大井浩明 フォルテピアノリサイタル
《フランツ・リストの轍》(全5回)
Liszt Ferenc nyomában, látomásai és vívódásai
全自由席4,000円
お問い合わせ poc@artandmedia.com (アートアンドメディア株式会社)
〈使用楽器〉 1840年製エラール(Érard)社フォルテピアノ [80鍵、430Hz]
〈使用エディション〉 新リスト全集 (1972/2021、ミュジカ・ブダペシュト社)
【第2回公演「射光のヴィルトゥオーゾⅠ」】 2025年11月15日(土)18時開演(17時半開場)
アレヴィ《ユダヤ教徒の女》の回想 S.409a (1835) 15分
第5幕 合唱「何たる愉悦、何たる喜び!彼らに鉄と火を浴びせよ!」 - 第3幕 エウドクシア王女のボレロ「我が優しい君主よ、この優美な額に」 - Var. I - Var. II, Quasi improvvisato - Finale
15世紀のフス教徒の歌 S.234 (1840) 8分
マイアベーア《ユグノー教徒》による大幻想曲 S.412 (第3版、1836/1842) 16分
第4幕 ラウルとヴァランティーヌの二重唱「ああ!どこへ行かれるのですか?」 - コラール「神は我がやぐら」
(休憩)
ベッリーニ《清教徒》の回想 S.390 (第2版、1836) 18分
第1幕第3場 アルトゥーロのカヴァティーナ「いとしい乙女よ、あなたに愛を」 - エルヴィーラのポロネーズ「私は愛らしい乙女」
ベッリーニ《ノルマ》の回想 S.394 (1841) 16分
第1幕第1場 ドルイド教徒の合唱「ノルマが来るぞ」 - オロヴェーゾ「あの丘へ登れ、おおドルイド教徒たちよ」 - 同「御身の予言の力を」 - 第2幕第3場 ノルマ「ああ!あの子らを犠牲にしないで下さい」 - ノルマ「あなたが裏切った心が」 - ノルマ「父上、泣いておられるのですか?」 - 第2幕第2場 ノルマ「戦だ、戦だ!」
佐野敏幸(1972- ):शारदा वन्दना (2025、委嘱初演) 7分
I. - II.
(休憩)
神よ女王を守り給え S.235 (第2版、1841) 6分
ベートーヴェン《アテネの廃墟 Op.113》によるトルコ風奇想曲 S.388 (1846) 9分
第4曲「トルコ行進曲」 - 第3曲 回教僧の合唱「貴方は袖の襞に月を携え、それを打ち砕いた。カアバよ!ムハンマドよ!」
J.S.バッハのカンタータ第12番《泣き 歎き 憂い 慄き》の通奏低音と《ロ短調ミサ》の「十字架に釘けられ」による変奏曲 S.180 (1862) 16分
主題と43の変奏 - コラール「神の御業は全て善し」
"Liszt Ferenc nyomában, látomásai és vívódásai"
Hiroaki OOI, fortepiano
Shōtō Salon (1-26-4, Shōtō, Sibuya-ku, Tokyo) [Google Map https://shorturl.at/bgzJM]
Instrument: An original Hammerflügel by Érard [1840, Paris, 80 keys, 430Hz]
Edition: The New Liszt Complete Critical Edition (NLE), Editio Musica Budapest (1972/2021)
4,000 yen
reservation: poc@artandmedia.com(Art & Media Inc.)
Sat. 15 November 2025, 6pm start
Toshiyuki Sano (1972- ): Commissioned work for fortepiano (2025, world premiere)
Franz Liszt : Réminiscences de La juive S.409a (1835), Hussitenlied S.234 (1840), Réminiscences des Huguenots S.412 (3rd version, 1836/1842), Réminiscences des Puritains de Bellini S.390 (2nd version, 1837), Réminiscences de Norma S.394 (1841), God Save the Queen S.235 (2nd version, 1841), Capriccio alla turca sur des motifs de Beethoven S.388 (1846), Variationen über das Motiv von Bach S.180 (1862)
![11/15(土)18時 1840年製エラールによる《リストの轍》第2回公演 [2025/11/06 update]_c0050810_19425986.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202510/18/10/c0050810_19425986.jpg)
佐野敏幸《शारदा वन्दना》(2025、委嘱初演)
この作品は、ピアノを「祭壇」として捉え、音を通して祈りを捧げるという発想から生まれた。基となったのは、インドの巨匠Ustad Allauddin Khan が創始したマイハール楽派(Maihar gharana)に伝わる讃歌《Shāradā(Hymn to Saraswatī)》である。
サラスワティ(Saraswatī)は、ヒンドゥー教において知恵・学問・芸術・音楽・言葉を司る女神であり、創造神ブラフマーの妃として知られる。サラスワティは宇宙を「音(ナーダ nāda)」によって秩序づけ、あらゆる創造の源泉に響く聖なる振動そのものを象徴する。聖なる河「サラスワティ川」の神格化としても信仰され、水が清め流すように、無知を洗い流し智慧を授ける存在とされた彼女のもう一つの名「ヴァーク(Vāk)」は「言葉」を意味し、詩人や学者、音楽家に霊感を与える。白衣をまとい、蓮に座し、手にヴィーナ(インドの弦楽器)を持つ姿は、純粋な知と音楽の流れを象徴する。
「シャーラダー(Shārada)」はサラスワティの別名であり、音楽・詩・韻律・旋律の流れを司る神格として崇められる。その名は「秋(śarada)の光明」に由来し、響きの成熟と調和を象徴する。
本作では、インド音楽の旋律体系ラーガ(rāga)のひとつ、ラーガ・バイラヴィ(Rāga Bhairavi)を基調としている。バイラヴィは朝の時間帯に演奏される伝統的なラーガで、精神の目覚めや新たな始まりを象徴する。さらに創作解釈として、バイラヴィはヒンドゥー教の女神としても描かれることがある。
女神バイラヴィは、破壊と変容、浄化と覚醒の力を象徴する存在であり、シヴァ神の力(シャクティ、Shakti)を体現するとも言われる。外的な闇を打ち砕き、内なる無明や煩悩を焼き尽くす火の力を持つ女神として信仰されてきた。その象徴的力を、ラーガ・バイラヴィの荘厳かつ沈潜する旋律に重ねることで、本作ではサラスワティの知と光、バイラヴィの浄化と覚醒の力が交錯する。
第1楽章はリズムを伴わないアーラープ(ālāp)の形式で始まり、音が祈りのように静かに立ちのぼる。終盤では多様なラーガを次々と用いる「ラーガマーラー(Rāgamālā)」の手法により、サラスワティの知と光、バイラヴィの浄化の力が交錯する音世界を表現する。
第2楽章は讃歌《Shāradā》を主題とし、16拍子に構成されている。全体を108小節としたのは、インドにおける聖なる数字に由来する。108は宇宙の周期や煩悩の数、神々の名の象徴とされ、サラスワティにも108の名が伝えられる。
ピアノという西洋楽器を「祭壇」と見立て、音楽を祈りの儀式として昇華する――この作品は、知と光の女神サラスワティへの讃歌であり、浄化と覚醒をもたらすバイラヴィの象徴的力への祈りでもある。二つの神性が融け合う瞬間を、音として描き出すことを目指した。(佐野敏幸)
佐野敏幸 Toshiyuki Sano /Santhosh, composer
![11/15(土)18時 1840年製エラールによる《リストの轍》第2回公演 [2025/11/06 update]_c0050810_19354728.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202510/18/10/c0050810_19354728.jpg)
1972年愛知県豊橋市生まれ。京都大学理学部卒。13歳頃より独学でギターとピアノを始める。1992年、ギタリスト北口功氏に師事。同年、レオ・ブローウェル国際ギターコンクール入選。1995年、西洋音楽と自身のミスマッチを感じ始めていた頃にインド音楽に出会う。1996年、シタール奏者の田中峰彦氏の紹介により、Amit Roy氏に師事。より深くインド音楽を学ぶため、2000年よりAmit Roy氏のそばに移り住み研鑽を積む。楽器はシタールとスルバハール(大型で低音域のシタール)を奏する。2005年、タブラの巨匠Anindo Chatterjee氏との共演により、CD「Memory」を製作。作曲作品に、歌とピアノのための《Sandhyaprakash - meeting of the light》(2007)、チェンバロ独奏のための《GRS》(2009)などがある。






















