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2月10日(金) ピリオド楽器によるモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲シリーズ 最終回


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~ピリオド楽器によるモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲シリーズ 最終回~

阿部千春(クラシカル・ヴァイオリン) × 大井浩明(フォルテピアノ)

2012年2月10日(金) 午後7時開演 (午後6時30分開場)¥3,000(全自由席)
淀橋教会 小原記念聖堂 (新宿区百人町1-17-8) http://www.yodobashi-church.com/
[JR総武線・大久保駅下車徒歩1分 JR山手線・新大久保駅下車徒歩3分]

W.A.モーツァルト(1756-1791):
●ソナタ第40番 変ロ長調 K.454 (1784/1784出版)[全3楽章]
Largo/Allegro - Andante - Allegretto
●フランスの歌《羊飼いの娘セリメーヌ》による12の変奏曲 ト長調 K.359(374a) (1781/1786出版)
●ソナタ第41番 変ホ長調 K.481 (1785/1786出版)[全3楽章]
Molto Allegro - Adagio - Allegretto/Allegro

【休憩】

●《泉のほとりで》による6つの変奏曲 ト短調 K.360(374b)(1781/1786出版)
●ソナタ第43番 ヘ長調 K.547 (1788)[全3楽章]
Andantino cantabile - Allegro - Andante
●ソナタ第42番 イ長調 K.526 (1787/1787出版)[全3楽章]
Molto Allegro - Andante - Presto
●ソナタ第39番 ハ長調 K.404(385d)(1782)[全2楽章]
Andante - Allegretto

【ご予約・お問い合わせ】 合同会社opus55 tel 03(3377)4706 (13時~19時、水・木定休)、fax 03 (3377)4170 (24時間受付) http://www.opus55.jp/

[使用楽器]◎クラシカル・ヴァイオリン: 作者不詳 18世紀南ドイツ
◎フォルテピアノ: Johan Lodewijk Dulcken 1795 のレプリカ 太田垣至製作(2010)


2月10日(金) ピリオド楽器によるモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲シリーズ 最終回_c0050810_12393254.jpg  モーツァルト・ヴァイオリンソナタ全曲シリーズ最終回は、変奏曲2曲、ウィーン時代の後期のソナタ5曲を取り上げます。

  K.359/K.360は1781年7月にウィーンで作曲されたものです。ザルツブルクでコロラド大司教と決裂したモーツァルトが父の反対を押し切ってウィーンにやってきた頃の作品で、ウィーン最初の弟子となったド・ルムベーケ伯爵夫人マリー・カロリーネのために書かれたと言われています。おそらくパリ滞在(1778年)の際に出会ったアルバネーズのシャンソン集から、”羊飼いの娘セリーヌ”(歌詞は17世紀のもの。それにつけたアルバネーズの音楽はかなりイタリア風に書かれている)には12の、”泉のほとりで”(歌詞は17世紀、リフレインは16世紀のもの)には6の変奏曲をつけました。

  当時のウィーンはヨーロッパで4番目に大きい都市で、神聖ローマ皇帝のもと各国大使が駐在し、地理的条件も重なって国際交流が非常に盛んでした。他の大都市パリやロンドンとは違い、ウィーンでは1683年にオスマン帝国に包囲されて以来外からの影響にオープンな文化土壌が育ち、その活発な音楽環境は、独立を目指すモーツァルトにとって第一歩を踏み出すにふさわしい条件だったと言えるでしょう。啓蒙主義に傾倒し、様々な改革を試みたヨーゼフ2世は市民にとって身近な存在で(モーツァルトは1788年12月7日付でグルックの後任として宮廷作曲家の称号を承けています)、貴族階級と一般市民の交流も盛んでした。1781年11月にウィーンで出版した”アウエルンハンマーソナタ集”やこの変奏曲などはそうした音楽愛好者を対象とした就職活動の一環と言えます。

  *  *  *  

  クラヴィーアとヴァイオリンのための作品において、1782~83年はモーツァルトにとって模索の時期でした。未完の作品が続く中、1784年4月21日(モーツァルト自作目録による)に変ロ長調K.454が作曲されます。マントヴァ出身の女流ヴァイオリニスト、レジーナ・ストリナザッキ(1764-1823)のウィーン滞在にあわせて書かれ、ピアノパートが間に合わず本番当日はモーツァルトが即興で演奏したようです。実力派ストリナザッキのためにヴァイオリンとピアノのパートが互角に書かれており、コーダ部分の独立性、形式の拡大は、後のベートーヴェンの作曲技法へとつながって行きます。

  モーツァルトはこの分野での作曲において3つの構成要素(管弦楽的技法 / 室内楽的技法-旋律と伴奏又はバス- / 3声の作曲技法)を用いていました。マンハイム・パリ時代には作品ごとに別個に認められますが、ウィーン時代には作品内でのこの構成要素の融合が計られる様になります。様々な様式・形式が楽曲の構成に統合され、曲ごとに特有のキャラクターを形成、普遍的なスタイルを生み出しました。これは後期ソナタにおける特徴と言えます。

  *  *  *  

2月10日(金) ピリオド楽器によるモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲シリーズ 最終回_c0050810_12411391.jpg  1785年12月12日に作曲された変ホ長調K.481は出版後(1786年)流行を追い過ぎているとの厳しい批評を受けますが(1788年8月13日付”Musikalische Real-Zeitung)、同時に2楽章の多感的な様式(カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ ”専門家と愛好家のためのクラヴィーアソナタ集第2集” Wq56, 1780からの影響?)、異名同音的転調による表現の深さが特筆されます。この作曲技法は後のシューベルトにおいて多く使用されるようになります。

  ソナタイ長調K.526は、アインシュタインが”完全なる調和への達成”と絶賛した様に、この分野における最高峰とも言える内容です。1787年8月24日に作曲されました。”アイネ・クライネ・ナハトムジーク”K.525と”ドン・ジョヴァンニ"K.527の間に位置し、同年5月28日のレオポルドの死との関連も伺えますが、6月20日にロンドンで亡くなったカール・フリードリッヒ・アーベルへの追悼とも言われています。年少の頃のロンドン滞在(1763~66年の演奏旅行)はモーツァルトにとって一生の思い出となっており、ウィーン定住後もイギリス行きを計画する程でした。K.526の3楽章はアーベルのソナタ(クラヴィーア、ヴァイオリン、チェロのためのソナタ作品5-5、フィナーレ ロンド)をアレンジ、発展させたものとなっています。

  ソナタへ長調K.547は”ヴァイオリンを伴う初心者用の小さなクラヴィーアソナタ”とあるように、一転して1764年の原点に戻った様な作品です。おそらく教育的な目的のために書かれたものでしょう。1788年7月10日に作曲されました。自筆は紛失、1805年の初版が原典となっています。3楽章のアンダンテはモーツァルト自身がピアノに改編し(K.54,547b)、2楽章アレグロも他のピアノソナタに編曲されています。

  ハ長調K.404は未完で、2楽章アレグレットの一部のみ自筆が残っています。ケッヘルはコンスタンツェのためのソナタ集の一部としてK.404 (1782)としました。1楽章のアンダンテが”4手のためのアンダンテと5つの変奏曲”(K.501)、”自動オルガンのためのアンダンテ”(K.616)に似ている事から、サンフォアは1788年作のソナタK.547とピアノソナタヘ長調K.546aとの関連を指摘しています。また2つの楽章が別個の成立だったのではという説もあります。(阿部千春)


【モーツァルト:クラヴィアとヴァイオリンのためのソナタ集 全曲シリーズ】
●第1回公演(2009年7月) パリ・ソナタ集 作品1(全六曲)K.301-306 曲目解説
●第2回公演(2010年10月) アウエルンハンマー・ソナタ集 作品2(全六曲)K.296, K.376-380 曲目解説

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阿部千春(クラシカル・ヴァイオリン)
 5歳よりヴァイオリンを始める。塩川庸子氏、尾島綾子氏、前澤均氏、金倉英男氏、村上和邦氏、菊地俊一氏に師事。 武蔵野音楽大学卒業後、ドイツ・シュトゥットガルト国立音楽大学でスザンネ・ラウテンバッハー氏に師事。その後、トロッシンゲン国立音楽大学古楽科に入学、バロックヴァイオリンをジョルジオ・ファヴァ氏に師事。引き続き同大学院にてフランソワ・フェルナンデス、エンリコ・ガッティ、ジョン・ホロウェイ各氏のもとで研鑽を積む。1999年、ドイツ産業連盟(BDI)主催の”古楽・弦楽器コンクール”にて特別奨励賞を受賞。 2000年同大学院修了後、バーゼル・スコラカントルム(バロックヴァイオリン、ヴィオラ・ダモーレ)に在籍、またケルン国立音楽大学(古楽科室内楽専攻)にて国家演奏家資格取得。
 在学中より、オーケストラ/室内楽奏者、ソリストとして欧州各地で数多くの演奏会、CD、各地放送局の録音に参加。2000年秋、ミシェル・コルボ氏の来日公演にて、マタイ受難曲の第2コンサートマスターを務め、コルボ氏の絶賛を受ける。以来、日本にてリサイタル活動も始める。コンチェルト・ケルンにおいて活動。ヴィオラ・ダモーレ奏者としても、テレマン・トリプルコンチェルト、ヨハネ受難曲の他、2009年にはバッハ・チェンバロコンチェルトBWV1055をヴィオラ・ダモーレのために復元し高い評価を得る。 同年、アルテムジークケルンとのCD”ROMA”がリリースされる。ケルン在住。

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by ooi_piano | 2012-01-30 11:24 | コンサート情報 | Comments(0)

6月15日(日)《ロベルト・シューマンの轍》第1回公演


by ooi_piano