ、輪郭が切り取られ、冒頭に単旋律のテーマとして提示される。これがフーガ風に重ねられ、折りたたまれ、変形が加えられ展開される
  Novellette6は”Marcato e con forza/マルカート エ コンフォルツァ”の副題をもつ。これはシューマンの「8つのノヴェレッテン」の第1曲の曲想表示から借りてきたものである。シューマンの「8つのノヴェレッテン」の第1曲の冒頭からモティーフが読み込まれる。シューマンの和声に時々あらわれる水平的な重なりの過度の敷衍、拡張や、メロディーと和声の大幅なずらしなどの方法を用いて作曲した。
  Novellette7の副題は “das Ende der Geschichte / 物語のおわり。今までに何度も音楽におけるエッシャー的なものを試みてきたが、今回は二つのモティーフからなるテーマのようなものを協和音程的な制約の中でどのようにうまく組み合わせるかという技法的なソリューションを探した。主要部分ではテーマは調を移され多重に重ねられるが、それらは完全な相似形になっている。

  (※)これらのマニュピュレーションを可能とする作曲ツールが自らのチームが開発したGESTALT-EDITOR というグラフィックプログラミング環境である。現在のVersion は古川聖、藤井晴行、濵野峻行、小林祐貴により開発されている。(古川聖)


古川聖 Kiyoshi FURUKAWA
c0050810_13462985.jpg
  1959年東京生まれ。中学・高校時代に入野義郎氏に師事。高校卒業後渡独、ベルリン、ハンブルクの音楽アカデミーでイサン・ユン、ジェルジ・リゲティのもとで作曲を学ぶ。1991年に米国のスタンフォード大学で客員作曲家。独・カールスルーエのZKM(アート・アンド・メディア・センター)でアーティスト・イン・レジデンス。作品は、新しいメディアと音楽の接点において成立するものが多く、1997年のZKMの新館のオープニングでは委嘱を受け、マルチメディアオペラ『まだ生まれぬ神々へ』を制作・作曲。近年は理化学研究所内で脳波を使った視聴覚表現に関するプロジェクトを行った。社会の中で表現行為が起こる場、新しいアートの形を探して2002年より、新しいメディアを使ったワークショップを世界各国で行っている。東京芸術大学先端芸術表現科教授。CDに「数による音楽」(2007, FONTEC)「物質による音楽」(2009, FONTEC) 等。


c0050810_13431014.jpg

[PR]
by ooi_piano | 2017-07-19 12:04 | POC2016 | Comments(0)