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7月29日第4回公演

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大井浩明 Beethovenfries
16 Dec 1770 - 26 Mar 1827
第四回公演
《なりなりてなりゆくソナタ》
Sonate, que me veux-tu?

京都文化博物館 別館ホール
(旧日本銀行京都支店、明治39年竣工/重要文化財)
2008年7月29日(火)  18時30分開演


使用楽器: アントン・ヴァルター (梅岡楽器サービス提供)
A=430Hz, 1/8 PC調律 (不均等平均律)



《演奏曲目》
ベートーヴェン: ソナタ第12番変イ長調Op.26「葬送(Trauer)」(1800/01)[全4楽章]
Andante con Variazione - Scherzo: Allegro molto - MARCIA FUNEBRE sulla morte d'un Eroe - Allegro

同第13番変ホ長調Op.27-1 《幻想曲風ソナタ》(1800/01)[全3楽章]
Andante/Allegro/Andante - Allegro molto e vivace - Adagio con espressione/Allegro vivace

河村真衣: フォルテピアノ独奏のための《クロスローズ A Crossroads》(2008、委嘱新作初演)


    【イラン産薔薇茶とピスタチオによる休憩、約15分】


安野太郎: mp3音源を伴ったフォルテピアノ独奏のための《帰って来ないあなた》(2008、委嘱新作初演)

ベートーヴェン: ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2 《幻想曲風ソナタ》 「月光(Mondschein)」(1801)[全3楽章]
Adagio sostenuto - Allegretto - Presto agitato

同第15番ニ長調Op.28「田園(Pastorale)」(1801)[全4楽章]
Allegro - Andante - Scherzo: Allegro vivace - Rondo: Allegro ma non troppo



7月29日第4回公演_c0050810_1062913.jpg《クロスローズ》

  たまたまペルシア音楽と出会ったのは、約10年前。まさに西洋音楽と東洋の音楽の「十字路」とも言える響きに感心すると同時に、そこに日本の伝統音楽の原型を聴き、懐かしさに似た感覚を覚えた。以来、ペルシア音楽の研究と演奏を続けてきた。「日本人の私が西洋音楽を作曲すること」への疑問と、小さい頃から西洋音楽を学んできた私にとっては、むしろ「日本の伝統音楽」の方が、遠い存在であるかのように錯覚してしまう、という問題を、解決できるのではないか、という期待があったからかもしれない。今でも、日本の伝統音楽の原型であり、西洋音楽の原型でもある音楽を見つめることは、きっと日本と西洋という、あまりにもかけ離れた音楽を同時に受け入れるための手助けとなると信じている。
  また、私はこれまでに、ペルシアから日本までの間の国々、いわゆる「シルクロード(注)」とも呼ばれる地域を実際に旅してきたが、それは、日本の文化の「先祖」に出会う旅でもあった。ペルシアから国を隔てるにつれ、徐々に文化が変容し、新たな文化へと発展していく過程を垣間見ることができたのは、私にとって大きなプラスであったと思う。「先祖」を知ることで、日本の文化が更に好きになったからだ。

  (注)・・・シルクロードは元来、東トルキスタン(現在の新疆ウイグル自治区)を東西に横断する交通路のことを指していたが、現在の日本では、イランやトルコ・ウズベキスタン~日本までを意味し、飛鳥京や平城京を「シルクロードの東の終着点」と呼ぶこともある。

  ペルシアや中国との交流が盛んだった時代、西から様々な文化が日本へと伝わってきた。食べ物や習慣、言語、楽器、音楽・・・。しかし、飛行機に乗れば数時間でペルシア(現在のイラン・アフガニスタン等)に着く現代において、今、私たちに伝わってくるのは、戦争やテロのニュースばかり。非常に残念なことである。
  日本の文化の原点を、もっと知りたい、音楽を通してそれを伝えたい。ニュースではなく、真実を見つめたい。そこから新しい何かを生み出したい。ここ数年は、そんな想いから、作品を書くことが多くなったように思う。
  フォルテピアノ独奏のための《A Crossroads》は、ペルシアから日本にまで、文化が伝わっていく様子をイメージして書いた作品である。1つの素材(音型)に、別の素材が加わることによって、次第に変容していき、また新たな素材へと変化していく様子を、淡々と描いてみた。


河村真衣 Mai KAWAMURA

   大阪府生まれ。幼少よりピアノとヴァイオリンを習う。高校時代より作曲を学び、2002年、大阪音楽大学作曲学科を卒業。2003年には「闇に呑まれた光」で第72回日本音楽コンクール作曲部門、「光の鼓動」で第20回現音作曲新人賞に入選。2004年、大阪音楽大学大学院音楽研究科作曲専攻修了。2005年、「永遠の深みへ」で第21回名古屋文化振興賞入選、「闇に沈んだ海」で第27回日本交響楽振興財団奨励賞受賞。現在は、大学在学中に出会ったペルシア音楽を、日本各地、イランでも演奏すると同時に、中近東の音楽語法を取り入れた作品を書き続けており、2007年には、東京シンフォニエッタ定期演奏会や、武生音楽祭等で作品が初演されている。これまでに作曲を故山口福男、近藤圭、久保洋子、細川俊夫の各氏に師事。
Commented by 和仁 at 2008-07-29 22:33 x
第2回公演に続き聴かせて頂きました。前回は遅刻していったので、席が後ろの方だったのですが、今回は開場前に行けたので、前から2列目に座れました。河村真衣さんの作品は神秘的で良かったです。安野太郎さんの作品は面白い試みだなと思いました。最新の音楽再生技術と古楽なんて。実際演奏も素敵でした。
by ooi_piano | 2008-07-27 10:06 | コンサート情報 | Comments(1)