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■2005/09/29(木) That’s made for you and me, ミッキー井上 ヘイ!ハイ!ホウ!


■2005/09/29(木) That’s made for you and me, ミッキー井上 ヘイ!ハイ!ホウ!_c0050810_23501187.jpgI.クセナキス:ピアノと管弦楽のための《シナファイ》(1969)
指揮:井上道義、新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会
1996年7月4日 東京文化会館 ライヴ録音

●Windows Media ストリーミング 
●Real Player ストリーミング
(14分31秒)





 ネットでのストリーミング公開を御快諾下さったマエストロ井上道義氏、ならびに、財団法人新日本フィルハーモニー交響楽団様の寛大なる御英断に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。


 それにしても、井上氏の指揮の凶々しさ(笑)。単なる「サ~~」というホワイト・ノイズの箇所も、彼が目を剥きながら長い手足でワナワナ振ると、「・・・シャぁアぁアぁぁあぁア――・・・・・・っッッ!!!」といった、瘴気を撒き散らすような響きになっております。作品前半に聞かれる至難なクラリネットの重音奏法は、当時首席であった鈴木良昭氏によるものです。


  この時はまず、「新日で何かコンチェルトをしよう。何が弾きたい?何でもいいよ」という電話をマエストロからもらい、「えっ、本当に何でもいいんですか? じゃあ、らふまにのふの3ばーん!」と即答したところ、寛大にも「オメェがそれでいいなら、俺はいいぜ。」と言われ、そうすると当方も良心の呵責というものが疼いてしまい、「や、や、やっぱり現代曲っスかねぇ・・・?」。 ということで、一番譜読みが面倒臭そうで若いうちにやっておかないと気力・体力が持たなさそうな、《シナファイ》に決まったのでした。
  事務局からは「ソリストの方には品川プリンスを御用意しております」と連絡を頂いたのですが、「宿泊場所は自分で見つけますのでホテル代下さい」と言って、泊まりに行ったのが今はなき東大駒場寮の蒲団部屋一泊200円。そこで学部同窓生の某脱会信者に数年ぶりに遭遇。因みに、私が井上道義氏と初めて「共演」したのは大学アマオケでのマーラー第5番でした。そこの同期でヴァイオリンを弾いていたのが、森達也が2本もドキュメントを撮った「A」氏。
  新日フィル定期のあとは千駄木の野村誠邸に転がり込み、鈴木淳史と足立智美がオーガナイズした六本木のライヴで、川島素晴・木ノ脇道元らと野村のピアニカ四重奏を弾いたりしました。河合拓始氏は自作をギターで弾き語りしてたかな。
  翌年認知症に倒れるクセナキス本人が、この時の録音を褒めておいてくれたおかげで、数年後にCD録音の話が来ました。今聞いてみても我ながら俯仰天地恥ずる事なき演奏だと思われますが(笑)、当時正面から評価してくれたのは確か野々村禎彦と作曲家のみで、どこかの音楽雑誌には「前半の現代曲は、ガマン・ガマンであった。」などと書かれる始末。一方現代曲の場合、私が酷い演奏をした時でも何故だか褒められることもありますので、要するに「拍手はつねに多すぎるか少な過ぎるかのどちらかだ」、ということですね。


■2005/09/29(木) That’s made for you and me, ミッキー井上 ヘイ!ハイ!ホウ!_c0050810_7423274.jpg第150小節(上掲の演奏では5分17秒~)からのピアノ独奏部。第155小節(5分30秒)を経て、第161小節(5分44秒)で木管群の吹き流しが入って来ます。しかしこんなグチャグチャのところで、よく的確にキューが出せるなあ。

■2005/09/29(木) That’s made for you and me, ミッキー井上 ヘイ!ハイ!ホウ!_c0050810_7421189.jpg



■2005/09/29(木) That’s made for you and me, ミッキー井上 ヘイ!ハイ!ホウ!_c0050810_23535874.jpg終わり近く(13分07秒~)のピアノ独奏パート。ここが最も苦労させられ、且つあまり報われない箇所かも。
  既にCDなどでこの作品を御存知の方には、後半でピアノ独奏と管弦楽が延々と交互に対比されたり、作品のラスト20秒で初めて打楽器が登場し、ピアノと掛け合って唐突に作品が終了する、ということは所与の了解事項となっていることでしょう。しかしこの作品を御存知ではなく、ラフマニノフのような華やかなエンディングを持つ「ピアノ協奏曲」を期待なさる向きには、お聞きになって肩透かしを喰らったような印象を持たれるのでは無いでしょうか(初めてダグラス・マッジのLPを聞いた時の私がそうでした)。
  《コンタクテ》でも《レポン》でも、「ああ、もうすぐ曲が終わるんだな」という、明らかに御告げの鐘のようなものが聞こえてきますが、クセナキスには一切ありません。(そもそも《レポン》の終わり方は、ベルクの室内協奏曲のパクリだと思うけど。)「期待」をはずすような作品に初めて出遭った時、我々は直ちにその曲に正当な評価を与えることが出来るのでしょうか。
Commented by tokunaga at 2005-10-02 13:36 x
TBとコンサート案内ありがとうございました。現代音楽ってマイナーとかマニアックとかいう以前に情報が圧倒的に不足しているので、そのような裏話が聞けて音も聴けてしまうというのは大変ありがたいです。駒場寮がそんな風に文化貢献していたとは・・・
Commented by naka at 2005-11-02 01:32 x
はじめまして、極端大仏率からたどってきました。
品川プリンスの料金で駒寮にお泊りになった事以上に、
駒寮に200円払うんだったことの方にびっくりしてしまいました。
(主題とほとんど関係無いコメント、、)
Commented by ooi_piano at 2005-11-02 11:36
いや、2階の寮監室みたいなところに行ったら誰もいなかったので、その200円も払ってな(略
by ooi_piano | 2005-09-29 23:05 | Comments(3)

12月7日(土)〈暴(あら)ぶるアルバン・ベルク〉


by ooi_piano