人気ブログランキング | 話題のタグを見る

10/16(金) 東京電機大学 Media Project Vol.13

10/16(金) 東京電機大学 Media Project Vol.13_c0050810_22594220.jpgMedia Project Vol.13
2015年 10月16日(金) 19時
開演(18時半開場)
すみだトリフォニー小ホール 入場無料
【問い合わせ】 Tel. 03-5284-5569 Fax. 03-5284-5697 mp[at]mlab.im.dendai.ac.jp
http://www.srl.im.dendai.ac.jp/events/Media_Project/V13/index.html
           
●柴山拓郎:《Imaginary Universe for eight speakers》 (2014)
●喜多敏博:クエリー・レスポンス - ピアノとライヴ・エレクトロニクスのための》(2014)(改訂版初演)
          ピアノ 大井浩明
●小坂 直敏:《ハイブリッド・コラージュ - ピアノと電子音響のための》(2015)(世界初演)
          ピアノ 大井浩明
●高岡 明 (音楽)+田中 敬一 (光アート):《Vanishing Trajectories》(2015)(世界初演)
●古川 聖:《かたちをめぐるものがたり》(2015)(世界初演)
          クラリネット 川越 あさみ, ピアノ 大井 浩明, プログラミング 濱野 峻行
●莱 孝之:《ルーセント・アクウァレル - ハープとコンピュータのための》(2001)
          ハープ  堀米綾

主催 東京電機大学 未来科学部
後援 先端芸術音楽創作学会 (JSSA),日本電子音楽協会 (JSEM)



10/16(金) 東京電機大学 Media Project Vol.13_c0050810_2303581.gif■小坂 直敏:《ハイブリッド・コラージュ ― ピアノと電子音響のための》(2015)(世界初演)
Naotoshi Osaka Hybridization Collage for piano and electroacoustics

  この作品は、既存楽器とコンピュータ音(電子音響)を混合させる、コンピュータ音楽の一形態で、ピアノ音は拡声するが、特に加工はしていない。電子音響では、作者が取り組んでいる「構造的音色」の一環としてのサウンド・ハイブリッド音を組み込んでいる。構造的音色とは、一つの音から別の音まで徐々に移り行く「サウンド・モーフィング」、ひとつの音の中に別の音が入れ子になっている「音の音」、二つ以上の音の特徴を持ち寄って、これらを掛け合わせてひとつの音を造る「サウンド・ハイブリッド」の三本立てからなる合成音技術の総称である。これらの合成音は現実にはない音であるため、既聴感のない新たな音色として、また、ひいては新たな楽音としての期待につながる。
  また、このような音は、一つの音と聞こえるか複数の音と聞こえるかの中間の合成音で、ぎりぎり一つの音といえる範囲を狙っている。
  本作品の中では、いくつかのサウンド・ハイブリッドを行っている。本年6月に収録した鳥(ヒタキ類)の鳴き声と正弦波の掛け合わせ音の他、水音、金属打撃音などを電子音と掛け合わせた。最も主要なハイブリッド音は、昨年のオーケストラ作品「音の音」の弦楽器のテーマを引用した。これは、作者がいろは歌を朗読し、そのピッチを機械分析し、これを旋律として和声付けしたものであるが、この弦の音にさらに、朗読した「いろは歌」の音韻をも付与して、弦楽器に喋らせる、ということを技術課題とした。弦楽器に喋らせると、弦楽器でなくなってしまうのか(弦楽器の特徴が損なわれるのか)、しわがれ声のようなつまらない音になってしまうのか、声と弦楽器が二つとも聞こえるだけなのか、という問いに、否、魅力的な一つの楽音である、と答えたいのが合成音の製作意図、ひいては作品の創作意図である。
  いろは歌の音韻は以下に読み上げた。
  「いろわにおえどちりぬるを、わがよたれぞつねならむ。ういのおくやまきょうこえて、あさきゆめみじえいもせず」


小坂直敏  Naotoshi OSAKA
  1978年早大電気工学科修士了。同年電電公社(現NTT)入社。以来さまざまな音響研究に従事する。作曲を故甲斐説宗氏、田鎖大志郎氏に師事。1990年以降、自身の音合成研究の成果を生かして、モーフィング音を用いた音楽や、音楽制作ソフト「おっきんしゃい」を用いての音楽の創作を行う。代表作は「ピアノと二台のコンピュータのための「音の織物」(1998)、オーケストラとコンピュータのための「驥尾焚き火…」(2009)、オーケストラのための「音の音」(2014)など。NTTコンピュータ音楽シンポジウム(’97、’01)、けいはんなメディアフェスティバル(’01-’04)、Media Project(’07-)他、コンピュータ音楽企画を多数実施。ICMC 1993および2003参加。2002-2009年までICMA(国際コンピュータ音楽連盟)アジアオセアニア地区理事。博士(工学)。2003年より東京電機大学教授。先端芸術音楽創作学会(JSSA)会長。




10/16(金) 東京電機大学 Media Project Vol.13_c0050810_232035.gif■古川 聖:《かたちをめぐるものがたり》(2015)(世界初演)
Kiyoshi Furukawa Narrative around form (Premiere)

  数的な構造のような直接には音楽とは関係のない音楽外構造、または既存の音楽をモデルとした構造など、いろいろなアルゴリズムを使い作曲を行ってきたが、音楽という現象とは聴覚を通した音イベントの構造認知であり、音楽、音楽作品とはつまるところ、脳の外在化、脳の認知機能が外側に飛び出たものであることに思い至った。認知論的音楽と言うと大げさだが、私たちの音楽体験自体、音楽の聴覚を通した認知の文法をアルゴリズム化することを考えた。音楽において私たちは音と音の関係を知覚し、グループ化し、抽象化し記憶する、そしてそのように作られたその記憶同士が再びが比較され、関係付けられ、組み合わされて次のレベルのグループが形成され、抽象化され記憶される…。このような様相をプログラミングすることを試みてきた。作曲家でプログラマーでもある濵野峻行と音楽という曖昧かつ、深遠な現象を知識表現することに悪戦苦闘しながら「ゲシュタルトエディター」(※)というアプリケーションとして道具化した。
  《かたちをめぐるものがたり》ではこのアプリケーションを概念の望遠鏡、つまり、単体であれば確実に認知可能な音楽的操作を自由な複雑度で敷衍、組み合わせ、認知可能性の限界、あたらしい認知の地平までをも探るための道具として使い、「聴くこと」と「書くこと」の間を行ったり来たりしながら作曲を行った。音楽という体験の不可思議さはその入り口、きっかけは単に音の形態認知なのだが、その関係性の複雑度により認知がすぐに”認知一般”ともいうべき音楽というというモダリティーに限定されないレベルに入りこんでしまうことに原因がある。つまり、私たちが考え、感じ、体に指令する脳、全的な体験、知性、記憶が蓄えてあるその脳で、同時に音楽の形態認知を行うために音楽がかくも情動的かつ深遠な体験となるのだろう。私たちの中に音楽が起こってくるとき、その始まりは音でもなく感情ともいえないほどの未分化な何かの衝動だと思う。本作品では12の音からなる長音階の中の5度関係にある音に記憶素として、短三和音を形成する音に形質素としての印をつけたりしながら音楽のモティーフをつくり、それらを全体のプロセスのなかで線的な表現の可能なクラリネットや集合音も扱うピアノへと織り込んで行った。
 (※)「ゲシュタルトエディター」は2008年以来、古川が藤井晴行、木村亮太、大村英史、濱野貴之らと開発を続けている作曲プログラムである。

古川聖 Kiyoshi FURUKAWA
  1959 年東京生まれ.ベルリン芸術大学、ハンブルク音楽大学にて尹伊桑、ジェルジ・リゲティのもとで作曲を学ぶ。スタンフォード大学で客員作曲家、ハンブルク音楽大学で助手、講師を経て、ドイツのカールスルーエのZKMでアーティスト研究員。作品は、新しいメディアや科学と音楽の接点において成立するものが多く、1997 年のZKMの新館のオープニングでは委嘱をうけて,マルチメディアオペラ『まだ生まれぬ神々へ』を制作・作曲.2009年~14年、理化学研究所客員独立主幹研究員として音楽と情動の研究を行う。2000年より東京芸術大学・先端芸術表現科教授、東京芸術大学芸術情報センター長。




10/16(金) 東京電機大学 Media Project Vol.13_c0050810_233231.jpg■喜多敏博:《クエリー・レスポンス ― ピアノとライヴ・エレクトロニクスのための》(2014)(改訂版初演)
Toshihiro Kita Query response for piano and live electronics (2014) Rev.2

  クエリー(問い合わせ)と、レスポンス(答え)は、日々の生活、社会の中で、毎日のように繰り返される。
  人から人へ、人からコンピュータへ、コンピュータからコンピュータへ。空気を介して、電気信号として、回路の中をデジタルデータが伝搬し、戻ってくる。通常は素直なレスポンスを期待しているが、時には意外な答えをもらうのも悪くない。
  本作品を設計する際、ピアノ演奏だけでも成立し、ピアノの音とそれに応える電子音響(エレクトロニクス)とがなるべく乖離しない作品にと願い設計した。エレクトロニクスにはCsoundを用いている。
  本作品は、喜多の京大電気工学科での同級生でもある大井浩明氏からの委嘱で作成したもので、2014年6月15日に大井氏により初演された。
  今回も演奏会場では、大井君の演奏に対峙して、自分のスマートフォンで電子音響用コンピュータを遠隔操作してレスポンスを引き出そうと苦闘する私がいることでしょう。

喜多敏博 Toshihiro KITA
  1967年に奈良に生まれる。京都大学大学院工学研究科博士後期課程研究指導認定退学,熊本大学工学部助手,総合情報基盤センター准教授,eラーニング推進機構教授,現在に至る。工学博士(名古屋大学,2005年)。eラーニングシステム,LMS/VLE,非線形システム,電子音楽に興味を持つ。先端芸術音楽創作学会(JSSA) 運営委員。
  ACMP(Asia Computer Music Project) 2012(台北、台湾)および NIME(New Interfaces for Musical Expression)2013(大田、韓国)にて、Webアプリケーションのアクセスログデータを実時間音響化するデモを実施。2013年8月に熊本市現代美術館ミュージックウェーブ071「ラップトップミュージックコンサート&ワークショップ」を実施。Csound Conference 2013 (Boston, USA) および 第18回JSSA研究会(東京)にて、専用アプリ不要の聴衆参加型作品"Audience's Smartphone Jam Session" を発表。"Audience's Smartphone Jam Session" の改訂版を Web Audio Conference 2015 (IRCAM & Mozilla Paris, France) と EMSAN/JSSA Day 2015 (岐阜)で発表。
  ウェブサイト http://tkita.net/


--------------
cf.
10/16(金) 東京電機大学 Media Project Vol.13_c0050810_22143862.jpg日本電子音楽協会第10回演奏会
2004年3月10日(水) すみだトリフォニーホール小ホール

水野みか子:《醒める河で》
由雄正恒:《連.弾.指.》 ~MIDIピアノとMAX/MSPによる一人のピアノ奏者のための 
●門脇治:《ペンローズタイル》
●しばてつ:《電波梅》 ~オンド・マルトノと鍵盤ハーモニカのための


by ooi_piano | 2015-10-13 04:35 | コンサート情報 | Comments(0)

Blog | Hiroaki Ooi


by ooi_piano