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Xöömei Öpei Ïrï

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【第二日: 9月20日(日)芦屋公演】

等々力政彦・編/トゥバ伝承曲:《豊かな森 Bai-la Taigam》~《残忍な領主 Ambïn Noyan》~《子守歌 Öpei Ïrï》

Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_03861.jpg等々力政彦(とどりき まさひこ) イギル+喉歌(フーメイ)
  トゥバ民族音楽演奏家。20年近くにわたり南シベリアで喉歌(フーメイ)などのトゥバ民族の伝統音楽を現地調査しながら、演奏活動をおこなっている。あがた森魚、朝崎郁恵、中孝介、安東ウメ子、EPO、太田惠資、OKI、押尾コータロー、古謝美佐子、鼓童、大工哲弘、常味裕司、一十三十一、Huun-Huur-Tu、Sun Ra Archestraなど内外のミュージシャンと共演、およびアルバム参加。嵯峨治彦(モンゴル民族音楽)とのユニット「タルバガン」、ササマユウコ・真砂秀朗とのユニット「生きものの音」で活動中。http://tarbagan.net/riki/



Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_051542.jpg<トゥバについて>
  シベリアの森とモンゴルの草原が出会う場所。トゥバ共和国(The Republic of Tyva)はロシア連邦に属しモンゴル国の北西隣り、いわゆる南シベリア、もしくはアジア中央部と呼ばれる地域に位置する。モンゴルとは異なる民族グループであるが関係は深く、ちょうど韓国と日本の関係によく似ている。面積はほぼ日本の半分の大きさで、人口約30万人。首都はクズル市。先住のトゥバ人が住民の70%を占め、使用言語はトルコ語と同じくテュルク語系のトゥバ語であり、公用語としてロシア語を用いる。基本的に黄色人種だが、日本人と比較して一般に肌が白く、中には金髪で緑や青い目を持つ人もかなりの頻度で見られる。人口の70〜80%以上は町に定住しているが、様々な形態の遊牧・狩猟生活も広く行われている。
  宗教はラマ教だが、古くからあるシャマニズムの方がよりいっそう生活に定着しており、その併存形態は日本における仏教と神道の共存と大変共通している。

Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_055512.jpg<トゥバの楽器>
・ドシプルール(doshpuluur):元来2弦の楽器であったが、現在は中国の弦子(シャンズ;琉球の三線などの源流の楽器)由来の撥弦楽器チャンズ(chanzy)の影響で3弦のものも見られる。指で弾くが、現在はギターのピックを用いることも多くなっている。
・イギル(igil):2弦の弓奏楽器。
・ホムス(khomus):口琴のこと。トゥバでは鉄、木、竹でつくられたものが知られている。
・ブザーンチゥ(byzaanchy):4弦の擦弦楽器。中国の四胡、モンゴルのホール(khuur)、あるいはホーチル(khuuchir)と同型の楽器で、弦の間に弓を挟んで演奏する。

Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_063015.jpg<アルタイ山脈周辺型の「喉歌」について>
  喉歌(のどうた)の大きな特徴として、1人の奏者が笛のような高い声音でメロディーをつけて歌うというものである。ここでは便宜上、歌詞を伴わない楽器としての声として喉歌を定義する。喉歌を持つほとんどの民族が、浪曲のようなだみ声(喉詰め発声)で英雄叙事詩を歌うときの装飾として用いることから、叙事詩と喉歌の強い関連性が示唆される。このことからアルタイ山脈の西側のテュルク語系の民族(トルクメニスタンを中心に、カラカルパクなど)で広く認められる、男性によるだみ声の英雄叙事詩語りとの関連性は注目してよい。このような喉歌はアルタイ山脈周辺の民族に見られる芸能で、トゥバではフーメイ(khöömei)と呼ばれている。他にもモンゴル国西部のフーミー(khöömii)や、アルタイ共和国のクーメイ(köömei)などはこの語が共通の祖先から広まったことをよく示している。またハカス共和国のハイ(khai)、アルタイ共和国のカイ(kai)、モンゴル国西部のハイラフ(khailakh)などのように、叙事詩を表す名称がそのまま喉歌の名称として使われる場合があり、このことも英雄叙事詩と喉歌の関連性の強さを示している。もともと男性の芸能であったが、この10年以内にトゥバでもモンゴルでも女性の喉歌歌手があらわれだしたのは、大きな伝統の変化として注目される。

Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_065167.jpg<トゥバの喉歌>
  トゥバの喉歌の分類は人によって異なるが、大きく3〜5種類に分けている。
  フーメイ(khöömei):トゥバの喉歌の基本になる発声法。高い音のでる喉歌。喉詰め発声をしたまま舌をどこにも付けずに口唇を丸くし、口腔内の大きさを変えることで音程を変える。
スグット(sygyt):口笛を語源とする、高い音のでる喉歌。喉詰め発声をしたまま舌を水平に歯ぐきの上のあたりに付け、左右非対称の平唇にして発声。ひじょうに鋭い笛のような音がでる。
カルグラー(kargyraa):低音の喉歌。喉詰め発声とは異なり、仮声帯の振動がこの声の音質を決定していると考えられる。「ガラガラ」した声音。5種類の喉歌とは、これにポルバンナドゥルborbangnadyr(喉歌をトリルのように揺らすスタイル)、エゼンギレールezenggileer(喉歌をギャロップのように揺らす スタイル)を加えている。

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【第三日: 9月21日(日)芦屋公演】

佐野敏幸:チェンバロ独奏のための<GRS(ガレサ)>(2009、委嘱新作初演)
  インド音楽では音階をとても大切にします。インド人は、音階を何か哲学的なものと結びつけて捉えているようです。音階に神様の名前をつけたりするのも、そのような事の表れなのだろうと思われます。そして、一回の演奏では、一つの音階を守り抜くのが通常です。
  しかし、世界観が異なり、さらに西洋系の音楽にもふれてきた私のような外人がインド音楽をやる上で、インド音楽的常識を徹底的に守らなければならないのか、といった葛藤も若干あります。
  そんな折、大井氏よりの作曲依頼がありました。今回、非インド系奏者である大井氏が西洋楽器を用いて演奏するための曲であるということを意識し、あえて複数の音階を組み合わせて作曲を行いました。
  「ドレミファソラシド」はインド音楽の音名では、「Sa Re Ga Ma Pa Da Ni Sa」です。旋律を忘れないようにメモする時には、「SRGMPDNS」と省略して表記することが多いです。
  タイトルの「GRS(ガ・レ・サ)」は、出だしの旋律から採りました。


■プロフィール

1972年、愛知県豊橋市生まれ。
13歳頃より独学でギター・ピアノを始める。
1992年、ギタリストの北口功氏に師事。同年、レオ・ブローウェル国際ギターコンクール入選。
作曲家の堀江はるよ氏よりソルフェージュ・和声学を学ぶ。
1995年、西洋音楽と自身のミスマッチを感じ始めていた頃にインド音楽に出会う。
1996年、シタール奏者の田中峰彦氏の紹介によりアミット・ロイに師事を始める。
より深くインド音楽を学ぶため、2000年よりアミット・ロイのそばに移り住み研鑚を積んでいる。
2005年、タブラの巨匠アニンド・チャッテルジー氏との共演によりCD「Memory」を製作。

■身辺雑記

-体重29Kg減に成功!-
全盛期89Kgまで上り詰めた体重を60Kgまで落とすことに“一瞬”成功しました。周りからは「病気じゃない?」「死ぬんじゃない?」と心配される始末。
現在は70Kgまで戻り、そのような心配をされることもなくなりました。

-ミツバチ逃走!-
この3年ほどミツバチを飼育してます。なかなかカワイイ娘たちです。見ていると癒されます(刺すけど)。そんな彼女たち数千匹が、先日、巣箱から滝のような勢いであっという間に逃走してしまいました。
 そんな訳で、只今ショックに打ちひしがれています。


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Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_0382968.jpg川上統:チェンバロ独奏のための《花潜(ハナムグリ)》(2009、委嘱新作初演)

  「甲虫に毛がモサモサ生えている!!」この曲の題名「花潜(ハナムグリ)」という昆虫を幼い頃に初めて知った時は、こんな具合に衝撃的でした。しかも甲虫なのに花が大好き、花粉まみれ。随分と拍子抜けのする風変わりな甲虫です。
  先日、そんな花潜を東京赤坂で見かけました。彼はアスファルトの上でひっくり返ってジタバタしていて、何だか可哀想だったので、拾い上げて手の甲に乗せました。毛羽立った甲と左右対称の控えめな白点模様がお洒落だなあ、とぼんやり眺めて写真を撮ろうと思った刹那・・・事もあろうに彼はあまりよろしくない置き土産を催して、飛び去っていったのです。ああ、写真はお嫌いですのね・・・。
  そんな花潜のように、毛の生えた甲のような音とは一体どのようなものであろうか・・・と考えた時、ばっちり感覚と一致したのが、チェンバロという楽器だったのです。パリッとした音ながら、どうも聞いた後にモサモサとした毛の感触を感じるのです。そして、前述のエピソードからもお分かりかと思うのですが、非常に呑気な様相を呈した昆虫なので、呑気な曲にするつもりでした。が・・・花の周囲で相当ブンブン飛び回るらしい事も知り、呑気ではない暴走飛行な部分も多分に作りました。大井さんごめんなさい。
  小さい昆虫なので、とても短い曲になりました。今回の演奏会に花、ならぬ花に潜る虫を添える事が出来れば幸いです。


Xöömei Öpei Ïrï_c0050810_053569.jpg■プロフィール
 1979年生まれ。東京都出身、逗子在住。神奈川県立横須賀高等学校卒業。東京音楽大学音楽学部音楽学科卒業、東京音楽大学大学院修了。 
 2003年、第20回現音新人作曲賞受賞。
 2009年、第2回ハルモニア杯音楽コンクールにおいて、所属している本歌取りプロジェクトの演目で作品「ガトリング・ヨハン」が演奏され審査員特別賞受賞。同年、武生国際音楽祭・招待作曲家に選ばれ、作品「ボルボックス」が演奏される。
  また逗子市文化プラザの主催企画「こどもフェスティバル」において総オリジナル曲による「どうぶつアンサンブルコンサート」「えほんアンサンブルコンサート」「ことばアンサンブルコンサート」を行う。
  在学中から主に室内楽曲の作曲を中心に作曲・演奏・即興活動を行い、現在に至る。生物に大きな関心があり、生物の名の曲が多い。
現在、東京音楽大学作曲指揮研究員及び東京音楽大学付属高等学校非常勤講師。これまでに作曲を池辺晋一郎、細川俊夫、久田典子、山本裕之の各氏に師事。

■身辺雑記 
  2009年9月8日現在、部屋が尋常でない程に散らかっています。かつてない程の散らかり具合で、「片付けられない人2009」に相成りかねない勢いです。そんな部屋に熱帯魚とエビとリクガメを飼っています。彼等は何とか元気です。私は非常にずぼらなので、生き物を飼う事に向いていない性格なのですが、身近に彼等がいる事によって、生き物を題材にした曲を書く事に実感が湧くような気がしています。普段の雑な世話ながら、懸命に活きている我が部屋住人の皆様に感謝しております。早く片付けをして、もっとしっかりお世話をしなければ・・・と自戒。
  そして、飼っているわけではないのですが、部屋でよく見かけるのがハエトリグモ。これがまた非常にかわいいのです。実際ハエを捕る現場を見たことはありませんが、しばしばパソコンのディスプレイ上を彷徨うマウスポインタに対して威嚇行為を働いておる様子を目撃した事があり、その様は中々愉しいものです。部屋が猛烈に散らかっているのでハエトリグモにとっては、迷宮のような部屋に違いありません。でも、気づけば一匹はいつも同じ場所に居て、ちょっと安心します。
  このハエトリグモ、漢字で蠅虎と書くらしく、獰猛なイメージです。虫は漢字に記した時のイメージがガラリと変わる事があり、この虫もそういったイメージとして曲にしたいと思いつつ、この身辺雑記を書いております。もしいつかこの曲が出来ましたら、皆様の家にも居るかもしれないハエトリグモを暖かい眼差しで見てあげて下さい。
by ooi_piano | 2009-09-11 00:25 | コンサート情報 | Comments(0)

3/22(金) シューベルト:ソナタ第21番/楽興の時 + M.フィニッシー献呈作/近藤譲初演


by ooi_piano