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リサイタル・シリーズ 《ピアノで弾くバッハ Bach, ripieno di Pianoforte》第4回公演

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リサイタル・シリーズ 《ピアノで弾くバッハ Bach, ripieno di Pianoforte》第3回公演
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2013年7月27日(土)15時開演 (14時半開場)
タカギクラヴィア松濤サロン (東京都渋谷区松濤1-26-4 Tel. 03-3770-9611)
最寄駅/JR・東横線・地下鉄「渋谷駅」より徒歩10分、京王井の頭線「神泉駅」より徒歩3分

J.S.バッハ:クラヴィア練習曲集第2巻&第4巻 (NYスタインウェイ独奏による)

●《イタリア協奏曲》 ヘ長調 BWV 971 [全3楽章]

●《フランス風序曲》 ロ短調 BWV 831 [全8楽章]
  序曲 - クーラント - ガヴォット I&II - パスピエ I&II - サラバンド - ブーレ I&II - ジーグ - エコー

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●《ゴルトベルク変奏曲》 ト長調 BWV988
  アリア - 変奏 1 - 変奏 2 - 変奏 3 ( 1度のカノン)
  - 変奏 4 - 変奏 5 - 変奏 6 ( 2度のカノン)
  - 変奏 7 - 変奏 8 - 変奏 9 (3 度のカノン)
  - 変奏 10 (フゲッタ) - 変奏 11 - 変奏 12 (4度のカノン)
  - 変奏 13 - 変奏 14 - 変奏 15 (5度のカノン)
  - 変奏 16 (序曲) - 変奏 17 - 変奏 18 (6度のカノン)
  - 変奏 19 - 変奏 20 - 変奏 21 (7度のカノン)
  - 変奏 22 (Alla breve) - 変奏 23 - 変奏 24 (8度のカノン)
  - 変奏 25 - 変奏 26 - 変奏 27 (9度のカノン)
  - 変奏 28 - 変奏 29 - 変奏 30 (クオドリベット) - アリア・ダ・カーポ

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リサイタル・シリーズ 《ピアノで弾くバッハ Bach, ripieno di Pianoforte》第4回公演_c0050810_23203221.gif   “Clavier-Übung”(クラヴィーア練習曲集)全4巻は、生前のバッハが自費で世に送り出した唯一の大作です。バッハが世間に自分のことをどう思って欲しかったかを示唆する音楽、とも言えるでしょう。Clavierとは当時の鍵盤楽器一般を指す語で、Übungとは精神的な面までも含めた探求・修行を意味しています。
   その第1巻(1731年出版)が、1段鍵盤のための6つのパルティータ(組曲)です。本日演奏するのは、その続編にあたる第2巻(1735年出版)、2段鍵盤チェンバロのための《イタリア風協奏曲》と《フランス風序曲》(舞曲集)、ならびに第4巻(1741年出版)に相当する《ゴルトベルク変奏曲》(アリアと種々の変容)です。第3巻(1739年出版)《ドイツ・オルガン・ミサ》(2段鍵盤+足鍵盤)にも、手鍵盤のみで演奏可能な作品は多数含まれていますが、ピアノでは《4つのデュエット》以外はまず演奏されません。
   シリーズ第1回~第3回で取り上げた《平均律クラヴィア曲集》《パルティータ集》は一段鍵盤用でしたが、本日の3作品は全て2段鍵盤チェンバロを前提に書かれています。チェンバロの上下二段の鍵盤は、基本状態ではおよそ等しい音量・音質で、連結機構を用いると下鍵盤の音量・音色をより華麗に増大させることが出来ます。《イタリア風協奏曲》と《フランス風序曲》では、バッハはこれをf(フォルテ)とp(ピアノ)という強弱記号で表していますが、あくまで「弦の数」の多寡による音色・質感・距離感の相違に過ぎず(よって音の減衰は相変わらず早い)、現代のピアノにおけるフォルテ/ピアノとは別の話になります。

リサイタル・シリーズ 《ピアノで弾くバッハ Bach, ripieno di Pianoforte》第4回公演_c0050810_23211049.gif   《ゴルトベルク変奏曲》では一変奏ごとに、一段で弾くか二段で弾くかが指定されています。上下二段をどのような状態(レジストレーション)にして、かつどちらの鍵盤をどのように用いるか、は奏者自身が決めねばなりません。よって、例えばト短調のしめやかな第25変奏からクオドリベットの第30変奏へ一直線に盛り上がっていくかどうかは、楽譜からだけでは不確定です。「二段の鍵盤で」と指定された第8、11、14、17、20、23、26、28変奏は、バッハの全鍵盤作品の中でも極めて例外的な、同じ音域を動き回る二声部(=ピエス・クロワゼ/交差曲)で書かれており、「現代のピアノで絶対に弾くべきでない最右翼」が《ゴルトベルク変奏曲》である典拠となっています。
  冒頭と掉尾のアリアも、本来シンプルな和声の気楽な小唄であったものが、心配性のバッハが入念に書き込んだ装飾例の所為もあり、減衰の遅い現代のピアノでは猟奇的なまでに失速寸前で弾かれることが多く、ついにはホラー映画の惨殺シーンで使われる始末です。このリサイタル・シリーズ 《ピアノで弾くバッハ Bach, ripieno di Pianoforte》は、異形の詰め物(ripieno)である現代のピアノ(Klavier)でバッハを演奏するという、いわば正解の見つからない鍵盤修行(Clavier-Übung)に他なりません。そこではバッハの音楽も、種々の変容(Veränderung)を余儀なくされることでしょう。


●お問い合わせ/(株)オカムラ&カンパニー tel 03-6804-7490(10:00~18:00 土日祝休) fax 03-6804-7489 info@okamura-co.com
http://okamura-co.com/ja/events/piano-axis/

※タカギクラヴィアに直接チケットを申し込むと、隣接のカフェ(http://www.cafetakagiklavier.com/cafe_f.html)のドリンク券がつきます

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【2012年度(終了)】
2012年4月21日(土)平均律クラヴィア曲集第1巻(全24曲)
2012年7月28日(土)平均律クラヴィア曲集第2巻(全24曲)
2012年11月3日(土)シュトックハウゼン:自然の持続時間(全24曲)
【2013年度予定】
2013年4月20日(土)15時 パルティータ全6曲
2013年7月27日(土)15時 ゴルトベルク変奏曲、フランス序曲、イタリア協奏曲
2014年1月25日(土)15時 イギリス組曲全6曲
【2014年度予定】
⑥フランス組曲全6曲
⑦4つのデュエット、インヴェンション、最愛の兄のカプリッチョ、半音階的幻想曲とフーガ他
⑧フーガの技法&音楽の捧げ物


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[批評] 大井浩明「ピアノで弾くバッハ」第1回・第2回
http://d.hatena.ne.jp/Gebirgsbach/20121203/

【第1回】
  鍵盤楽器奏者の大井浩明は近年、18世紀以前の楽曲では古典鍵盤楽器を用いることを旨としてきた。このたびはそこから一歩踏み出し、ピアノでバッハに取り組む。この日は《平均律クラヴィーア曲集第1巻》。そこで展開されるのは19世紀的なバッハ演奏のおさらいではなく、18世紀音楽にとっては足枷である現代楽器でいかにバッハの「芯」に迫るか、という試みだ。
  大井にかかるとそれは単なる抽象論ではなく、徹頭徹尾、具体的な演奏法として現れてくる。たとえば、同じ音型の繰り返しに句読点をきちんと付けていく。19世紀的な演奏ならそんな場面を一息で歌いきってしまおうとするだろう。句読点1つで大井は、18世紀と19世紀との間に横たわる「時間の分節感覚」の違いを表現した。
  この日は室温や調律に思わぬトラブルも発生したようだが、今後の演奏会では楽器や環境も最適化されることだろう。このシリーズへの期待が否応なく高まる。(4月21日タカギクラヴィア松濤サロン) [初出:音楽現代 2012年7月号]

【第2回】
  鍵盤楽器奏者・大井浩明のバッハ「平均律クラヴィーア曲集」と言えば、クラヴィコードでの演奏が良く知られている。このたびは、その対極とも言えるモダンピアノでバッハに取り組む。この日は第2巻の全曲演奏。4月の第1巻に続き、大井が「異形の詰め物」と呼ぶスタインウェイのグランドピアノで、18世紀音楽に迫る。
  その成功を確かなものにしたのは第9番「ホ長調」から第12番「へ短調」へと続く4曲だ。ここでは、調和を重んじる16世紀のルネサンス様式から、感情の素直な発露を目指す18世紀の多感様式までが顔を出す。それらを彩るのはクラヴィコード、オルガン、チェンバロ、フォルテピアノの各楽器を思わせる多彩な書法だ。こうしたスタイルの歴史性、楽器の音色の多様性が演奏として花開いたのも、大井浩明とモダンピアノという取り合わせがあってこそ。作曲家・楽器・演奏者のもっとも現代的で価値ある出会いが実現した。(7月28日 タカギクラヴィア松濤サロン) [初出:モーストリー・クラシック 2012年10月号]
by ooi_piano | 2013-07-25 21:44 | コンサート情報 | Comments(0)

Blog | Hiroaki Ooi


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