先月末に御紹介しました、バッハ「新発見調律」への反論がやっとネットで公表されたようです。
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執筆責任者のエミール・ジョバン氏はフランス屈指のクラヴサン製作家で、レオンハルトの最新録音の幾つかは彼の楽器を使用しているんじゃなかったかな。パリ国立高等音楽院古楽科でも調律法の教鞭を執っておられます。
読み方のポイントは、「渦巻き模様の左端は、筆記体『f』の下半分が審美的に省略されたものである」、「そのすぐ右隣の渦巻きは、いわば♭系に逆回転している」(・・・ここが+約12分の1シントニック・コンマに相当)、「《Das》の頭文字《D》の付け根が『E♭』と読めるが、その延長曲線が『Es』に相当する逆回転渦巻きを貫通している」、「《Clavier》の《C》が、『C』に相当する3回転渦巻きへ添えられた小さい《C》の文字と重ね合わされている」(この時代の音叉はCかFで、地方によってマチマチ)、「最右端の部分は『C』『0』『3』、すなわちCとEが純正3度であることを意味する」(・・・これは1727年に書かれたバッハのコラールのタブラチュアでそういう例があるそうな)。
キルンベルガーを始めとして弟子筋は純正3度系には全く言及していないので、なかなか大胆な読み取り結果と言えるでしょう。C-DurとG-Durは最高の響きになりますが、例えばト長調前奏曲をハーモニーが聞き取れる程のテンポとオーヴァーレガートで弾く鍵盤奏者はいません。一方Cis-Dur等はなかなか物凄いことになります(うなりが速過ぎてかえって聞こえないとも言える)。17世紀末ヴェルサイユにおける、C-G-D-A-E-Hが-1/4、H-Fis-Cis-GisとC-Fが0、F-B-Esが+1/5(Es-Gisは中全音律的ウルフ)といった調律法では、Es-DurとH-Durで同じ拡がりの3度になりますが、バッハはDisよりEsを優遇したわけです。テンションはあるものの美しい(例えばA-Dur)などと言い出すなら、“mais cette solution « marche » sans aucun doute.”という強弁にも首肯せざるを得ません。コントラストという点では勿論レーマンをかるく凌駕するものの、私の感想を繰り返すならば、「調律よりも調性格論」。ところで調性格論の根拠って何なんでしょうね。

もっともこの反駁論文の副題は控え目で、「ブラドリー・レーマンの発見に対するもう一つの視座Un autre éclairage」とあります。くだんの渦巻き模様を米国人レーマン氏がロゼッタストーンにまで準えているのに対し、仏人側は「表題(の装飾)」、とそっけありません。
平均律表題ページにしても、「前奏曲とフーガ集――すべての全音と半音を使い、長3度と短3度の関係を網羅うんぬん」という序文がわざわざ左右対称の心房形に整えられているのは、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェン・フリードリヒ大王同様にバッハがフリーメーソンだったからぢゃなかろーか!(ミツラー協会しかり、ってわけ)とか、リストもドビュッシーもブクステフーデも薔薇十字会でした、と云った「と学会」的話題は、肩をすくめながらでないと口にすることさえ出来ません(ブクステフーデに関しては皆そう言いますけど)。ミツラー変奏曲から魔笛まで、なんちゅう論文は無いものでしょうかねぇ(笑)。クラヴィコード奏法に関するグリーペンケルルのテクストだって、ミクローシュ・シュパーニが実演してみせなければ、単なるトンデモ文献だったかも。
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執筆責任者のエミール・ジョバン氏はフランス屈指のクラヴサン製作家で、レオンハルトの最新録音の幾つかは彼の楽器を使用しているんじゃなかったかな。パリ国立高等音楽院古楽科でも調律法の教鞭を執っておられます。
読み方のポイントは、「渦巻き模様の左端は、筆記体『f』の下半分が審美的に省略されたものである」、「そのすぐ右隣の渦巻きは、いわば♭系に逆回転している」(・・・ここが+約12分の1シントニック・コンマに相当)、「《Das》の頭文字《D》の付け根が『E♭』と読めるが、その延長曲線が『Es』に相当する逆回転渦巻きを貫通している」、「《Clavier》の《C》が、『C』に相当する3回転渦巻きへ添えられた小さい《C》の文字と重ね合わされている」(この時代の音叉はCかFで、地方によってマチマチ)、「最右端の部分は『C』『0』『3』、すなわちCとEが純正3度であることを意味する」(・・・これは1727年に書かれたバッハのコラールのタブラチュアでそういう例があるそうな)。
キルンベルガーを始めとして弟子筋は純正3度系には全く言及していないので、なかなか大胆な読み取り結果と言えるでしょう。C-DurとG-Durは最高の響きになりますが、例えばト長調前奏曲をハーモニーが聞き取れる程のテンポとオーヴァーレガートで弾く鍵盤奏者はいません。一方Cis-Dur等はなかなか物凄いことになります(うなりが速過ぎてかえって聞こえないとも言える)。17世紀末ヴェルサイユにおける、C-G-D-A-E-Hが-1/4、H-Fis-Cis-GisとC-Fが0、F-B-Esが+1/5(Es-Gisは中全音律的ウルフ)といった調律法では、Es-DurとH-Durで同じ拡がりの3度になりますが、バッハはDisよりEsを優遇したわけです。テンションはあるものの美しい(例えばA-Dur)などと言い出すなら、“mais cette solution « marche » sans aucun doute.”という強弁にも首肯せざるを得ません。コントラストという点では勿論レーマンをかるく凌駕するものの、私の感想を繰り返すならば、「調律よりも調性格論」。ところで調性格論の根拠って何なんでしょうね。

もっともこの反駁論文の副題は控え目で、「ブラドリー・レーマンの発見に対するもう一つの視座Un autre éclairage」とあります。くだんの渦巻き模様を米国人レーマン氏がロゼッタストーンにまで準えているのに対し、仏人側は「表題(の装飾)」、とそっけありません。
平均律表題ページにしても、「前奏曲とフーガ集――すべての全音と半音を使い、長3度と短3度の関係を網羅うんぬん」という序文がわざわざ左右対称の心房形に整えられているのは、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェン・フリードリヒ大王同様にバッハがフリーメーソンだったからぢゃなかろーか!(ミツラー協会しかり、ってわけ)とか、リストもドビュッシーもブクステフーデも薔薇十字会でした、と云った「と学会」的話題は、肩をすくめながらでないと口にすることさえ出来ません(ブクステフーデに関しては皆そう言いますけど)。ミツラー変奏曲から魔笛まで、なんちゅう論文は無いものでしょうかねぇ(笑)。クラヴィコード奏法に関するグリーペンケルルのテクストだって、ミクローシュ・シュパーニが実演してみせなければ、単なるトンデモ文献だったかも。

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
いつも出来合いのスキンを使っているだけなのですが・・・。変更してみました。
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