Messiaen en peine 煉獄のメシアン (全3回公演)

渋谷・公演通りクラシックス (東京都渋谷区宇田川町19-5、東京山手教会B1F) 全自由席3000円
予約・問い合わせ tel. 080-6887-5957 book.k-clscs[at]ezweb.ne.jp http://k-classics.net/
【第一回公演】 2016年4月17日(日) 午後6時開演(午後5時半開場)
山村雅治(朗読)+大井浩明(ピアノ)
O.メシアン:《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(全20曲、1944)
――ドン・コルンバ・マルミオン、モーリス・トエスカのテクスト朗読を伴うオリジナル原案版/東京初演
I.父のまなざし II.星のまなざし III.交換 IV.聖処女のまなざし V.子にそそぐ子のまなざし VI.その方によって万物はつくられた VII.十字架のまなざし VIII.いと高きところのまなざし IX.時のまなざし X.喜びの聖霊のまなざし XI.聖処女の初聖体拝領 XII.全能のことば XIII.降誕祭 XIV.天使たちのまなざし XV.幼な子イエスの口づけ XVI.預言者、羊飼いと東方三博士のまなざし XVII.沈黙のまなざし XVIII.恐るべき塗油のまなざし XIX.眠っていてもわたしの心は目覚めています XX.愛の教会のまなざし
【第二回公演】 2016年5月15日(日) 午後6時開演(午後5時半開場)
大井浩明(ピアノ)
O.メシアン:《鳥のカタログ》(全13曲、1956/58)
I.黄嘴鴉 II.西高麗鶯 III.磯鵯 IV.顔黒砂漠鶲 V.森梟 VI.森雲雀 VII.葭切 VIII.姫告天子 IX.欧羅巴鶯 X.腰白磯鵯 XI.鵟 XII.黒砂漠鶲 XIII.大杓鷸
O.メシアン:《庭虫喰》(1970)
【第三回公演】 2016年6月26日(日) 午後6時開演(午後5時半開場)
伊藤晴(ソプラノ)+大井浩明(ピアノ)
O.メシアン:《前奏曲集》(全8曲、1929)
I.鳩 II.悲しい風景のなかの恍惚の歌 III.軽快な数 IV.過ぎ去った時 V.夢のなかのかすかな音 VI.苦悩の鐘と告別の涙 VII.静かな嘆き VIII.風のなかの反映
O.メシアン:《天と地の歌》(全6曲、1938)
I.ミとの時間(私の妻のために) - II.沈黙の先唱句(守護天使の日のために) - III.人形ピリュールの踊り(私の幼いパスカルのために) - IV.穢れなき虹(私の幼いパスカルのために) - V.真夜中の裏表(死のために) - VI.復活(復活祭の日のために)
O.メシアン:《ハラウィ - 愛と死の歌》(全12曲、1945)
I.お前、眠っていた街よ II.こんにちは、お前、緑の鳩よ III.山々 IV.ドゥンドゥ・チル V.ピルーチャの愛 VI.惑星の反復 VII.さようなら VIII.音節 IX.階段は繰り返し言う、太陽の身振り X.愛の星鳥 XI.星のカチカチ XII.闇のなかに
オリヴィエ・メシアン(1908~1992)といえば、作曲やオルガン演奏、教育に到るまで広範囲に偉大な足跡を遺した、20世紀を代表する大音楽家である。一方、2010年5月のイヴォンヌ・ロリオ=メシアン夫人の死後に、膨大な資料がパリ国立図書館へ移管され、自由に閲覧可能となり、生前には封印されていた裏の顔の研究も進みつつある。メシアンが信奉していたカトリック教では人間誰しも、死ぬと煉獄というところに入れられる。つまり天国へ行けるか、それとも地獄に堕とされるか、神様が判決を下す間仮拘留される「清めの場」(“purgatoire”)で、生涯パリの三位一体教会のオルガン弾きとして神様に仕え、その作品の大部分を神様に捧げているかにみえるメシアンの場合でも、カトリックならこれだけは避けるわけにはいかない宿命なのだ。
第1回公演の《幼な子イエスにそそぐ20のまなざし》では、1944年のフランス国営ラジオのクリスマス番組に於ける「朗読とピアノ」での初演、というオリジナル原案に沿って、コルンバ・マルミオン「神秘の中のキリスト」とモーリス・トエスカ「降誕(12のまなざし)」の朗読が挿入される。自身も詩人・作家であり、劇団「北辰旅団」では俳優としても活躍する山村雅治(山村サロン主宰)が、テクストの翻訳ならびに朗読を担当する。
第2回公演の《鳥のカタログ》(1956/58)は、実のところ、高弟ブーレーズが3曲のピアノ・ソナタと《構造》第1巻を、シュトックハウゼンが最初の8つのピアノ曲を発表した後に書かれた作品であるため、演奏様式の選択には注意を要する。そもそもメシアンの場合、自らを作曲家=創造者とみなす意識は稀薄であり、あくまで天にまつわる神様=創造者が、天と地上との媒介の役割を果たす鳥の声などを通じ、地上における受容器(“réceptacle”)たるメシアンに下位した音たちの収集者として自らを位置づけていた。神様の音たちだからこそ、演奏者は作曲者の「採譜」に極度に忠実でなくてはならぬわけで、それはロマン主義譲りの肥大した自意識、そして自作に対する所有権の主張とは一線を画している。
第3回公演は、パリ音楽院卒業にあたり20歳の若きメシアンが「作品1」として世に問うた《前奏曲集》、最初の妻デルボスと息子パスカルの生誕に触発された《天と地の歌》、そして「トリスタン3部作」の劈頭を飾り、インカ帝国の悲恋がケチュア語で歌われる大作《ハラウィ - 愛と死の歌》、というこれまたヴォリューミーなプログラミングである。長大な旋律線、幅広い音域、中低音域の多用など、「クンドリー、ブリュンヒルデ、サロメ、アラベラを楽々と歌える」ドラマティック・ソプラノのための指折りの難曲に、現代オペラでも目覚しい活躍を見せる俊英、伊藤晴が挑む。グルノーブル郊外サン・テオフレに眠るメシアンの墓碑には、《ハラウィ》から「愛の星鳥」の一節が刻まれていると云う。
前衛ピアノ音楽を得意とする大井浩明とメシアンの組み合わせは意外だが、2000年パリの第1回メシアン国際ピアノコンクールの入賞者であり、国内でもシャルル・デュトワ指揮N響定期での《神の臨在のための3つの小典礼》や、沼尻竜典指揮東京シティ・フィルとの《異国の鳥たち》のテレビ放映を御覧になった方も多いことだろう。今、メシアンの音楽が、作曲家とその取り巻き連中の軛(くびき)を離れ自らの生を生き始めようとしている。巨匠の他界から四半世紀、棺を蓋うにはまだ早い。Vive Messiaen! (三輪与志)
山村雅治 (朗読) Masaharu YAMAMURA, recitation
1952年芦屋市生まれ。法政大学文学部英文学科卒業。在学中に長詩《哭礼記》を「現代詩手帖」誌に発表、詩人としてデビュー。舞台歴は、6歳での能舞台での仕舞に遡り、現在では劇団「北辰旅団」で活動を重ねている。1986年、芦屋市に多目的ホール「山村サロン」を創設、音楽・文学・美術・演劇等、ジャンルを横断する多彩な芸術活動をプロデュースしている。著書に、『マリア・ユージナがいた』(1991年)、小説『G』(2冊本、1993年)、『宗教的人間』(新装版 2004年)、『芦屋私記』(2007年)、初期詩篇集『哭礼記』(2013年)(いずれもリブロ社)、『自録「市民立法」』(1999年、藤原書店)などがある。公式サイト http://www.y-salon.com/
伊藤晴 (ソプラノ) Hare ITO, soprano
武蔵野音楽大学大学院修了。(公財)日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第25期修了。第9回藤沢オペラコンクール第2位、第82回日本音楽コンクール入選。パリ地方国立音楽院(CRR)コンサーティスト・ディプロマ課程修了。日本オペラ連盟文化庁新人育成公演《修道女アンジェリカ》アンジェリカ、 武蔵野音楽大学本公演《コジ・ファン・トゥッテ》フィオルディリージ、 文化庁次代を担う子供の文化芸術体験事業《魔笛》パミーナ、山形交響楽団《ヘンゼルとグレーテル》グレーテル、藤原歌劇団創立80周年記念公演《ラ・ボエーム》ムゼッタ、小澤征爾音楽塾IIIV子どものためのオペラ《子供と魔法》安楽椅子&こうもり、トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ《フィガロの結婚》スザンナ、コンヴィチュニー・演出アカデミーinびわ湖《ラ・ボエーム》ムゼッタ等の他、現代オペラでは丹波明《白峯》待賢門院、石黒晶《みすゞ》タイトルロール、水野修孝《天守物語》亀姫等に出演。昨年(2015年)はセイジ・オザワ松本フェスティバル子どものための音楽会《第九》ソリストに抜擢され、ロームシアター京都竣工式において同ソリストを小澤征爾指揮の下務める。藤原歌劇団団員。公式サイト http://www.hareito.com/




渋谷・公演通りクラシックス (東京都渋谷区宇田川町19-5、東京山手教会B1F) 全自由席3000円
予約・問い合わせ tel. 080-6887-5957 book.k-clscs[at]ezweb.ne.jp http://k-classics.net/

山村雅治(朗読)+大井浩明(ピアノ)
O.メシアン:《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(全20曲、1944)
――ドン・コルンバ・マルミオン、モーリス・トエスカのテクスト朗読を伴うオリジナル原案版/東京初演
I.父のまなざし II.星のまなざし III.交換 IV.聖処女のまなざし V.子にそそぐ子のまなざし VI.その方によって万物はつくられた VII.十字架のまなざし VIII.いと高きところのまなざし IX.時のまなざし X.喜びの聖霊のまなざし XI.聖処女の初聖体拝領 XII.全能のことば XIII.降誕祭 XIV.天使たちのまなざし XV.幼な子イエスの口づけ XVI.預言者、羊飼いと東方三博士のまなざし XVII.沈黙のまなざし XVIII.恐るべき塗油のまなざし XIX.眠っていてもわたしの心は目覚めています XX.愛の教会のまなざし
【第二回公演】 2016年5月15日(日) 午後6時開演(午後5時半開場)
大井浩明(ピアノ)
O.メシアン:《鳥のカタログ》(全13曲、1956/58)
I.黄嘴鴉 II.西高麗鶯 III.磯鵯 IV.顔黒砂漠鶲 V.森梟 VI.森雲雀 VII.葭切 VIII.姫告天子 IX.欧羅巴鶯 X.腰白磯鵯 XI.鵟 XII.黒砂漠鶲 XIII.大杓鷸
O.メシアン:《庭虫喰》(1970)
【第三回公演】 2016年6月26日(日) 午後6時開演(午後5時半開場)
伊藤晴(ソプラノ)+大井浩明(ピアノ)
O.メシアン:《前奏曲集》(全8曲、1929)
I.鳩 II.悲しい風景のなかの恍惚の歌 III.軽快な数 IV.過ぎ去った時 V.夢のなかのかすかな音 VI.苦悩の鐘と告別の涙 VII.静かな嘆き VIII.風のなかの反映
O.メシアン:《天と地の歌》(全6曲、1938)
I.ミとの時間(私の妻のために) - II.沈黙の先唱句(守護天使の日のために) - III.人形ピリュールの踊り(私の幼いパスカルのために) - IV.穢れなき虹(私の幼いパスカルのために) - V.真夜中の裏表(死のために) - VI.復活(復活祭の日のために)
O.メシアン:《ハラウィ - 愛と死の歌》(全12曲、1945)
I.お前、眠っていた街よ II.こんにちは、お前、緑の鳩よ III.山々 IV.ドゥンドゥ・チル V.ピルーチャの愛 VI.惑星の反復 VII.さようなら VIII.音節 IX.階段は繰り返し言う、太陽の身振り X.愛の星鳥 XI.星のカチカチ XII.闇のなかに
オリヴィエ・メシアン(1908~1992)といえば、作曲やオルガン演奏、教育に到るまで広範囲に偉大な足跡を遺した、20世紀を代表する大音楽家である。一方、2010年5月のイヴォンヌ・ロリオ=メシアン夫人の死後に、膨大な資料がパリ国立図書館へ移管され、自由に閲覧可能となり、生前には封印されていた裏の顔の研究も進みつつある。メシアンが信奉していたカトリック教では人間誰しも、死ぬと煉獄というところに入れられる。つまり天国へ行けるか、それとも地獄に堕とされるか、神様が判決を下す間仮拘留される「清めの場」(“purgatoire”)で、生涯パリの三位一体教会のオルガン弾きとして神様に仕え、その作品の大部分を神様に捧げているかにみえるメシアンの場合でも、カトリックならこれだけは避けるわけにはいかない宿命なのだ。
第1回公演の《幼な子イエスにそそぐ20のまなざし》では、1944年のフランス国営ラジオのクリスマス番組に於ける「朗読とピアノ」での初演、というオリジナル原案に沿って、コルンバ・マルミオン「神秘の中のキリスト」とモーリス・トエスカ「降誕(12のまなざし)」の朗読が挿入される。自身も詩人・作家であり、劇団「北辰旅団」では俳優としても活躍する山村雅治(山村サロン主宰)が、テクストの翻訳ならびに朗読を担当する。
第2回公演の《鳥のカタログ》(1956/58)は、実のところ、高弟ブーレーズが3曲のピアノ・ソナタと《構造》第1巻を、シュトックハウゼンが最初の8つのピアノ曲を発表した後に書かれた作品であるため、演奏様式の選択には注意を要する。そもそもメシアンの場合、自らを作曲家=創造者とみなす意識は稀薄であり、あくまで天にまつわる神様=創造者が、天と地上との媒介の役割を果たす鳥の声などを通じ、地上における受容器(“réceptacle”)たるメシアンに下位した音たちの収集者として自らを位置づけていた。神様の音たちだからこそ、演奏者は作曲者の「採譜」に極度に忠実でなくてはならぬわけで、それはロマン主義譲りの肥大した自意識、そして自作に対する所有権の主張とは一線を画している。
第3回公演は、パリ音楽院卒業にあたり20歳の若きメシアンが「作品1」として世に問うた《前奏曲集》、最初の妻デルボスと息子パスカルの生誕に触発された《天と地の歌》、そして「トリスタン3部作」の劈頭を飾り、インカ帝国の悲恋がケチュア語で歌われる大作《ハラウィ - 愛と死の歌》、というこれまたヴォリューミーなプログラミングである。長大な旋律線、幅広い音域、中低音域の多用など、「クンドリー、ブリュンヒルデ、サロメ、アラベラを楽々と歌える」ドラマティック・ソプラノのための指折りの難曲に、現代オペラでも目覚しい活躍を見せる俊英、伊藤晴が挑む。グルノーブル郊外サン・テオフレに眠るメシアンの墓碑には、《ハラウィ》から「愛の星鳥」の一節が刻まれていると云う。
前衛ピアノ音楽を得意とする大井浩明とメシアンの組み合わせは意外だが、2000年パリの第1回メシアン国際ピアノコンクールの入賞者であり、国内でもシャルル・デュトワ指揮N響定期での《神の臨在のための3つの小典礼》や、沼尻竜典指揮東京シティ・フィルとの《異国の鳥たち》のテレビ放映を御覧になった方も多いことだろう。今、メシアンの音楽が、作曲家とその取り巻き連中の軛(くびき)を離れ自らの生を生き始めようとしている。巨匠の他界から四半世紀、棺を蓋うにはまだ早い。Vive Messiaen! (三輪与志)
山村雅治 (朗読) Masaharu YAMAMURA, recitation

伊藤晴 (ソプラノ) Hare ITO, soprano



