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12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他

(増補)第1回~第4回公演 感想まとめ等: http://togetter.com/li/568921


12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他_c0050810_22593058.jpg


ベートーヴェン:ピアノソナタ全32曲連続演奏会(全8回)
~様式別・時代順のフォルテピアノ(古楽器)による~


淀橋教会・小原記念チャペル(東京都新宿区百人町1-17-8)
JR総武線・大久保駅「北口」下車徒歩1分、JR山手線・新大久保駅下車徒歩3分
3000円(全自由席) [3公演パスポート8000円]

【お問合せ】 合同会社opus55 Tel 03(3377)4706 (13時~19時/水木休) Fax 03 (3377)4170 (24時間受付) http://www.opus55.jp/
第五回公演
2013年12月6日(金)19時/淀橋教会・小原記念チャペル

使用楽器 
1802年ブロードウッド 68鍵 イギリス式シングルエスケープメントアクション (#)
1814年ブロードウッド(スクエア・ピアノ) 68鍵 イギリス式シングルエスケープメントアクション (※)
[A=440Hz、1/6ヴァロッティ不等分律]
調律 深町研太/太田垣至

12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他_c0050810_10553970.jpg〈ピアノフォルテのための大ソナタ、
在ヴィルンスベルク・チュートン騎士分団長にして侍従、ワルトシュタイン伯爵閣下へ、
ルイ・ヴァン・ベートーヴェンにより作曲献呈、作品53〉


FBイベントページ https://www.facebook.com/events/545000585594490/


《演奏曲目》

●ベートーヴェン:ソナタ第16番ト長調Op.31-1(1802) (#)
Allegro vivace - Adagio grazioso - Rondo; Allegretto

●ベートーヴェン:ソナタ第17番ニ短調Op.31-2「テンペスト(Der Sturm)」(1802) (※)
Largo/Allegro - Adagio - Allegretto


(休憩10分)

●ベートーヴェン:ソナタ第18番変ホ長調Op.31-3「狩り(Die Jagd)」(1802) (#)
Allegro - Scherzo: Allegro vivace - Menuetto: Moderato e grazioso - Presto con fuoco

ベートーヴェン:ソナタ第21番ハ長調Op.53「ワルトシュタイン(Waldstein)」(1803/04) (#)
Allegro con brio - Introduzione; Adagio molto - Rondo: Allegretto moderato

古楽器との出会い  ―――  花田忠彦

12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他_c0050810_7111877.jpg小学時代から続けてきたピアノの進歩が非常に遅く、中学になってもまだバイエルをやっている有様。ピアノ才能が全く欠如している事にようやく気付き、遅ればせながら別の楽器で音楽に再挑戦しようと思ったのが中学3年の頃でした。高校入学後、進学祝いとして親にねだって買ってもらったフルート。高校時代はフルート教室に通い、大学に入ってからは室内楽のサークルに入って続けましたが、どこか違和感を持つようになりました。

そんな折、NHK FMのバロック音楽の番組をたまたま聴いていた時に、不思議なフルート曲が流れてきました。チェンバロと弦楽器の通奏低音に伴奏された、2本のフルートによる素朴な響きの曲。演奏後の解説でバッハの2本のフラウト・トラヴェルソと通奏低音の為のソナタと知りましたが、これが「フラウト・トラヴェルソ」という楽器をはっきりと意識した最初の瞬間でした。ビブラートをほとんど掛けず、少しくすんだような木目調の音色。アーティキュレーションが極端に強調されている、ちょっと不思議な演奏。可能性を直観させられる、心惹かれる演奏に思えました。

この時から、モダン・フルートでバロック音楽を演奏する時、迷いを感じるようになりました。モダン・フルートでもアーティキュレーションを強調する事はできますし、ビブラートを抑えて吹くことはできます。大学2年の時、とある演奏会に出演した時、同じ曲をモダン・フルートで演奏したのですが、放送の演奏をちょっと真似して極端なアーティキュレーションでビブラートを控えた演奏を試みました。
珍しい演奏になったとは思いましたが、何か違和感が残りました。

その後、日本の楽器メーカーの「トヤマ楽器製造株式会社」が、樹脂製の本格的なフラウト・トラヴェルソを発売している事を知りました。愛好家からはキーが一つしか付いていない白い樹脂製の外観から「蛍光灯」というあだ名のその楽器、5万円程度だった事もあって、気軽な気持ちで入手しました。

樹脂製とは言え、ずっしりと重い楽器はなかなかたいしたものに思えました。指使いはモダン・フルートとは違いますが、基本的な発音原理はモダン・フルートと同じです。音を出す事自体に難しくありませんでした。歌口の大きさがとても小さいので、息を吹き込む向きには注意が必要でしたが、ほどなく曲らしきものを吹けるようになりました。

音が小さくて素朴だし、ちょっと調子はずれだけど、あまり違和感なくアーティキュレーションの掘り込みができ、ノンビブラートでも間延びしにくい事に驚き、フラウト・トラヴェルソの魅力に惹きこまれていきました。

12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他_c0050810_712159.jpgそれから大学卒業後、会社員としての生活が始まり数年たってから。
学生の頃より自由な時間は減りましたが、代わりに自由にできるお金は少し増えました。フラウト・トラヴェルソへ本格的に突き進む前に、モダン・フルートとリコーダーという、あえて隣接するジャンルを先に学んでおきたいという気持ちが起こり、それぞれレッスンに通い始めました。
また、樹脂製の工業製品ではなく、木材でできた「本物の」フラウト・トラヴェルソを持ちたいと思いはじめました。

当時ついていたリコーダーの先生はフラウト・トラヴェルソも演奏していたこともあって、先生から譲ってもらったツゲ製のフラウト・トラヴェルソが最初の本格的な楽器でした。また、当時普及し始めていたインターネットからの情報で、非常に多くの種類の楽器が世界中の多くの楽器製作者によって製作されている事を知りました。興味の赴くままに次々と注文して異なる様式の笛を輸入しはじめた頃、ようやく本気でフラウト・トラヴェルソを専門とする先生に習う事を決心しました。

最初のレッスンで、バッハやテレマンの無伴奏曲を吹くように言われました。真っ先に指摘されたのは、「息が強すぎる。音が汚いね、フラウト・トラヴェルソの美しい音が出る吹き方はモダン・フルートとは全く違うんだよ。」 

それまで、音は綺麗に十分に鳴っていると思っていました。汚い音だったんだ・・・。
そもそも、フラウト・トラヴェルソの美しい音ってどんな音?
その後、ずっと追いかけていく疑問が湧き上がってきた瞬間でした。

最初のレッスンで、自力で集めた楽器を3本持っていきました。それぞれを試奏してもらったのですが、そのうちの1本を試して頂いた時、「凄く良い楽器だね。 オリジナル楽器の響きがするね、これは」。

オリジナル楽器の響き?
その後のフルートとの関わりで影響を与えた重要なキーワードを意識した瞬間でした。

12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他_c0050810_7125848.gifレッスンは毎回新しい発見の連続でした。
フラウト・トラヴェルソは、大きい音を出す事は不得意。でも音量を小さくしていく事はとても得意で、楽器が出せる一番小さな音と一番大きな音の差である「ダイナミック・レンジ」は非常に大きい。息の変化に対する音質の変化はとても大きく敏感で、それを時間的な微妙な変化をコントロールする事で積極的に表現に利用する事ができる。タンギングを精密にコントロールする事で、モダン・フルートよりアーティキュレーションをくっきりと掘り込んでいく事ができる。「歌うような」表現はもちろん、アーティキュレーションを更に深く掘り込んでいく事で可能となる「喋っているような・語りかけるような」表現もできる。自習ではフラウト・トラヴェルソのポテンシャルがこれほど大きいという事に気付く事ができませんでした。

レッスンでは、最初にブラヴェ、オットテールといったフランス・バロックの重要作品が真っ先に取り上げられました。そこで用いられるイネガールと呼ばれる不均等な音の分割法、様々なバロック時代固有の装飾法などを学ぶ事により、今まで知らなかったバロック音楽の豊穣な世界が急激に広がっていきました。これらの技法を正しく用いる事により、一見単純な譜面の音楽も、非常に濃厚に香りたつ素晴らしい美を示してくれる事がとても面白い。

「フラウト・トラヴェルソの美しい音」とは何か。最初のレッスンで生じた疑問は、その後ずっと私の心の中に居座り続け、いまだにずっと解答がだせない問題です。

私の場合、最初のレッスンで先生が口走った「オリジナル楽器の響き」を持つ楽器が座標軸となりました。
最初、その楽器を吹いてもあまり良い音が出ませんでした。ですので、その楽器を使って、一番響くポイントを探っていくと言う作業を根気よく続けていきました。今、自分なりに出した中間的な解答を恥ずかしながら紹介させて頂きたいと思います。

12/6(金)19時 フォルテピアノ×ベートーヴェン第五回公演 《テンペスト》《ワルトシュタイン》《狩》他_c0050810_7134119.gif美しい音を出す為の前提として重要なのは、息の圧力、スピードのコントロールと思います。コントロールと言っても奥が深いのですが、その中で取り分け大切な事があります。フラウト・トラヴェルソが美しく響く息の圧力は、モダン・フルートより圧倒的に低いのです。モダン楽器の経験者がフラウト・トラヴェルソを吹く時、簡単に音が出てしまうので気づきにくいのですが、フラウト・トラヴェルソの美しさを引き出す為には何よりも息の圧力を弱める事が必要です。 その為には、しっかりと脱力ができるようになる事がとても重要です。

響きの良い楽器と出会えれば良いのですが、どうしたら出会えるのだろう、というのが次の課題です。実のところ、響きを習得する練習に使ったフルートはピッチもスタイルも特殊で、合奏等には向かない楽器でした。フルートにも時代、地域に応じた様々なスタイルがありますので、1本あればすべてこなせるという訳ではありません。

世界中の著名な製作者に手紙を出し、次々と楽器を注文していきました。また、様々な楽器の展示会でも試奏させてもらい、これはと思うものを入手。色々なフラウト・トラヴェルソとの出会いを通じて、美しい響きに迫ろうと努力しました。

現代に作られるレプリカ楽器だけでなく、幸運にも18世紀後半にヨーロッパで製作されたオリジナル楽器数本とも巡り合いました。その中には、確かにオリジナル楽器の響きと呼ばれるに恥じぬ、素晴らしい響きを持つ楽器もありました。
いつのまにか、新旧様々な30本もの楽器が手元に集まってきました。
美しい響きの謎はいまだに解ける気配がありません。
この楽しい旅の道のりは長そうです。
by ooi_piano | 2013-12-04 07:21 | Beethovenfries2013 | Comments(0)

6月15日(日)《ロベルト・シューマンの轍》第1回公演


by ooi_piano