![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_425386.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_425386.jpg)
【ポック[POC]#29】
2016年12月23日(金・祝)18時開演(17時半開場)
松涛サロン(東京都渋谷区松濤1-26-4)
JR渋谷駅徒歩8分、井の頭線神泉駅徒歩3分
3000円(全自由席)
[三公演パスポート8000円] 12/23(バルトーク)+1/22(ストラヴィンスキー)+2/19(ソラブジ)
【お問合せ】 合同会社opus55 Tel 050(5849)0302 (10~18時/水木休) Fax 03 (3377)4170 (24時間受付) http://www.opus55.jp/
チラシ表側(pdf) チラシ裏側(pdf)
ベラ・バルトーク(1881-1945):
ラプソディ Op.1 Sz.26 (1904) 21分
Mesto/Adagio - Piùvivo - Presto
14のバガテル Op.6 Sz.38 (1908) 24分
I.Molto sostenuto - II.Allegro giocoso - III.Andante - IV.Grave 〈俺が駆け出しの牛飼いだった頃...〉 - V.Vivo 〈ああ、家の前で...〉 - VI.Lento - VII.Allegretto molto capriccioso - VIII.Andante sostenuto - IX.Allegretto grazioso - X.Allegro - XI.Allegretto molto rubato - XII.Rubato - XIII.Lento funebre 〈彼女は死んだ...〉 - XIV.Valse, Presto 〈恋人が踊っている...〉
(休憩10分)
東野珠実:《星筐(ほしがたみ) IV》(2016)(委嘱新作・世界初演)
ベラ・バルトーク:アレグロ・バルバロ Sz.49 (1911) 3分
3つの練習曲 Op.18 Sz.72 (1918) 8分
I.Allegro molto - II.Andante sostenuto - III.Rubato/Tempo giusto
舞踏組曲 Sz.77 (1925) 17分
I.Moderato - II.Allegro molto - III.Allegro vivace - IV.Molto tranquillo - V.Comodo - VI.Finale; Allegro
(休憩10分)
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_6203012.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_6203012.jpg)
I.Allegro moderato - II.Sostenuto e pesante - III.Allegro molto
戸外にて Sz.81 (1926) 15分
I.笛と太鼓で - II.舟歌 - III.ミュゼット - IV.夜の音楽 - V.狩
弦楽四重奏曲第4番 Sz.91 〔全5楽章〕(1928/2016、米沢典剛によるピアノ独奏版・世界初演) 23分
I.Allegro - II.Prestissimo, con sordino - III.Non troppo lento - IV.Allegretto pizzicato - V.Allegro molto
[Péter Bartók(1924- )による最終校訂エディション(1991/2009)使用]
東野珠実:《星筐IV Hoshigatami IV –Tokyo 2016.12.21.19:44 for Piano》 (2016、委嘱新作初演)
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_4315165.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_4315165.jpg)
今回、大井浩明氏のピアノソロコンサートプロジェクト”POC”の第29回公演タイトルにちなんで、「先駆的」という創作のリクエストをいただき、古今東西の楽譜というメディアについて思考を巡らし、私なりに当代のアプローチを行うこととしました。
さて、先に“響の星座”という言葉を用いましたが、奈良で発掘されたキトラ古墳に記される星宿のように、古来、人々は無数の星々に意図的な縁を読み取り、天と人とのつながりに特別な思いを抱いています。かく言う私は古代より宇宙を表す音楽である雅楽の世界におりますが、本作のアイデアは、雅楽に出会うずっと以前、幼少期の記憶にさかのぼります。それは、まだ文字も書けない頃に初めて覚えた五線譜という記号の世界、そして、父の運転する自動車の窓から仰ぎ見る星空にいつも掛かっていた電線です。(身長100cmの視線は車窓を仰いで常に天空に向かっているのです (^_^)。すなわち、星空に向かって初めて覚えた“見立て”の技と、思考のフィルターを重ねて物事を観る楽しさ、喜びの感覚です。こんなことは皆が経験する些細な遊びですが、本作では、その遊びを当代のメディアに載せ替えて楽しんでみようという趣向です。
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_4325525.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_4325525.jpg)
演奏とは、一種、奏者による音響情報処理の結果です。しかし、それは客観的に数値化された事象を処理する機械的な作業とはまるで異なり、奏者の技量や経験、思考によって常に新たに生み出される時間の造形です。一般に楽譜という時系列に基づいたスクロール系の表記法に対して、一面の地図を広げて冒険に乗り出すような、さらには宇宙のように、図上にまだ表されていないような発見のチャンスを期待させるような楽譜があったらとの思いを巡らせます。
さて、星図で設定した冬至は、天文学上は太陽黄経が270度になる瞬間を表し、いうまでもなく古代より様々な民族が重要視する暦の起点です。奏者が見出す音の星座を聴覚で観察し、時を満たす音の宇宙のなかで、おのおの“こころの筐(かたみ)に星をあつめて”いただければ幸いです。(東野珠実)
東野珠実 Tamami TONO, composer
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_4333350.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_4333350.jpg)
代表作:雅楽のための『星筺(ほしがたみ)』、国立劇場委嘱『月香楽』、JAXA宇宙文化プロジェクト『飛天』、東京国際フォーラム開館記念創作ミュージカル『モモ』、石川県白山市立白嶺小中学校校歌『水と光と大地』、浄土真宗本願寺派伝灯奉告法要音楽等。
CD『祝賀の雅楽』、『Breathing Media ~調子~』、雅楽古典曲笙調子全曲録音(平成23年度文化庁芸術祭参加作品)、John Cage『Two3,Two4』世界初全曲録音ほか。
音楽史の中のバルトーク ~後世への影響を中心に ───野々村 禎彦
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_639874.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_639874.gif)
今日の視点からは、彼はまず作曲家である。ドイツ圏では「3大B」はJ.S.バッハ、ベートーヴェンとブラームスないしブルックナーだが、普遍的視点に立てば3人目はむしろバルトークが相応しい、と通俗的にも言われる。鍵盤楽器のための練習曲に注力した点ではバッハ、弦楽四重奏曲に注力した点ではベートーヴェンの後継者であり、姓がBで始まる(ハンガリー語の姓名の順は日本語と同じ)有名な作曲家というだけの19世紀後半のふたりとは格が違う、ということだ。ただし、「3大B」という発想自体がドイツ音楽影響圏に特有のものであり、このような見方は、米国や日本のようなこの文化圏の周縁諸国が、彼に「周縁代表」を仮託した結果なのだろう。
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_640769.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_640769.gif)
ただし、彼の意識の中では作曲と民謡研究は不可分の芸術行為であり、それと比べたらピアノ演奏や教育は生計を立てる手段にすぎなかった。1934年に科学アカデミー研究員として民謡研究に専念する職が提示されると、彼は喜んでピアノ科教授を辞している。その真意は、ナチスドイツの「頽廃音楽を排し国民音楽を称揚する」という方針に従って、民俗音楽研究を強化する一方で、不穏分子を音楽教育から遠ざけることだったのだが… 彼は祖国とナチスドイツとの関係が強まるにつれて亡命を考え始め、1939年に母を看取ってから亡命先に米国を選ぶ決め手になったのは、コロンビア大学の客員研究員としてハーヴァード大学の民俗音楽資料を分析する職が見つかったことだった。
*********
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_6405938.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_6405938.gif)
今日では20世紀を代表するオペラのひとつに数えられる《青髯公の城》は、作曲の動機となったオペラのコンクールには入賞すらできず、コダーイと始めた新ハンガリー音楽協会のコンサートも、演奏水準も聴衆の反応も惨憺たるもので、早々に活動を休止した。失意の連続に作曲への意欲は失われ、ピアノ演奏と教授以外の時間は民謡収集と分析に専念する日々が続く。民謡研究を進めるうち、ハンガリー周縁部に残るルーマニア民謡やスロヴァキア民謡の方が、学問的にも音楽的にも興味深いことに気付き、あくまでハンガリー民謡に研究対象を絞ろうとするコダーイとの違いが鮮明になってきた。多地域の民謡の比較を進める中で,、1913年にはアルジェリアまで足を伸ばしている。だが、このような調査は第一次世界大戦が始まると困難になり(さらに大戦が終わると、ハンガリーは周縁部の領土の大半を失ったためより困難になり)、彼は作曲に復帰する。
《青髯公の城》は彼の創作史では突出して尖鋭的な作品のひとつで、《かかし王子》(1914-17)、《ピアノ組曲》(1916)、弦楽四重奏曲第2番(1915-17) 等よりも後の作品にすら聴こえる。だが、《青髯公の城》初演と同年の《3つの練習曲》(1918) は一転して極めて無調的であり、無調以降のシェーンベルク作品研究を窺わせる。彼は民謡研究と同じスタンスで同時代の音楽も収集・分析し、創作に生かした。《中国の不思議な役人》(1918-19/24) は《練習曲》の延長線上にストラヴィンスキー《春の祭典》の色彩とリズムの実験、さらにディーリアス《人生のミサ》の声楽書法も加え、この時期のモダニズムの最良の成果が凝縮されている。2曲のヴァイオリンソナタ(1921, 1922) も《練習曲》に連なる作品だが、今度は同一編成のシマノフスキ《神話》を参照している。このソナタ第1番のパリ初演にはラヴェル、シマノフスキ、ストラヴィンスキー、ミヨー、オネゲル、プーランクらが顔を揃え、バルトークも彼らと並ぶヨーロッパを代表する作曲家のひとりだと認知された。
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_6415421.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/13/10/c0050810_6415421.gif)
続けてヴァイオリンとピアノのための《ラプソディ》2曲(1928)、《カンタータ・プロファーナ》(1930)、ピアノ協奏曲第2番(1930-31) を書いたが、長年構想を暖めていた《カンタータ》以外はいずれもピアニストとしてのレパートリーを増やすことを意図していた(2曲のヴァイオリンソナタは技術的にも内容的にも高度で演奏者もプログラムも選ぶため、アンコールでも取り上げられる程度の曲が必要だった)。これは彼のピアニスト=作曲家としての名声が高まり、演奏機会が増えたことを反映している(ピアノ協奏曲の初演はいずれもフランクフルトで、第1番はフルトヴェングラー指揮、第2番はロスバウト指揮)。また民謡編曲によるヴァイオリン二重奏練習曲集《44の二重奏曲》(1931) もこの時期に書かれ、《ミクロコスモス》の作曲も1932年から再開した、
彼はストラヴィンスキーのように日課として作曲するタイプではなく、意欲の涌いた時に集中的に行うタイプだが、だからこそコツコツ積み上げる民謡分析の作業とは相補的で相性が良かった。彼の創作意欲に次に火が点くのは1934年、晴れてピアノ科教授を辞して民謡分析が本業になった時だ。弦楽四重奏曲第5番(1934)、《弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽》(1936)、《2台のピアノと打楽器のためのソナタ》(1937) と、再び代表作が並ぶ。特に後2作を(後に《ディヴェルティメント》(1939) も)委嘱したパウル・ザッハーは、この時期の彼の創作を支えた人物である。ただしこの背景には、ナチスドイツが「頽廃音楽」の排斥を進めたため、中立国スイスでバーゼル室内管弦楽団を率いるザッハーからの委嘱の比重が相対的に高まったことがある。
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_703453.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/19/10/c0050810_703453.gif)
だが、この期に及んで米国の音楽家たちが援助の手を差し伸べた。自尊心の高い彼は施しを嫌ったが、ブダペスト音楽院の後輩で米国社会に適応したライナーとシゲティは、ボストン交響楽団常任指揮者クーセヴィツキーを介し、新作委嘱の前渡金として当座の資金を渡すことに成功した。こうして生まれた《管弦楽のための協奏曲》(1943) は、顧みられることが減った新古典主義後期の華やかな作品群中では例外的に、今日でも20世紀音楽トップクラスのポピュラリティを保っている。久々に大管弦楽作品を書き上げて自信を取り戻し、メニューインの委嘱で書いた無伴奏ヴァイオリンソナタ(1944) は最後の代表作になった。シャリーノ《6つのカプリース》(1976) をはじめ、20世紀においても無伴奏ヴァイオリン曲の大半はパガニーニやイザイの流れを汲むヴィルトゥオーソ小品だが、この作品はJ.S.バッハ直系の潜在ポリフォニー上に緻密に構築された大曲であり、中期を特徴付ける特殊奏法と後期を特徴付ける微分音が現代的な色彩を添えている。
![12/23(金・祝) バルトーク主要ピアノ曲集+東野珠実新作 (その1) [増補改訂]_c0050810_712328.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/19/10/c0050810_712328.gif)