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■2005/02/10(木)  アドヴォカティヴなアヴォカド


このブログのカテゴリータイトルでは《クラヴィコード様への「五体投地」》となっていますが、まさに《五「指」投地》というイメージで、指を鍵盤へ向かって一本一本「投げて」いる感じです。

私が現在使用しているのは、ベルギー・トーレムベークに工房を構えるヨリス・ポトフリーヘ(Joris Potvlieghe)氏のザクセン式5オクターヴ専有弦モデルのクラヴィコードです。
彼の製作するクラヴィコードは、録音ではミクローシュ・シュパーニによるBISのエマヌエル・バッハ全集が代表的ですが(vol.1, 2, 3, 10, 12, 14等)、他にもAndrew De MasiのG.-W.Raes作品集や、Siebe Henstra、Tom Beghin、Johan Huys、Arthur Schoonderwoerdらによる音源もあるようです。



インマゼールがコレクションに加え、アンドラーシュ・シフも3年前にフィレンツェの自宅用に購入、レオンハルトやクレマンシックも演奏会で使用している、と仄聞しました。アムステルダム音楽院に納品された時には、「楽器開き」のワークショップと演奏会で、メンノ・ファン・デルフト教授、シュパーニ、レオンハルトの3巨頭が揃い踏みしたそうな。
■2005/02/10(木)  アドヴォカティヴなアヴォカド_c0050810_315186.jpg 


グスタフ・レオンハルト(左)とヨリス・ポトフリーヘ(右)










彼とは、ブルッヘの古楽音楽祭を見に行った際、古楽器展示場で出遭いました。年配かと思っていたら、どうやらまだ30代半ばらしい。この時、私がクラヴィコードのかそけき音色に耳を澄ましているすぐ真横で、カプラ―と4フィートを加えてじゃかじゃかチェンバロを弾きまくる莫迦がいて閉口しました。ところが、さらにその横にプレイエルのグランドピアノが展示してあり、たまたま譜面台の上にショパンのポロネーズが乗せられていたため、(悪いけど)リヴェンジさせてもらいました・・・。
ポトフリーヘ氏の自宅兼工房は、ブリュッセルから電車で40分ほどののどかな田園風景のまっただ中にあり、農場を改築した2棟を中心に広々とした敷地内にはリンゴ・梨・胡桃・葡萄の木々が生い茂り、馬も一匹飼われていて、3人の小さな娘さんが庭を走り回っていました。
つい先日泊まらせてもらった際、ポトフリーヘ夫人にお手製のパスタを御馳走して頂きましたが、アヴォカドとサーモンの細切れの上に、貝割れ大根のようなコリアンダーを小さく散らしてあって、これが非常に美味しかったです。(=冒頭の駄洒落の解題。)
彼の楽器の評価の高さは、その表現力の豊かさに因りますが、しかしながら、それは楽器の「弾き易さ」には直結していません。氏曰く、「いつもそれで悩んでいる」。畢竟、あくまで「表現力のある楽器」こそが良い楽器なのであって、チェンバロあるいはピアノの打鍵法でお手軽に音の出る「弾き易さ」は、楽器そのもののクオリティと無関係と言えるでしょう。

                  アンドラーシュ・シフ(左)とヨリス・ポトフリーヘ(右)■2005/02/10(木)  アドヴォカティヴなアヴォカド_c0050810_3133826.jpg

クラヴィコードを演奏する際のシュパーニの手のポジションは、レオンハルトよりはシフに近いように見えます。


次の更新は土曜か日曜になる予定です。
by ooi_piano | 2005-02-10 07:11 | クラヴィコード様への五体投地 | Comments(0)

Blog | Hiroaki Ooi


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