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3/24(木)レーガー主要ピアノ作品 + 林加奈新作 (2022/03/10 update)


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大井浩明(ピアノ独奏)
松濤サロン(東京都渋谷区松濤1-26-4)
全自由席 5000円
〈要予約〉pleyel2020@yahoo.co.jp (エッセ・イオ)
チラシpdf 


【最終回】2022年3月24日(木)19時開演(18時30分開場) 〈レーガー主要ピアノ作品〉

●F.リスト(1811-1886): 《B-A-C-Hの主題による幻想曲とフーガ S.529》(1871) 11分


■M.レーガー:《J.S.バッハの昇天祭カンタータ「ただキリストの昇天にのみ」 BWV 128-4 〈主の全能は計り知れず〉の主題による14の変奏曲とフーガ ロ短調 Op.81》(1904) 30分
 Thema: Andante - I. L‘istesso tempo - II. Sempre espress. ed assai legato - III. Grave assai - IV. Vivace - V. Vivace - VI. Allegro moderato - VII. Adagio - VIII. Vivace - IX. Crave e sempre molto espressivo - X. Poco vivace - XI. Allegro agitato - XII. Andante sostenuto- XIII. Vivace - XIV. Con moto - Fuge: Sostenuto

  (休憩)

●林加奈(1973- ):《そっかー》(2022、委嘱初演) 6分

■M.レーガー:《G.P.テレマン「食卓の音楽」第3集序曲〈メヌエット〉の主題による23の変奏曲とフーガ 変ロ長調 Op.134》(1914) 31分
  Thema: Tempo di Minuetto - I. L‘istesso Tempo - II. L‘istesso Tempo - III. L‘istesso Tempo - IV. L‘istesso Tempo - V. Non troppo vivace - VI. Non troppo vivace - VII. Quasi Tempo primo - VIII. Tempo primo - IX. Non troppo vivace - X. Quasi Adagio - XI. Quasi Adagio - XII. Poco Vivace - XII.I Tempo primo - XIV. Meno vivace - XV. Andante - XVI. Adagio - XVII. Poco Andante - XVIII. Tempo primo - XIX. Poco vivace - XX. Poco vivace - XXI. Vivace - XXII. Vivace - XXIII. Poco Andante Molto Adagio (Überleitung) - Fuge: Vivace con spirit



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林加奈:ピアノフォルテのための《そっかー》(2022)

  最近しょっちゅう言っている言葉が「そっかー」です。自分は聞くよりしゃべっているような気もしていましたが、今は、人生の中で人の話を聞く時期みたいなものなのかもしれないです。日々の暮らしが「そっかー」を主軸とした会話で満ちているその様子を、音のつながりや重なりといった、フォルテピアノのおしゃべり感に託しました。
  曲は、2種類の師弟関係と2種類の親子関係で構成されています。友人関係が構成に組み込まれなかったのは、作曲の時期がコロナ禍だったことが影響しています。出かけることをだいぶ自粛しているので、家族間と仕事で出会う人とのおしゃべりはあっても、仕事とかは抜きの友人関係でたっぷりおしゃべりする機会はぐっと減りました。話す相手が変わると随分おしゃべりのトーンが変わるものだなあと改めて思います。
  レーガーが現代に生きていて、自分と友達だったりして、おしゃべりする機会があったら、自分はきっとたくさんの「そっかー」を発していることでしょう。(林加奈)


林加奈 Kana HAYASHI, composer
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  アーティスト(音楽家・美術家・紙芝居師)。東京生まれ。女子美大付属高校、東京藝大絵画科油画専攻卒、同大学院修了。在学中から併行して音楽活動も開始する。鍵盤ハーモニカ・おもちゃ楽器演奏・即興歌・音遊びなどでソロや様々なグループで演奏活動やワークショップを行う。絵から発想した物語に音楽や実演を加えた紙芝居パフォーマンスや「絶叫紙芝居」なども展開しアーティストのみならず子どもや学生や知的障害者など様々な人たちとのコラボレーションにより総合芸術作品を作るプロジェクトを数多くプロデュースする。アクリル画・油画・線画などでの展覧会や雑誌のイラストなども手がける。
  作曲作品に、鍵ハモ五重奏のための《いかにしてカレー》(2001)、《犬が行く》(2003)、マリンバ/鍵ハモ/ピアノのための《好転反応》(2006)、フォルテピアノのための《好転反応 II》(2006)等。2006年NHK教育テレビの音楽番組「あいのて」の挿入歌として1年間放映された「ワニバレエ」など歌手としても活動。演劇プロデュースユニット Moratorium Pantsメンバー。京都女子大、京都精華大非常勤講師を歴任。著書に「創造性を育む 音楽あそび・表現あそび」(共著・音楽之友社)「音・リズム・からだ」(共著/民衆社)。 




レーガー概観―――本郷健一

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  1910年代、旧世界は第一次大戦を断層として瓦解した。音楽もまた時代と軌を一にし、古い響きを捨てようとした。
  パリでは有力な作曲家たちが競ってバレ・リュスに曲を提供したが、その斬新さゆえ、時には大きな物議を醸した。1913年のストラヴィンスキー『春の祭典』初演時の騒動は今なお語り草である。音楽の破天荒なリズムと激しい不協和音が聴衆の嘲笑と怒りの元となった騒ぎだったらしい。
  ストラヴィンスキーは後年、面白いことを言っている。「不協和音はそれだけで独立したものとなったわけでありまして、もうなにも他の和音を準備したり、予告したりするものではなくなったのであります」 「音楽の磁極はもはや狭い意味での調性組織の中心点には存在しなくなっております。・・・すなわち私たちは長短両調が絶対的な価値を持っているなどとはもはや信じないのであります。なぜならこの調性組織はたんに、音楽学者のいわゆるハ音の上に立つ音階なるものに基づいているにすぎないからであります」。
  こう述べるに当たりストラヴィンスキーが引き合いに出すのは、シェーンベルクだ。「今までに彼の作品はしばしば烈しい反対や、嘲笑の的になっております。しかし・・・シェーンベルクは自分にふさわしい音楽の組織を用いているのでありまして、彼はその音楽組織の内容ではまったく論理的で、つじつまがあっております」。
  そのシェーンベルクが重視した同時代の作曲家が、マックス・レーガーである。
  1918年から21年にかけて113回にわたり開催した〈音楽の私的演奏会〉で、レーガーの作品を23曲、延べ62回とり上げている。同シリーズの中でシェーンベルク自身のものが13作、延べ31回演奏されたのに比べても段違いに多い。シェーンベルクがレーガーに大きな意義を見出していたことを、この数字は物語っている。

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  シェーンベルクは作品10以降、自作に「調」を記しておらず、伝統から離れる姿勢を前面に打ち出していたと言える。一方、レーガーは終生、自作に「調」を明記していた。作品番号を付した最後の作品であるクラリネット五重奏曲Op.146も、「イ長調」をうたっている。
  1896年、レーガーはオルガン独奏曲《組曲第1番 ~J.S.バッハの亡き魂に Op.16》を、ブラームスに送る。ブラームスは好意あふれる返信をしたため、その後二人は写真を交換した。同年、ブラームスは作品番号を付した最後の作品、オルガン独奏曲《11のコラール変奏曲 Op.122》を書いたが(作曲者の死後1902年に出版)、同じカテゴリの作品ながら、ブラームスの平板な書きぶりに比べ、23歳のレーガーが書いた組曲は一曲一曲を壮麗な音楽に仕立てていて、翌年には死去する巨匠の来し方と、次代の作曲家の行く末のあいだの、くっきりした陰影を見せつけている。
  レーガーのオルガン書法は、2年後の1898年、同い齢の名オルガニスト、カール・シュトラウベと出会うことによって深化した。1903年までに、レーガーはシュトラウベの演奏需要に応じ、オルガンのための作品を26曲書いている。主要な創作カテゴリであるオルガン曲(全43曲)の半数以上を、この時期に集中的に作曲した事になる。

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  シェーンベルクが十二音技法で「調」からの解放を目指したのとは異なり、レーガーには結局「調」から離れる考えはなかった。1903年に著した《転調学習への補遺 Beiträge zur Modulationslehre》 では、プロかアマチュアかを問わず音楽を学ぶ人に、一つの調からあらゆる調への転調方法を、古典的なカデンツに倣った譜例や解説で示した。方法は全部で100挙げてあり、うち入口となるハ長調に対しては、(異名同音調を含め)40を示している。
  これが実際、レーガーの作曲に欠かせない技術にもなっていた。自在すぎて把握しにくい転調や、ときにデュナーミクの激しい落差を叩きつける書法などが原因したものか、レーガー作品への理解は得られにくかった。「曖昧模糊としたものに多くの労力を費やし苦痛を感じ続けることに価値があるとは思えない。しかし、火曜日の夜に計り知れない情熱を込めて演奏された、マックス・レーガーの⦅トリオ Op.102》という名の奇怪な作品を見ても明らかだが、近頃の音楽とはそんな類のものだ」(NYサン紙、1908年)。
  それでも、1912年作の《マリアの子守歌 Maria Wiegenlied op.76-52》が、出版するや10万部を売り上げるベストセラーになったりもし、彼は決して売れない作曲家ではなかった。指導者としての生活も多忙を極め、1905年からはミュンヘン王立音楽院で、1907年からはライプツィヒ音楽院で、作曲法の教鞭をとった。1911年からは、かつてハンス・フォン・ビューローが君臨していたマイニンゲン宮廷管弦楽団の音楽監督となり、「一ヶ月のうち25回別のベッドで眠る」、つまり演奏旅行でほぼ毎日宿泊先が違ったほどの多忙な日程をこなした。宮廷楽団での経験は彼の管弦楽創作を豊かにし、1913年までに5作、および後期ロマン派的ジャンルである管弦楽伴奏つき声楽曲4作を成さしめている。
  無理がたたったのだろう、1914年3月、ハーゲンでの演奏会のあと、レーガーは卒中の発作に倒れた。マイニンゲンでの職も、この年に辞すこととなった。健康の回復をはかりながら作曲したもののひとつが、《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ Op.132》(管弦楽版とピアノ版)である。
  1914年は、第一次世界大戦がはじまった年でもあった。ドイツ兵がさらされた悲惨な結果をまのあたりにした衝撃から、レーガーは翌年、戦争で倒れたドイツの英雄たちの追憶にと、フリートリヒ・ヘッベルの詩を用いた簡素な《レクイエム Op.144b》を作り、また16年までにかけて、同様の趣旨に基づくオルガン曲《7つの小品 Op.145》を書いた。
  1916年が、レーガーの死の年になった。5月11日夕方、ライプツィヒでの仕事を終えて新聞を読んでいるとき心筋梗塞に見舞われ、レーガーは43歳で息を引き取ったのだった。レーガーの肉体は、大戦敗北によるドイツ帝国の瓦解に先立って消滅した。

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  レーガーは、没後まもなくは世界的に知られた作曲家だった。まだドイツと戦火を交えていたロシアでも追悼演奏会が開かれていたほどだ。一方、ドイツ語圏外では死後急速に忘れられることとなった。彼の生前の名声がオルガン音楽・教会を軸にしており、この点でマーラーやR.シュトラウスと異なる土俵に立っていたことも大きいのかも知れない。
  レーガーの記憶を世に留めることに力を尽くしたのは、1902年にレーガーの妻となったエルザだ。その活動が、こんにちのマックス・レーガー研究所の礎となっている。優れたバッハ演奏に驚嘆した叔父からレーガーを紹介されたものの、酒浸りの印象しか持てず、プロポーズを一度は断っている。それでもその才能には魅かれるところがあったのだろう、レーガーが歌曲の伴奏を素晴らしく務めたのを見た後、バイロイトで鑑賞した『パルジファル』で、クンドリが主人公のために犠牲を払うのを目の当たりにするや、芸術への奉仕としてレーガーの妻になると決意したと云う。夫婦に実子はなく、二人の女子を養子に迎えている。渋面の写真ばかり残るレーガーが、子供たちと共に写ったものでは暖かな笑顔を見せているのが、なんとも印象深い。


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by ooi_piano | 2022-02-14 02:47 | Rosewood2021 | Comments(0)

3/22(金) シューベルト:ソナタ第21番/楽興の時 + M.フィニッシー献呈作/近藤譲初演


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