[ポック#13] ファーニホウ全ピアノ作品+シャリーノ・ソナタ全5曲
2012年12月12日(水)18時30分開演 代々木上原・けやきホール
大井浩明(ピアノ)
ファーニホウ 《エピグラム(警句)》(全6曲、1966)
シャリーノ 《ソナタ第1番》(1976)
ファーニホウ 《3つの小品》(1966/67)
シャリーノ 《ソナタ第2番》(1983)
シャリーノ 《ソナタ第3番》(1987)
(休憩)
ファーニホウ 《レンマ-イコン-エピグラム (見出し-挿絵-解題)》(1981)
シャリーノ 《ソナタ第4番》(1992)
ファーニホウ 《オプス・コントラー・ナートゥーラム (自然の本性に抗する業) -- 影絵芝居》(全3部、2000)
シャリーノ 《ソナタ第5番》(1994)
(2012年11月シュトックハウゼン&ケージ公演感想集 http://togetter.com/li/409233)
【チケット料金】
〈前売〉 学生2,000円 一般2,500円 〈当日〉 学生2,500円 一般3,000円
3公演券 一般7,500円 学生6,000円
【チケット取り扱い】
ローソンチケット(各公演1回券のみ) tel. 0570-084-003 http://l-tike.com/ Lコード:37455
(株)オカムラ&カンパニー(下記) 各公演1回券、3回券をお求めいただけます。
【お問い合わせ】 (株)オカムラ&カンパニー
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《エピグラム》(1966)は、音楽表現上の問題設定を試行する「独習課題」シリーズの一環。6つの短い警句的小品から成る。1967年2月ロンドンの新音楽振興協会(SPNM)にてジョン・マッケイブにより初演。
引き続いて書かれた《三つの小品》(1966/67)では、各曲は固有の音の身振りと構成で特徴付けられながら、「その基盤には本質的な統一が通底するよう」心を砕いたと云う。1968年ロンドン・パーセルルームで、フィリップ・ピルキントンにより初演。
《レンマ-イコン-エピグラム》(1981)は、イタリア人法学者アンドレーア・アルチャーティ(1492-1550)の創始した、寓意詩画集に基づく。ページ上部に見出し(レンマ)、中央に大きく挿絵(イコン)、その下に寓意の解説(エピグラム)が添えられる。ヴェネツィア・ビエンナーレの委嘱、1981年6月28日に仏ラ・ロシェル音楽祭で被献呈者マッシミリアーノ・ダメリーニによって初演。譜面冒頭には、ボードレールの言葉「全てはヒエログリフ(象形文字)的である」が引用されている。
《オプス・コントラー・ナートゥーラム (自然の本性に抗する業) -- 影絵芝居》(2000)は、ドイツ人哲学者ヴァルター・ベンヤミンのスペイン国境での最期を扱ったオペラ《影の時 Shadowtime》(1999-2004)の第4場として作曲。タイトルはルネサンスの錬金術の密儀から取られた。短い冒頭部(叙情的な入祭唱)と終結部(行列聖歌)に挟まれた大規模な中央部は、「カタバスィス Katabasis」(ベンヤミンのアバターの冥界行き)と題されている。演奏と同時に奏者は、台本作家チャールズ・バーンスタインならびに作曲者自身によるテクストを朗誦する。2000年10月ベルギー・フランダース音楽祭にて、委嘱者イアン・ペイスにより初演。

現時点で全5曲を数えるピアノ・ソナタは、彼の膨大なピアノ作品群の中核を成す。全て十数分のサイズの単一楽章であり、共通するモチーフも多い。戦後の前衛音楽のさまざまな語法が、ドビュッシー《前奏曲集》《映像》やラヴェル《鏡》《夜のガスパール》を思わせる華麗なピアノ書法と巧みに融合している。
第1ソナタ(1976)は、同年5月19日ブレシア国際現代音楽祭にて、当時26歳だった「わが友」マッシミリアーノ・ダメリーニが献呈初演。楽譜冒頭のエピグラムは、4世紀の歴史家アンミアヌス・マルケッリヌスがラテン語で著した『歴史』第23巻から、真珠の起源について書かれた一節(85-86章)である。
第2ソナタは、1979年にスケッチが書かれ1983年春に完成、同年6月9日「フィレンツェの5月」音楽祭で、「我が音楽の唯一の具現者」M.ダメリーニにより献呈初演。軸の微細な震動、周縁の滲みを通して、反復を避けつつ何時しか眠りへと落ちていくような形式(「錯覚の対位法」)が探求されている。
第3ソナタ(1987)は、1990年8月26日チッタ・ディ・カステッロ国際室内音楽祭で、M.ダメリーニにより献呈初演。ピアノという楽器への人類学的(antropologico)なアプローチを試みた自信作である。
第4ソナタ(1991/92)は、同年7月22日シチリア島ジベッリーナで、M.ダメリーニにより献呈初演。作曲者の唱える「時間の窓(finestra)」が明瞭に知覚されるよう、敢えてシンプルな素材が執拗に並置してある。
ザルツブルク音楽祭委嘱による第5ソナタ(1994)は、終結部に5通りのヴァージョンを持つ。同年8月23日、献呈者マウリツィオ・ポリーニによる世界初演では、4番目のヴァージョンが用いられた。最も長い1番目のヴァージョン(「決定稿」)による初演は、1996年1月20日トリノで、同じくポリーニが行った。ベートーヴェン第9交響曲からの音型“nicht diese Töne!”(E-F-E-H-D-C、「音ではなく声を・・」)が引用されている。